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四.世界は今日も平和だ

 悪夢のような一夜が明けた翌朝、タクミはうつ伏せのままベッドで目を覚ました。


「うーん、なんだか体が痛い。全身が強張ってるような……」


 ゆっくりと体を起こしたタクミは自分が着替えもせずに眠り込んでいたことに気が付いた。


「これなら、身体も硬くなるはずだ」


 立ち上がったタクミは体を伸ばしてコリをほぐした。

 

 改めてベッドに腰掛けたタクミは肩と首を回しながら、充電ドックで待機中のロイに言った。


「ロイ、きのうはありがとう。助かったよ」

『大事に至らなくてよかったです』


 ロイのいつも落ち着いた声を聞いたタクミは反省の弁を口にした。


「しばらく機械いじりはやめとくよ」

『それがいいです』

「顔を洗って朝飯済ませたら、気分転換に散歩にでも行くよ」

『いいですね。ちょうど、お天気も良く晴れて、絶好の散歩日和です』


 そうとなれば、善は急げとばかりに、タクミは足取りも軽くドアに向かうと、不意に振り返って冗談めいたことを言った。


「でもさ、世界中の掃除機を一斉に動かせたら、世界同時大掃除って、けっこう夢あるよね?」


 そう言い残して、タクミは階下へ降りて行った。


 とても昨夜、人生を詰みかけたヤツの言葉とは思えない。

 まさに人間誰しも“喉元過ぎればなんとやら”である。


 部屋に取り残されたロイはため息交じりに独り言ちた。


『ご主人、それ、夢じゃなくて悪夢です……』


 世界は今日も平和だ。

 少なくとも、掃除機が勝手に動き出さない程度には……。


 余談ながら、苦情は殺到したCR社はすぐに調査を開始した。

 その結果、自社サーバーの承認システムに一個人の認証情報を送るだけで、他のユーザ端末(掃除機)に対しても操作権限を与えてしまうという、アホ過ぎる致命的な欠陥を確認した。

 直ちにCR社は数日以内にサーバー側の問題を修正し、現在は自動アップデートによってこの欠陥は解消された。


 なお、暴走した他のスマート家電については未だに原因不明である。



《おしまい》

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