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怪奇箱  作者: にとろ


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捏造写真

 最近はSNSでのフォローフォロワーの数を気にする人も多い。スマートフォンの登場で数を競うようなことをして居る人もいる、それが良いか悪いかはさておき、中には過激なことをして数字を稼ごうとする人も出てきた。


 水上さんもそのおかげで苦労させられた人の一人だ。


 始まりは深夜に肝試しをした若者が、水上さんの家の墓で写真を取ったことに始まる。その写真には墓石の裏側に青白い顔色をした幽霊が映り込んでいるというものだった。ただ、その写真はすぐに問題になったわけではない。インターネット上にアップロードされるとすぐに人間の解像度が高く、くっきりと映っているのに幽霊だけがピンボケ状態で映っているので怪しまれたのだ。幽霊なんだからカメラの設定に合わせたりしないんじゃないかと思っていたが、鑑定班が出てきてその写真の幽霊と風景の境界を細かく調べた結果、その幽霊は合成であることが分かり、その幽霊の素材がフリー素材であることまで判明した。


 それが僅かな間に起きてあっという間にその写真は忘れられるかに思えた。しかし、インチキ写真の取られた場所と言うことで別の意味で評判になってしまい、あの捏造写真が取られたところを見ていこうという者達が現れた。


 墓なのは事実なのだからそんなことをするべきではないと思うのだが、捏造だとバレたことから幽霊を恐れるものなどおらず、観光地化していった。


 あまりの酷さに自分の墓の区画に立ち入り禁止の看板を立てたりもしたが、そんなものを気にするなら墓に侵入したりはしない。そのせいでやたらとゴミが散らかったりしていた。多くの家が墓を建てているので墓地全体を関係者以外立ち入り禁止にするのも難しい。


 いたずら半分で入ってくる連中とのいたちごっこが続いていたのだが、ある時を境にピタッといたずらが止んだ。一体何故かは分からなかったが平和になったと言うことで落ち着いて墓参りが出来ると思えた。


 その次の彼岸に墓参りをして、迷惑料も兼ねて幾らかのお気持ちを管理している寺へ持っていった。すると住職が出てきて『大変でしたな』と言った。


 『ご迷惑をおかけしました』と言うと『いや、こちらも仕事ですからな、ああいった輩は戦前からいたと祖父の代から聞いております。仕方ないので馬鹿者たちに少しお灸を据えたんですが、ああいった連中は少しでも本物だと思うと来なくなるものです』


 住職はなにを言っているのだろうかと思うと説明してくれた。


「私も時折見回っておったのですがな、あなたの家の墓の前に女がすすり泣いておったんですよ。私がまだ小さい頃に一目見ただけだったのですが、あなたのおばあさんの若い頃でしたな。どうにも仏様にもああも無碍にされると悲しくなるようです。そこで私はその方に、イタズラで来たものを数人祟ると良いと言ったんですな。あの手の若者は根性がない、祟ると言っても数日熱が出る程度ですがな、それでも墓地に入った時に祟られて、すぐに噂が広まったのか全く来なくなりましたな」


 住職の言っていることは理解に苦しんだが、どうやら一応は解決をしたらしい。そんな解決方法で良いのかという疑問は残るものの、解決はしたと言うことだ。


 そして住職は水上さんに『ご先祖様を大切にしなさい』と言われ寺を後にした。ふと、線香がまだ余っていたことに気が付いたので、彼の祖母が眠っている墓に残りをまとめて立てておき、『ありがとうございます』と心の中で話しかけて帰ろうとした。そのとき吹き去った風に乗って『ありがとう』という言葉が聞こえたような気がした。その声は祖母のものだったような気がしたが、真相はどうでもよかった。ただ、あの墓なら安心して入れるなと少し足取りが軽くなった。

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