悪夢に救われた王子の話
レイジス王国の王都からかなり離れたとある田舎に1人の青年が住んでいた。
青年の名はラクス、かつてレイジス王国の第一王子だったが彼はある日突然自ら王位継承権を放棄し王族から籍を抜いた。
国王や王妃、周囲の人々は説得したがラクスの意志は固かった。
理由を問われても『自分は王の器ではない』というだけで具体的な事を一切話さなかった。
周囲の人々は説得を諦めラクスの意志を尊重した。
ラクスは王都から離れた田舎の村に住処を移しのんびりと暮らしている。
たまに村人からの相談に乗ったり力作業を手伝ったりと村人からの信頼を得ている。
そんな彼をたまに訪問しているのが友人であるアックス・ライモンドだった。
アックスはこの辺りを治めている男爵家の次男坊でラクスとは同級生だった。
移住の相談をしたのをきっかけで仲良くなった。
今では身分関係無く親しい関係である。
「なぁラクス、そろそろ王族から出て行った理由を教えてくれないか?」
ある日アックスはラクスに聞いてみた。
「そうだな……、アックスになら話しても良いか、ただ信じてもらえないと思うが……、夢をみたんだ」
「夢?」
「ある日、俺が卒業記念パーティーの場で婚約者だったエミリアに一方的に婚約破棄を告げていたんだ。 俺の隣にはデイジーという男爵令嬢がいた」
「デイジー? そんな名前の男爵令嬢っていたよな?」
「そう、あのデイジーだよ、ただ、その後が酷かった」
「その後、て婚約破棄した後か?」
「あぁ、俺は王になるんだが何事も上手くいかず結果、革命が起きて俺は処刑されたんだ、悲鳴を上げながら飛び起きたよ……」
その時を思い出したのかラクスは顔色が悪かった。
「たかが夢だと思うだろ? だけど、その翌日にデイジーは現れた。 つまり、あの夢は正夢かもしれない、という事だ」
「なるほど、だからあんなに厳しい態度をとったんだな」
現実はデイジーに話しかけられたラクスは不快感を見せた、デイジーの実家である男爵家に抗議の手紙を送りいつの間にかデイジーは姿を消していた。
「あの夢は俺に対する警告だったんだ、て思ったんだよ。だから、生活も正したし勉学に集中した、ただ……」
「ただ?」
「また夢をみたんだ……、毒殺される夢を」
「毒殺ぅっ!?」
「しかも犯人がわかっている、弟のレオンとエミリアだ。 俺が苦しむのを見ながら笑っている2人の表情が未だに忘れられない……、それが俺が王家を抜けた理由だよ」
一度だったら偶然かもしれない、しかし二度目となればこれはただの夢とは思えない。
「俺は王になってはいけない、王になれば不幸な目に合う、そんな風に思ったんだ」
「なるほどな……、いや、実は伝えようか迷っていたんだけど今、王都にきな臭い匂いがしてるんだよ」
「何かあったのか?」
「今、レオン王子とエミリア嬢が婚約していてレオン王子が卒業と同時に正式に王太子になる予定らしいんだけど、どうもレオン王子に近づいている輩がいるみたいでな……レオン王子とエミリア嬢の仲がギクシャクしているらしい」
「なんだって? アイツは俺より真面目だし浮気なんて絶対しないぞ」
「うん、そうなんだが……、エミリア嬢は結構嫉妬深い性格だし……」
「一応、気をつけた方が良い、て忠告の手紙でも送っておこうか」
しかし、既に手遅れだった。
レオンがエミリアに刺された、という話が飛び込んできたのだ。
『王太子妃になるのは私よ!』と絶叫しながらレオンの背中を刺したそうだ。
「あんなに嫉妬深い女だったのか……、俺にはドライだったけど興味が無かったんだな」
婚約者だった女性の本性を知りラクスは複雑だった。
そして、自分の選択は間違いなかった、と確信した。
多分、色々騒動にはなっているだろうけどもう自分には関係無い。
あの夢は悪夢ではあるけど自分を救う為の夢だったんだろうな、とラクスは思った。




