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一.世界と繋がった夜(悪い意味で)

 これは日本のとある地方都市に住む平凡を絵に描いたような青年の身に起った悲劇である。

 

 休みを翌日に控えたその夜、タクミは深夜のテンションでコードを書いていた。 

 夕食後の入浴中に「ロボット掃除機をゲームコントローラーで動かせたら絶対楽しい」という、割り箸より軽い思いつきでタクミはアプリを作っていた。


 昼間は本職である電気技師として建物や工場、公共施設などで電気設備に関する幅広い業務をこなし、休日はAIの普及もあって手軽に楽しめるプログラミング・コードの記述に(いそ)しむ、そんなマニアックなオタク野郎である。


 高等専門学校(高専)電気科を卒業し、今の電気設備工事会社に勤めて五年目の冬。

清水の舞台から飛び降りる覚悟で最新AI搭載ロボット掃除機「ロイ」を購入。

ちなみに、このとき冬のボーナスが消し飛んだそうな……。


  その界隈では「超」の付く世界的ビッグネームであるCR社製が発売した最新のロボット掃除機・ロイの特徴はドローンの技術を応用したカメラとマイクを備え、ラジコンのように遠隔操作が可能な点にある。

 高画質のカメラを搭載しており、外出先からスマホを使って家の中を自由に走り回らせることがでる。

 また、ペットの様子を確認したり、留守番中の家族と会話したりと、非常に使い勝手のいい家電と好評を博し、世界中で愛用されている。


 しかし、自身の最新AIロボット掃除機をゲーム用コントローラーで操縦したい、そんなエンジニアの遊び心をくすぐる魔改造があの世界的な騒動を引き起こすとは、この時までは夢にも思わなかっただろう。


 コントローラーの信号をロイに伝えるための専用コードを自作したタクミは、次に通信の仕組みを解析してよいよ自分の掃除機に接続するための認証パスワードを入力したが、これが悲劇の引き金となった。


「よし、入力完了。後はコントローラーを繋げるだけだな」


 大型液晶ディスプレイにコントローラーを接続したタクミがスタートボタンを押した次の瞬間、幾つかの分割された画面に見知らぬリビング、知らない国のキッチン、謎の寝室等々が映し出された。

 しかし、明らかに自分の部屋ではなかった。

 しかも、どの画面にも同じ機種のロイらしき影が映り込んでいる。


 ロイが困惑気味に言った。


『ご主人、これでは掃除範囲が広過ぎます』


 状況に脳みそが追い付けていない中、いつもの落ち着いた声で話すロイとは対照的に、タクミはやっとの思いでノドの奥から絞り出すように呟いた。


「……どこ?」

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