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「ナカマ」を知る


新キャラ登場です!

「ユラ?どうしたの?」

突然立ち止まったぼくに、サシャが戸惑う。

ぼくの目は、壁に寄りかかる少年に釘付けになっていた。

「ユラ?…あ」

サシャもぼくの視線を追って少年の姿をとらえた。

確信がある訳じゃないし、根拠さえない。でも、…なんとなく理解(わか)るんだ。彼が、普通の「ヒト」ではないこと。

ぼくは思慮する暇もなく、その少年に走り寄っていた。黒い髪に、灰色がかった紫の瞳を持つその少年は虚ろに宙を見つめていて、彼の持つなんとも言えない雰囲気に親近感を持った。

この感じ…

「…ねぇ」

小さく、声をかけてみた。

彼はハッとぼくに焦点を合わせ、戸惑ったように視線をさ迷わせた。

「…君さ、名前は何て言うの?」

聞いてから後悔する。とりあえず口を開いたものの、もしこの少年がぼくと同じなら、名前なんてあるはずがないのだ。

「いや、えっとね、…君は、どこからきたの?」

前言を撤回し、新たな質問を投げ掛けた。彼は少し考え込むように目を伏せる。あの黒い空間…宇宙から、来たのだろうか。

「…暗くて広いところ。丸いのがたくさん浮いてて、代わり映えのしない黒い場所。」

…ああ、

君もなのか。

無防備に答えるその少年は、確かにぼくと同じらしかった。

「ねぇ、ぼくもね、君と同じなんだ」

「…?」

少年の顔が怪訝そうに歪む。

「ぼくらはね、ここにいるヒト達とは違うんだって。君も気づいたら宇宙にいて、いろんな星を見て回ってたんでしょう?」

少年は少し間を置いて首を振った。「この星が初めてだ」―彼は頑なに否定したがっているようだった。

すると、それまで後ろでおとなしく話を聞いていたサシャが顔を覗かせてきた。

「ねぇ、…ってことはさ、やっぱり君も行くところないんでしょう?」

「…行く、ところ?」

「いいわ、ユラ、あの家をこの子と一緒に使いなさいよ。広さは申し分ないと思うけど」

サシャは簡単に言うけど、ぼくとしてはありがたかった。ぼくもそうしたいのは山々だったけど、サシャがぼくを拾ってくれたのはあくまでも彼女の幼馴染み代わりだ。だから、そんなことを頼んでもいいのか少し戸惑っていた。

「ごめんね。急だけど、どうかな?ぼくと一緒に来ない?」

精一杯笑いかける。

少年は少し考えるようにうつむいてから、恐る恐るといった様子で小さく頷いた。なんだろう、その時の気持ちはただ単純に、嬉しかった。


『『ぐううぅー』』


………。

「ねぇサシャ、ぼく達(・ ・ ・)お腹すいちゃったみたい!」

「ハイハイわかったわよ。じゃあさっさと帰ってご飯にしましょ?」

「うん。ほら、…おいで?」

手を差し出すと、彼は素直にぼくの手を握ってくれた。ぼくはその時何か違和感を感じたのだけど、彼がすぐに打ち解けてくれたと思うと嬉しくって、そんなに深くは考えなかった。




「ああそうだ、名前決めなくちゃね」

サシャの家に上がり込んでソファでくつろいでいたら、思いついたようにサシャが言った。

「名前?」

「そう、ぼくもサシャ…あの女の子にユラって名前を付けてもらったんだ。君にも名前を付けなくちゃ」

「そんな必要ないっ」

勢い良く立ち上がった彼に、少なからず驚かされる。

「えっ…?」

サシャもキッチンでカウンター越しに首を傾げた。

彼は自身の行動に頭がついていかないみたいに少しどもってから、その割にはしっかりした口調で言った。

「…おれは、ルカ。ちゃんと名前はついてる」

「え、…ルカ、っていうの?誰につけてもらったの?」

戸惑うサシャの問いに、彼ールカが一瞬泣きそうに顔をくしゃっと歪めたように見えたのは気のせいだったのだろうか。

「…わかんない。わかんないよ」

ルカはそう呟いて黙り込んでしまった。

サシャに手招きされ、ルカ一人を部屋において廊下に出る。

「?」

「彼、相当な訳アリね」

サシャは少し考え込むような、それでいて悲しそうな顔をした。

「まだ出会ったばっかりってのもあるだろうけどさぁ…ユラは心の開きがわからなくて戸惑うって感じだったけど、ルカは無意識に周囲を拒絶してるわ」

「ああ…」

そっか。それだったのか、さっきルカと手を握ったときに感じたあの違和感は。

ぼくはまず「どうしてこんなことになったんだ」と考えてしまっていたからなぁ。でもなんというか彼は、その差し出された手を握ることがどういうことを示すのかわかっている気がしたんだ。

「とりあえずユラ、あなたが使っている家をルカとシェアしなさい。その他の生活はルカと二人がかりでやって、…ルカにいろいろ教えられるわよね?畑仕事、片付け洗濯…ちゃんと教え込めば楽になるわよ」

「あ、うん」

「…それと、こんなのあなたに頼むなんて明らかなる人選ミスだと理解した上で言うんだけど、…ルカの悩み相談にも乗ってあげてくれる?無理矢理でも良いから、私だとわかってあげられないこともあるだろうし。」

ぼくは何となく、その申し出に頷くことを躊躇った。でもサシャの強い眼差しに、ぎこちなく了承する。

「ありがと。…よし、戻ろっか」

寂しそうなサシャ。

サシャは何だか、自分はぼくやルカと違うんだと悪い意味で意識しているようで、でもそれで寂しいのはサシャだけじゃない。これって、物凄く可笑しいことじゃないのかな。

二人揃って部屋に戻る。ルカは本音なんて相当なことをしない限り言いそうにないし、

手強いぞ、とぼくは意気込んだ。







この辺でたぶん折り返しですかね…

ガンバリマスっ

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