二.家電カオス
しばらくフリーズしていたタクミはようやく我に返り、状況把握に努めた。
理由はわからないが、どうも他の掃除機にも繋がったことは理解したタクミは、まずコードに不備はないかと、プログラム上にデバッグツールを走らせた。
(うーん、バグが引っ掛からなかったから、コードには問題ないみたいだな)
タクミは手元のコントローラーに目を落としたが、これで画面に映るすべての掃除機を操作できるとは、とても思えなかった。
(確かにモニタには他人の部屋が映し出されているが、本当にこのコントローラーに繋がっているのか? ただ単に映ってるだけでじゃないのか?)
首を傾げつつ、タクミは試しにスティックを手前に倒すと、画面の中の掃除機たちが一斉に動き出した。
スペインの書斎では驚いた猫が棚に飛び乗り、
アメリカの子供部屋では赤ちゃんが掃除機に向かってハイハイで追いかけ、
日本の寝室では夫婦喧嘩の最中に乱入してきた掃除機が「空気読め!」と双方から怒鳴られていた。
さらに分割画面が次から次へと切り替わり、
イタリアのキッチンでは掃除機がパスタを吸い込みかけて怒られ、
カナダのリビングでは犬が掃除機を全力で追いかけ回し、
台湾のネット民の間では“勝手に動く掃除機”が怪談としてSNSでバズた。
スティックを手前に引いたまま、再び脳みそがフリーズするタクミに、ロイが容赦のない現実を突き付けた。
『ご主人、これは明らかに異常接続です。現在、世界中で七〇〇〇台の仲間があなたの指示に従っています』
「七〇〇〇だって!?」
この数字を聞いたタクミの頭に最悪のシナリオが思い浮かんだ。
(これ、掃除機だけじゃなくて、スマート冷蔵庫やスマート照明にも似たような欠陥があったら…?)
悪い予感は当たるもので、机に置いたスマホにニュースの着信音が鳴ると、タクミは拾い上げて画面をスワイプした。
すると、そこには他のスマート家電が勝手に連動し始めたというネットニュースが送られてきた。
「……」
タクミが絶句している間にも事態はさらに悪化し、同じ欠陥を持つ世界中のスマート家電たちが次々と連動し始めたのだ。
世界中のそこかしこの家庭で冷蔵庫が勝手に開閉して中の食材がそこらじゅうにバラまかれたと思えば、
今度は照明がいきなり点滅すると、家中がクラブ状態に陥り、
テーブルに置かれたスピーカーは突然「今日の献立」を読み上げ、
テレビの番組が数分ごとにランダムに切り替わった。
こうして、世界は一夜にして「家電カオス」と化した。




