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怪奇箱  作者: にとろ


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思い出を焼く

 紀田さんは高校生の頃、なんとも奇妙な体験をしたそうだ。中学を卒業して無事高校に入ったのだが、そのときに参考書などの不要品が出た。たまたま近所の神社で定期のお祭りをしていたのだが、そのお祭りというのが思い入れのある写真や人形、ぬいぐるみなどの可燃物を火をたいてその中に入れ天に返すという祭りだった。


 当時はまだ環境にうるさくなかったので少々荒っぽいお祭りも許されていた緩い時代だった、それに参加して中学の参考書を受験も成功したので感謝も込めて焼いてしまおうと思った。


 その祭りでは写真の入ったアルバムなども燃やしていいので、アルバムがセーフなら参考書も似たようなものだし問題無いだろうと思い、祭りが開催される前に準備していたものを持っていった。


 神社では盛大に護摩行のような炎がたかれていた。一応の気持ちばかりの安全策として神社の本殿からは離れているし、きちんと近隣の家屋からも距離をとって消火器もいくつか用意した上で炎が揺らめいていた。


 受付の人に燃やしても問題ないか尋ねると、参考書のページをめくって、不燃物が混じっていないか確認された後で許可が出た。そうして皆が集まって、思い出の品を燃やしているところへ参考書を持っていくと、炎を見守っていた神主さんが受け取って、その細身に似合わない力で重い本をポイと炎の中に投げ込んだ。轟々と燃えていくのを見て、これからは大学受験になるんだなあと先のことを考えうんざりしていた。


 そんな時、後ろから勢いよく何かが炎の中に放り込まれた。一応神主が最終チェックをしてから焼いているのに、それをガン無視して後ろの方から炎の中に投げ込まれた。それは四角い本のようだったが、真っ黒であり、なんだろうと思って見たところ、地元の中学校の一つの校章が見えた。ああ、卒業アルバムかな? そう思ったのだがどうして燃やそうと思ったのだろうと不思議になって、それの飛んできた方を振り向いた。


 そこには黒い喪服を着たおばあさんが立っていたのだが、立っているのもやっとのように見え、とてもあの勢いで重いアルバムを投げられるとは思えない。では別の誰かだろうかと思ったのだが、近くにそれらしい人は居なかった。


 考えてもキリがないので、中学の三年間お世話になった参考書に感謝しつつ『成仏しろよ』などと神社に似合わない考えをしながら鳥居をくぐって出て行った。そのとき振り返ると、光の球が一つ、神社から天に向かって飛んで行っている。火の粉なら赤いのだろうが、それは白く発光している、人魂とは違うような気がしたが、それを見ていても結局空に消えただけで、なんなのかはさっぱり分からなかった。


 それから帰宅し、その事はなんとなく言わない方が良いだろうと思い普通の高校生活に戻った。


 ただ、それから数日後、両親が町内でなくなった人が出たと言うことでいろいろとしていたのだが、紀田さんには『アンタには関係無いから気にしないで』と言い、その事の詳細について教えてもらえることはなかった。


 あの人が連れて行かれたのか、あるいは誰かを連れて行ったのかは不明だが、直感であの老人が関係しているのだろうと思ったらしい。


 結局、今でもあの人の正体は不明だが、大学に進学した後、どうしても実家から足が遠のいてしまう理由の一つだと彼女は言った。

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