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They are an elder brother and a princess true to school

あなたは、突然の真実を受け入れることはできますでしょうか?

「ここは……どこでしょうか?」


どれだけ辺りを見回しても真っ暗な空間。私はたった一人でそこに立っていた。

しかし、その真っ暗な空間に突然、かすかな光が見えて、私はその方向へと歩き出す。……正直、嫌な予感がしていた。この先に行ったらダメなような気がした。でも、歩き出した瞬間から立ち止まることは出来なくなっていた。

そして、たどり着いた先に私が見たのは。


「わ……私?」


私に似ている女の子……いや、寧ろ『私』そのものが体育座りをして、顔を俯かせている。顔は見えないけれど、肩を揺らして何故かその私が笑っているのが分かる。まるで狂ってるように、ずっと…


「……あなたは誰ですか?」


恐る恐る私はその『私』に話しかける。しかし、彼女の笑いは止まらない。『私』をよく見てみると耳が私よりも長いというか、尖っているような気がした。そしてちょっとだけ怖い『私』を見ているだけで胸が苦しくなってくる……


その瞬間。その『私』は突然笑うのをやめ、ゆっくりと立ち上がって私を見る。その目はまるで殺気を持っているような……そして爪が何故か少し長くも見えた。……これは本当に、私なの?


「……」


反応は、ない。ただひたすらに私を見てきている。しかし、その殺気立った目は確実に何かを訴えている目だった。


「わ、私はアンジェと申します。あなたは?」


もしかすると、よく似ているだけで私ではないのかもしれない。色々知りたくて私は『私』に名前を聞いた。しかし、またしても反応がない。


「……こ、ここはどこですか?出来れば知りたいのですが…」


めげずに質問を続けてみる。すると、彼女は私に向かってゆっくりと歩み寄ってきた。私は少し怖くなったけれど、相手の行動を少しだけ見守ることにした。すると『私』は私の目の前に立ち、私……というより、胸元を指差す。


「えっと……心臓?」


『私』は首を横に振る。……う~ん。流石に皆さんが理解できないだろうから、今は仮に『アンジェ』と呼ぼう。『アンジェ』はもう一度私の胸を指差す。そしてやっと私は理解することができた。


「……心の中、ですか?」


アンジェはゆっくりと頷く。どうやら正解のようだ。心…ということは、私は夢を見ているのだろうか。まぁ、こんな世界は夢以外ないでしょうし。しかし何故この子は喋らないのだろうか……それに関して、もう一度話してみようと口を開いた時だった。

突然周りがどんどん明るくなっていき、アンジェがその光を見て何処かへ走り去ってしまった。まるで、さようならと言うかのように、一度だけ目をこちらに向けて。


「ま、待って―――――」


その声は届かず、私はその光によって眩しくなり――意識が遠のいた。



----------------------------------------------------------



「あ、アンジェお姉さん?どうしたんですか?」

「……悪夢?」


気がつくと、私は自分の部屋のベッドで寝ていた。そして時計を見てみると八時半。私がいつも起きる時間より十五分くらい、オーバーしている。こんなことはあんまりなかったのに……普段は誰かがここへ来る前には起きて、早めに準備を済ませるようにしているのに。


「……シカちゃん。アズキちゃん」


どうやら今日の当番はシカちゃんとアズキちゃんらしい。二人が心配そうにして私のことをじっと覗き込んでいた。


「凄くうなされていましたよ? 何かあったんですか?」

「……恐怖?」


身体をベッドから起こして、改めて自分の体を見てみる。じっとりと、まるで運動をしていたかのような汗の量が出ていた。


「今日の学校の件、やめますか?」

「……無理、禁物」

「い、いえいえ! 大丈夫ですよ! ちょっと不思議な夢を見ただけで…」


説明しようとして、その続きを言おうとしたけど……やめた。例え、言ったとしても私自身が伝えづらくて訳が分からなくなりそうだから。


「と、とにかく支度を急ぎましょう! ルリちゃん達を待たせるわけにはいきません!」

「わ、分かりました」

「……承知」


私はシカちゃんとアズキちゃんに手伝ってもらい、急いで支度をする。

レンリちゃんとルリちゃん。二つの貴族と同盟を組み、そしてメムちゃんも従者として加わることになった昨日、学校に見学しに行くと言う約束をして慌しかった一日が終わった。

私はとりあえず街の皆と溶け込むことができそうな服を見繕ってみる。幾らなんでもお嬢様だとはいえ、流石にドレスで学校に行くのは恥ずかしいと思ったからだ。それに一番の目的は、学校に行くという街の人たちに服装だけでも合わせてみたいという私の興味でもあるのだ。しかし、興味があるのはそれだけではない。


「学生服ですかぁ……楽しみですね」

「まぁ、俺達にとっては一般のことでしたけど……」

「……平民生活」

「だからいいんですよ。したことのないことが出来るのは素晴らしいことですよ? 例え二人にとって当たり前のことでもそれが素晴らしく感じるんです。」


二人は、はぁ……と少し困った顔をしていた。それでも作業の手は止めず、最後に私がいつも髪に付けているリボンを結んで、部屋から出る。


「二人の待ち合わせまで時間はありますか?」

「えっと……あと一時間です。ここから学校まで十五分と聞きましたので……」

「……微妙」


食事を取る時間が三十分。何事もなければ間に合う時間だ。私は心なしか、早足で食堂に向かう。私が食堂に到着すると既にザキやメムちゃん、シアン君などが先に座って待機をしていた。そして、いつものようにアルイさんやコガネさん、そしてお父様の姿は食堂の中には見えない。

あの年長組はいつ食事をとっているのだろうか……気になるところだけれど、私はいつもの席に座る。セレス家の食堂は俗に言うレストランのような椅子の配置だ。丸いテーブルが何個もあり、そこに皆が自由に座るようになっている。私は最近ザキ、ヨルちゃん、シカちゃん、アズキちゃんの四人と同じテーブルで食事をとっている。クロウやエリーは皆の食事の準備が出来た後に食べるため、いつも二人で食べているのだとか。


「お嬢様! おはよう!!」

「おはようございます。お嬢様」


いつもの二人の挨拶を聞いて私も挨拶をする。


「おはようございます。待たせてすみませんね」

「僕も不思議に思ったよ~。いつもならもうとっくにここに座ってるもん」

「何かあったのですか?」


二人は心配をしてくれているんだろう、私に何があったのかを聞いてくる。しかし、私は横に振り、何事もなかったように接することにした。


「大丈夫ですよ。ちょっと今日は緊張しちゃって、リズムが狂っちゃったんだと思います…」


私がそう言うと二人はホッと胸を撫で下ろした。


「それにしても学校かぁ~! 面白そうだね~」


ザキがその言葉を言うと、ヨルちゃんが突然表情を暗くした。私はそれを見て不思議に思ったのだけれど、ヨルちゃんはすぐに我に返り、会話に入る。


「シカさんとアズキさんもお嬢様の護衛と言うことで入学するんですよね? 羨ましいです~」


そう。私一人だけが入学するのは危ないと、クロウは年齢で入学可能な従者も一緒に入学させることにしたのだ。そして入学可能な従者はシカちゃんとアズキちゃん。そして元々シアン君が通学していた場所でもあるため、設備の説明やどういったことをするのかは既にシアン君から聞いている。この計四人が学園に入る……はずだった。


「まぁ、私も入るんだけどね」


なんと、メムちゃんも学園に入ることが可能になったのだ。飛び級という形で。メムちゃんはかなり学力が優秀だったらしく、クロウが試しにやってみた試験で文句なしの合格点を取ったほどなのだ。あのクロウを満足させられるほどの頭脳って……


「いやぁ、驚きましたよ。まさかカナさんがあそこまでの策士……もとい、知識が豊富だったとは。あの点数は、エリーさん以来ですね」

「い、一体どんな試験をやったのですか……」


その話を聞いて、クロウが私達の会話に入ってきたのだが……どんなテストをしたんだろう。本当に、疑問に思ってしまった。


「さて。それはそうと、食事をお持ちいたしました。お嬢様、どうぞ召し上がりください」

「ありがとう、クロウ」


そんな疑問はさておいて、私は皆と楽しい会話をしながら食事をとる。これも現在では毎日見る朝の光景である。私はその時間を優雅に楽しんで食事を続けた。



--------------------------------------------------------



「さて、皆さん。準備はよろしいですか?」

「はい、私達はもう準備は出来てます」


食事を終え、学校に通う私達四人は外に出て、クロウと一緒に車に乗る準備をしていた。ちなみにもう通っているというシアン君は既に学生服を着ている。白色の多いブレザーという学生服だそうで、胸ポケットには学校の紋章のようなマークがあって、そして紐状のリボンをしている。私はそれをみて、とてもかっこいいと思った。まだ入学していない私たちは学生服を持っていないのだ。だから、早く女子服も見てみたくて、ワクワクしている。


「いい友達が出来るといいなぁ~。ね、アズキちゃん」

「……友達百人」

「でも、まさかクロウが私達をシアンがいるクラスにまとめるって……」

「席も近くするって言ってましたし、既に計画済みなクロウさんがすごいです……」


学校に行く期待と緊張が皆にはあるようだ。私も、もっと友達ができるといいなぁ…


「では皆さん車に乗ってください。そろそろ行きますよ」

『は~い』


そしてついに出発の時。私が車に乗ろうとした時、屋敷の皆が見送りにきてくれた。


「お嬢様! 頑張ってきてね!!」

「私達は今日できる限りお嬢様の兄様に関して調べてみます」

「俺もアンジェちゃんの為にできる限りのことをするからな」


ザキ、エリー、アルイさんが先に私に近づいてそう言い、手を繋いでくれた。


「あ、ありがとうございます」

「そうだなぁ……参考ついでに、その頃の容姿とか覚えてるなら教えてくれないか?」


さらにコガネさんが私に兄様の特徴を聞きにやってきた。私は思い出せる限り思い出そうとして、考え込む。


「えーと……私と同じ白い髪で……あ、目も黄色でした。それで…後ろ髪を一本に結っていたような。とても優しい人です。名前は……確か、誰かに『シン』と呼ばれていたはず…」


そこまでは、何とか思い出せた。でも本当に覚えているのは、たったこれだけ。いつもそばにいてくれた人だったはずなのに、なんで忘れてしまったのだろう…


「よし、分かった。おっちゃんも出来るだけ、やらせてもらうさ」


そう言ってコガネさんは私の頭を撫でてくる。もうそんな年じゃないような気がするけど……まぁ、今日はいいか。


「僕も町に行って情報を探してきます。僕もお嬢様のお兄様に会ってみたいですし!」

「ふむ……私は、今日は久しぶりに街を観光と行かせてもらおうかな。無論、アンジェの兄探しも兼ねてね」

「わ、私は……や、屋敷で誰かとちゃんと、お留守番してます!!」


ヨルちゃん、お父様、そしてルーも私にそう言い残してくれた。


「皆さん……本当にありがとうございます。でも、無理はなさらないでくださいね」


私はそう言って、クロウに車を出すよう目を合わせる。そして進みだした車の中で、皆の姿が見えなくなるまでずっと手を振っていた。


「……ほんとに不思議な貴族だね。まるで本当の家族みたい」


そんな私を見たメムちゃんは何やら信じられないと言わんばかりの顔をしていた。


「家族ですか……そうですね。私にとっては皆さん全員が大事な家族です。これからもずっと……」

「俺もアンジェお姉さんのこと、家族だって思ってるよ? ねぇ、アズキちゃん」

「……お気楽大家族」


そんな三人の会話を聞いて、メムは突然クスッと笑い出す。


「従者は貴族の命は絶対に従う。そして逆らうことは許されない。なのに、ここはお気楽過ぎだし、お嬢様はのほほんとした天然だし。まさか、こんな面白い貴族があるなんてね……此処の国の貴族達があんた達みたいに優しい思いを持っていればいいのに……」


そういってメムは窓の奥の空をじっと見つめる。私はそれを見て昨日メムの話していたことを思い出した。


(……貴族であるフェザール家のせいで、メムちゃんは一人になってしまった。確かにみんな、私たちのような明るく楽しい貴族であればいいのに……)


そうであって欲しい……本当に。


「俺はなれると思いますよ。ね? アズキちゃん」

「……それ以外NG」


アズキちゃんの言葉に、私とシアン君とシカちゃんは顔を見合わせて笑う。そしてメムちゃんはそれを見て呆れた顔をする。でも嬉しそうな感じでもあった。これからもメムちゃんが私たちに心を打ち明けてくれたら……そう思わずにはいられない。


「あ! お嬢様、見てください! あれが俺達の通う学園ですよね!?」

「……宮殿レベル」


シカちゃんとアズキちゃんがそう言って窓の外を眺めていたので、私も見てみる。すると、そこには学園と言うか……まるで大きな宮殿のような建物が建っていたのだ。


「なんせ、王家側が設立した大施設ですからね。エスポワール学園と言って、中もかなり充実していますよ」


初めて見た学園には、さすがに驚いてしまった。これは普通というよりかは……上回ってるような。普通の学校に通えると思っていたから、そういう意味では少しだけ残念に思えてしまって、私はちょっと落ち込んだ。

でも中にいる生徒さんは、街の人たちも通ってると聞いたのでまだまだ希望はある。ようやく皆と同じ普通のことが出来る。学校に通うという、素晴らしいことが。


「さて、そろそろ着きますよ。降りる準備をしておいてください」


だんだんと近付くエスポワール学園。そしてその大きな校門のような場所に二人の人影が見えた。そこには見慣れた顔……レンリちゃんとルリーナちゃんが私を待ってくれていた。


「来ましたね、アンジェ」

「全く、ライバルともあろうお方が遅れを取るなんて…なんて気の緩い人なんですの…」


待ち合わせ時間まであと5分というギリギリではあるけれど、なんとか間に合った。私達は急いで車から降りる。


「す、すみません。遅れてしまいました!」

「いいえ、全然構いませんよ。ね? ルリーナちゃん」

「ま、まぁ。今回は大目に見て差し上げますわよ!」


よかったぁ。今度からはもっと早くに起きよう。遅れたのは全部あの夢のせいなんですよ、なんて言えるわけないし、とりあえず私はペコペコと謝った。


「それにしても……ほんとに、でかいですねぇ」

「……ラスボスステージ?」

「エスポワール(希望)……確かに、ここには希望なりなんなりがありそうだね」


シカちゃん、アズキちゃん、メムちゃんの言う通り確かに大きすぎる。私たちのお屋敷の数十倍はあるでしょうか。こんな学園があるなんて知らなかった……一応、ここの街の人間なのに。


「さて、早速中に入りましょうか。役員さんが私達を待っているそうなので」


レンリちゃんがそう言いスタスタと歩いていく。役員さん? 学校で言う先生のようなものだろうか。私達は取り敢えず、レンリちゃんについて行くことにした。そして歩いていく時に気づいたことがある。レンリちゃんのメイドであるKさんが今回はいないことだ。専属のメイドだから、いつもならいるはずなのに。そしてKさんだけでない。ルリーナちゃんの執事であるコクウさんもいない。そしていつの間にか私たちを車に乗せたクロウすらも何処かへ消えていた。一体どういうことなんだろう。そう考えていたとき、一人のメイド服を着た女性がこっちに近づいてきた。


「みなさん。本日は我がエスポワール学園へお越しいただき、ありがとうございます」


もしかして……この人が私達を待っていたという役員さん? その人は、見るからにメイドさんだった。そしてメイドさんが私達に説明をする。


「まず、この学園は他校で当たり前である先生、とは少し違った形です。この学園の先生は王家直属のメイド、執事、騎士。そして世界各国からわざわざ参られた先生方が、この学園の教師という形になっております。」


そう、この街……シャンテには学校という制度がないのだ。しかし別の街にはしっかり学校があり、そして先生がいる。そして昔は城下町であるシャンテにいる人や貴族は、他の街から先生を派遣してもらい知識を得る……というのが、この街の子供の育て方だったらしい。しかし王家は一年前に、より多くの子供たちが幅広い知識を得ることが出来るように、とこの学園を建てたのだそうだ。やはり王家は素晴らしいお考えをお持ちですね。


「それでは新入生となる方は更衣室にいらしてください。シアン様は次の授業まで教室にいらしてください」


メイドさんの一言でシアン君は「はい」と返事をして学校の中へと入っていってしまった。まぁ、後で会えるから大丈夫でしょう。そして私達はメイドさんの案内により更衣室へと入る。


「ここが更衣室です。学生服はこちらにあるので着替えてください」


籠に入れられた真新しい箱の中には、私がずっと憧れていた学生服があった。上は襟のない白色の長い袖のブレザーで下は少し長めのスカートで赤と黒のチェック。おお、初めて自分の学生服に触れた感触…。感動ものです。


「あ、お嬢様。これクロウさんが寒くならないようにと……」


見惚れていた私を見て思い出したようにシカちゃんが、私がいつも屋敷で履いているストッキングの黒を渡してきた。クロウ……油断ならないですね本当に…


「では、着替え終わったらお教えください。その後、学園の内部を案内致します」


そういってメイドさんは一旦、更衣室から出て行った。



--------------------------------------------------------------------



「――さて、それではそろそろみなさんの教室にでも行きましょうか」

「長いですよ!! どれだけこの施設大きいんですか!」

「……矛盾」

「た、確かに矛盾してるというか、規模が大きすぎるね……学校って、こんなに大きいものなのかな」


シカちゃん、アズキちゃん、メムちゃんの三人が疲れたのか、ぐったりしている。まぁ、疲れて当然ですよね。結構歩き回りましたし。私はよく分からないのですが、三人が言うに食堂が一流レストランの四倍ほどの広さ。体育館がまるで舞踊館のような豪華さ。その他にも大図書館としか言えないくらい本がある図書室、まるでライブ会場のような設備の整った音楽室などなど。メムちゃんは驚くことより、感心することの方が多かったみたい。

そして、ついに。私達が授業を受ける教室まで案内してもらうことに。とても楽しみなのだけれど……クラスのみんなと仲良くできるのかが、ちょっと心配です。


「さて、ここがみなさんの教室になる第四教室です。この学園の教室は合計十五室。一つのクラスに約三十人います」


一クラスに約30名。それで15室ということは……約450人がこの学校に通学しているということに。まぁ、あれほど沢山の施設があれば、それくらいはいますよね…


「では、皆さん。準備はよろしいでしょうか?」


緊張をしつつも、皆が「はい」と返事をする。するとメイドさんはその返事を聞いてゆっくりと扉を開く。ここから、私の学園生活がスター…


「お嬢様。そしてみなさん。お待ちしていましたよ」


………………え?


『ええええええええええええええええええええ!?』


一同が驚く、なぜならその先には、私たち皆が知ってる人が立っていたからだ。

そう。私の屋敷の執事長、クロウである。そのクロウが教卓に立って私達を待ち受けていた。

一体どういうことなんですか……?



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~ザキ視点~


「お嬢様のお兄さん、どこかなぁ~」

「そうですよねぇ。ほんと、どこにいるんでしょうか……」

「まぁ、とりあえずはここら辺を歩いてみようぜ?」


お嬢様が学園に向かった後、僕とエリー、そしてアルイの3人でお兄さんの情報を探しにシャンテに向かう。ほかにもヨルちゃんやコガネも一緒に街に来てたんだけど、二手に分かれて、別行動をとっている感じなんだ。


「それにしても……旦那様も一緒にお兄さんを探しに来る~って言ってたのに。どこに行っちゃったのかなぁ」

「ああ、旦那様なら心配ありませんよ。あの方はどこに行っても、平気で帰ってきますから」


そんな僕たちの会話を聞いてアルイは少し苦笑いをする。


「どこへ行ってもって……旅行が好きなのか?」

「アルイさん……残念ながら、『どこに行っても』の意味がちょっと違うんですよ」

「え? どういうことだ?」


僕もその話に入ってアルイに説明……ってあ、あれは!!


「あ、ちょうちょ! 待って~!」


ちょうちょだ! わーい! ここの街でもちょうちょが見れるなんて嬉しいなぁ! 追いかけに行こう!


「あ、ザキ!? どこに行くんだよ!?」

「全く……ザキ君はちょうちょを見ると辺りが見えなくな…!? ザ、ザキ君!! 前! 前!」


エリーが僕をなぜか止めようとする。でも僕は、今は目の前のちょうちょにしか目が…


「ヘボッ……あいてててて…」


ちょうちょしか見ていなかったので誰かとぶつかってしまった。と、とりあえず謝らないと……!


「ご、ごめんなさい!」


とりあえず僕はそのぶつかった人に謝った。でもその人は、


「てめぇ、どこ見て歩いてんだよ?」


これはやばい、どうやらとっても怒ってるみたいだ。しかもオトナの人だから、小さな僕よりも断然背が高い。


「ご、ごめんなさい……わ、わざとじゃないんです」

「あ? 知るかよ。謝るよりも謝礼だろ? 金よこせよ」


僕はその人に片手で胸ぐらを掴まれ、そのまま持ち上げられる。


「うっ……ぼ、僕お金持ってないよ……」

「そうかぁ。じゃあ一発殴らせたら許してやるよ!」


胸ぐらを掴んでる手に力を入れる。そのせいで首が絞まって、息苦しい。何とか呼吸をするのが精一杯で、何か言いたくても喋れなかった。


「お、お前! 何してんだよ!」

「ザキ君を離してあげてください!」


二人が僕を見つけ、すぐさま助けに来たが、その人は僕を離さない。


「うるせぇ! こんなガキには大人のマナーを知ってもらわないとな!」


その人が僕を殴ろうと、拳を振り上げる。僕はもちろん持ち上げられてる足がつかなくて抵抗ができないし、声も出せない。そして、その人の拳が飛んで来る、その瞬間だった。


「おい、その手離せよ」


突然やってきた誰かがその男の人の脇腹を殴る。お腹に減り込んだその攻撃で力が入らなくなって倒れてしまった男の人の力が緩んだ、その隙にその人の手を振り払って、エリーとヨルのところへ走る。


「ザキ君! 大丈夫ですか?」

「う、うん。あの人のお陰で……」


僕はそう言い、助けてくれた人の顔を見る。その人は上着もズボンも黒色で髪は白銀、目つきが鋭く、とても怖い顔をしていた。でも……


「大人のマナー? はっ、子供は子供の自由にさせろよ。マナーなんて大人から知ってても遅くはねぇ。それに、てめぇのやってることは人間以下のやることだ。さっさと失せな。」


こんな僕を助けてくれた。いい人なのかな……僕はそう思う。


「チッ! 糞が!」


地面に這い蹲って唸っていた男の人は、お腹を押さえながら走り去っていった。その銀髪の人は冷たい目で走っていくその人を見て、大きなため息をつく。


「……ちっとは骨のあるやつかと思ったが。所詮、口だけか……」


そう言いながらその人は僕たちのところへと歩いてくる。


「……ほう。コイツは面白いな」


僕たち三人を見て何故かその人はくつくつと笑い出す。何か変なことでもしたかな?


「とりあえず、そこの青髪、大丈夫か?」


青髪、僕のことを言ってるのかな? そりゃそうだよね、三人のうち青髪なの、僕だけだもん。


「う、うん。ちょっと苦しかったけど、今は大丈夫」

「そうか、ならいい」


するとエリーがペコリと礼をする。


「ありがとうございます。ザキ君を助けてくれて」

「いや、俺はただあいつに腹が立っただけで……まぁ、そう思ってくれても構わないが」


その人は照れたのか、頭をポリポリと掻く。


「……あ、そうだ、俺最近ここに来たから、よく分かんねぇんだが……一つ、聞きたいことがある」

「なんでしょうか?」


その人は胸ポケットから小さな写真を渡す。そこには二人の子供が写っていた。


「ほう、これまた随分と古い写真だなぁ」


アルイが言うとおり大分昔の写真みたい……にしても写真に写ってる子可愛いなぁ。


「右にいるのが俺だ、そんで左にいるのは俺の妹。俺はその妹を探してるんだ。」


へぇ、妹さんを探すためにここに……ん? あれ? この女の子、誰かに…


「ずっと前に事件があって別れちまったんだが……名前は」

「あ!! そうだ! お嬢様だ! お嬢様にすごくそっくり!!」


髪の色といい、雰囲気といい……間違いない。お嬢様にそっくりだ。


「お嬢様? ひょっとして名前はアンジェリカって名前か?」

「あ、はい。その名であっていますが……まさか……」


その人は写真を胸ポケットにしまい、僕たちを見る。


「俺の名はヘルシング・マードゥ・ネオラルド。アンジェリカ……いや、アンジェにはよく『シン』と呼ばれていた」


『えええええええええええええええええええええええええええええええええ!?』


僕たち三人はシンという人を見て驚く。だって、とても優しいお兄さんっていったから、もっとお嬢様に似てると思ったのに、全然にてないし、顔が怖いし……ううん、人で判断するもんじゃないね…。



……そして、この出会いで僕たちセレス家の雰囲気が一変してしまうことを、この時の僕たちはまだ知らない。

次回予告

メム「カナリア…まぁ、ここならメムでもいいか…次回予告?う~ん。とりあえず後編は戦ったり、真実知ったりのかなり展開が速いかもね」

ルリーナ「そして、私の活躍も見られますのよ?特別に見るのを許して差し上げましょう」

メム「…あなた何もしてないじゃん」

ルリーナ「う…い、いいじゃないですの!私に多少活躍させてくれても。次回予告だって作者さんに頼んで…」

メム「…だからあっちで虚空さんが頭に足跡付いてる作者の応急処置してるんだね」

虚空「全く…最初は凛々しく頼んでいらっしゃったのに、後から恥ずかしくなって武力に…」

ルリーナ「と、とにかく自己紹介しますわよ!虚空!早くいらっしゃい!」

メム「もういいや…ごめんね作者さん。せーの」


次回!第7話!『They are an elder brother and a princess true to school その2』お楽しみに!


アンジェ「あなたも、私の従者になりませんか?」

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