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怪奇箱  作者: にとろ


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グラグラの子供

 阿久さんはある日、クタクタになりながら会社から帰宅をしていた。そんな日から続いている怪異だそうだ。


 そのときはデスマーチと言っても差し支えないような状態から解放された日で、久しぶりに人間らしい生活が送れると楽しみにしていた。そのために疲れ切ってはいたが、それでも気分よく帰れそうではあった。


 帰り道、今日は帰ったら人間らしい飯を食べようかなと思いながら路地を歩いていると、隣を原付が生活道路とは思えない速さで駆け抜けていった。「制限速度も見えないのか」と嫌味の一つも行ってやりたくなった。


 しかし、急ブレーキの音が聞こえ、その車体は車道に出たところで横転した。遠くに車のヘッドライトが見え、焦ってバイクを探しているようだった。これは事故だと焦ってスマホを鞄から探そうとした、しかし事故現場に目をやると、原付はすぐに車体を起こして走り去っていった。


 さて……これではただの物損事故だ。自分がここまで疲れているのに、あの見るからに安そうだった原付が勝手に逃げていったからと言ってそれを通報する義務があるのだろうか?


 逡巡してから、傷を付けられたであろう車の人には気の毒だが、時間は有限なのでそのまま帰ってしまった。そのまま帰宅すると倒れ込むように布団に横になるとすぐに眠気が来て意識が落ちた。翌朝、目が覚めると首のまわりがかゆかった。どうも疲れていたせいで体を洗わなかったのが不味かったのだろう。


 朝なのでシャワーを浴びようと風呂場に行き、無精髭を剃ろうとしたときに鏡を見た。そこには自分の首にくるっとなにかがこすれたような跡が付いていた。『最近ほんと酷かったからな……』そう思って、シャワーを浴びるときに石けんでよく首回りを洗っておいた。


 それからさっぱりしたので二度寝をしようと布団に横になった。すると夢を見たのだが、子供が目の前に立っている。ただ、その子がこの世のものではないことは一目で分かった。首がぐらぐらしているのだ。それも時々九十度近く曲がったりしている。前後左右に首を振りながら自分の前にずっと立っていた。


 ワケも分からず立ち尽くしている間に夢は終わった。


 子供に何かした覚えは無い。どうしてそんな夢を見なければならないのか? 理不尽に感じながら目が覚めると、妙に首回りが凝っているのに気づいた。うんざりしながら外を歩くことにした。誓って子供に手を上げたことは無いのだが、どうしてあの子供はあんなに恨みがましい目をしていたのだろうと思う。


 ぼんやり歩いていると、昨日原付が事故っていた現場で警察が何か調べていた。あの原付、臆面も無く通報したのか? そう思いながら関わらないようにコンビニに行って弁当を買い帰宅した。


 それからスマホでニュースアプリを起動すると、地元のニュースが目に入った。そこには先日側道から飛び出してきたバイクを避けようとした自動車が急ハンドルを切り、横転こそしなかったものの、固定の甘いチャイルドシートに座っていた子供が負傷したと書かれていた。


 それを読んだ時点でその子供が負傷したのは首なのだろうと思った。しかしこんな話を警察に持ち込むわけにもいかない。子供の幽霊が出たなんて言って証拠として採用されるか怪しいし、無視したことを咎められるのも嫌だ。


 それから無視することに決め、責任から全力で逃げた、それが災いしたのだろうか、時々子供が夢に出てくるそうだ。いつもグラグラの首を振りながら彼の首を絞めようとする。しかしそれは子供であり、首がぐらついている状態でできるようなことではない。そこでいつも目が覚めるのだが、その子供が無性に気の毒になってしまう。


 あの時警察に素直に通報していたら……今更ではあるが彼はこれからも『ずっと後悔するでしょうね』と言う。

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