第一章 2
――キスをすれば男の本質がわかるわ。
窓辺の椅子に坐る女性が微笑うように言った。
白い肌。下着しか身に着けていないあられもない恰好で、長い脚を大胆に組んでいる。漂う紫煙のせいで女性の貌はよく見えない。女性の白い指には細い煙草があった。よく見えないのは紫煙のせいか。記憶があやふやなせいか。
――男のタイプは三つ。
白い指を三本立てて、女性は続けた。
――臆病者かスケベか変人のいずれかね。
漂う紫煙。
――キスをされて逃げるような男なら捨てればいいし
煙草を持たない手で長い髪を掻きあげる。
――鼻の下を伸ばすような男なら利用すればいいわ。
紅い唇が、女性にしては剛毅な笑みを浮かべる。
女性の前には五歳にもならない幼女が立っている。
腰まで伸ばした月光色の髪。人形のように整った顔立ち。大きな紫色の眼が、じっと女性を見つめている。年齢を考えれば、女性の言葉が理解できているかどうか疑わしい。
そもそも幼女にするような話ではないが、女性は気にしていないようだ。
気怠げに煙草を燻らせながら、笑みを浮かべている。
――へんじんわ?
幼女が口を開いた。
――変人なら
紅い唇が艶然と微笑う。
――自分のものにしなさい。