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花鬼  作者: KATSUKI
114/132

第八章  11

 

「上に抜ける? それとも下?」

 滑るように廊下を移動しながら、ターニャが言う。

 監視カメラの類は存在しない。教祖のフロアを監視するのはおこがましいということか。等間隔で配置されていたドアが消え、巨大なドアが現れた。教祖の部屋だ。

「上に行こう。外に出た方が自由度が高い」


 ラヴィアに命じる

 僕の元におかえり


 イツキの声が響き、背後にいたシアの気配が、す、と離れた。

 最後尾にいたイツキの手が、シアの手首を握っていた。

 黒い眼がどこか歪んだ光を放っている。

「何の真似だ」

「何の真似? 自分のものを取り返しただけだよ」

「まだ種はできていないぞ」

「できるできないじゃない。作るか作らないかだよ」

 冷ややかにイツキが言う。

「ラヴィアにその気があれば、とっくに種を作っているはずだ。作らないということは作る意思が無いんだ。ならもうあなたに預けておく意味は無い」

 イツキの手がシアの腹に触れた。

 シアは反応しない。表情は虚ろだった。

「シアをどうする気だ」

「このまま誰かに抱かせて種を作らせる」

「本気で言っているのか」

「本気だよ。僕にしてみれば、相手があなただろうと他の誰だろうと関係無い。ラヴィアが種を作ればそれでいいんだから」

「だったら最初からそうしていたはずだ。なぜおれを愛させた」

「……」

「偽りでも、シアに幸せな夢を見せてやろうとしたんじゃないのか」

「そんなの――」

 イツキの貌が歪んだ。

「もうどうでもいい」

 シアの手を引いて、イツキが退がった。人形のようにシアが続く。

 反射的に肩が動いた。

「動かないでよ」

 イツキの声に動きを止める。

 イツキの背後でドアが開いた。

 教祖の部屋。

「出ていきたいなら出ていけばいい」

 何もかもを拒絶するような声を呑み込み、ドアが閉まった。




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