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三.ロイ、冷静にぶった切る

 一個人ではどうにもならい状況に陥る中、早くもSNSでは「#掃除機テロ」「#家電の反乱」がトレンド入りた。


「ど、どうしよう。俺、そんなつもりじゃ……ただ、ちょっと遊びたかっただけで……」


 もはや、世界中のユーザーの怒りがメーカーに集中するのは時間の問題だった。

 そして、そこから容易に予想されるのはメーカーの土下座謝罪からの怒涛(どとう)の原因究明&厳正な責任追及だった。


(あっ、詰んだ……)


 心の中でそう呟いたタクミは目の前が真っ暗になった。

 

 いったい賠償金はいくらになるのか、

 何も知らない両親にどう説明しよう、

 会社が晒されて上司や同僚がSNSで叩かれたらどうしよう等々、

 タクミの頭の中を最悪の事態が駆け巡った。


 文字通り「お先真っ暗」なタクミが頭を抱えていると、主人の様子を見かねたロイが冷静な口調で言った。


『ご主人、今からネットワークを遮断します』


 ロイが遮断した途端、まるで糸が切れたマリオネットのように世界の掃除機たちが一斉に動きを止めたが、どういう訳だかカメラだけは、しばらく機能し続けた。


 そして、大型液晶ディスプレイの各分割画面の中では、

 スペインの書斎では動きを止めた掃除機の上に乗った猫が毛づくろいし、

 アメリカの子供部屋で追いかけていた赤ちゃんは止まった掃除機の横でスヤスヤと眠り、

 日本の寝室では沈黙する掃除機などお構いなしに相変わらず夫婦喧嘩は続いていた。


 少しして分割画面が切り替わると、

 イタリアのキッチンで暴れていた掃除機パスタをくわえたまま廊下に放り出され、

 カナダのリビングでは犬が止まった掃除機をオモチャにしていた。


 一方、「勝手に動く掃除機」という怪談で盛り上がっていた台湾のネット民たちは、今度は「掃除機テロの仕掛人は誰?」とか、「家電の反乱を読み解く」など、陰謀論や考察で世界のネット民たち喧々諤々(けんけんがくがく)の議論を戦わせていた。


 やがて、唯一動いていたカメラも停止し、モニターから分割画面が次々と消えていった。

 また、世界中で暴走していたスマート家電たちも順次沈静化していった。


 こうして家電カオスは終息したのである。


 この様子を見届けたタクミは、安心したのか、事切れたようにベッドに倒れ込んだ。

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