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怪奇箱  作者: にとろ


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蹴鞠する影

 タグチさんは最近困ったことになっているそうだ。その事について話を伺った。


 その始まりは通勤中に電車が遅れたことだ。


 ある日、電車が来ずにイライラしていると、アナウンスで前の駅で人身事故が起きたと聞いたことに端を発する。いろいろ思うことはあるし、よりにもよって通勤ラッシュのこの時期に人身事故なんて起こさなくても良いだろうにとどうしても文句の一つも言いたくなる。確かにそこまで追い詰められていたのかもしれないが、時間を考えてくれないものかと言いたい。


 その日は遅刻の連絡をしようとしたのだが、また延々と嫌味を言われるのかと思ったので、完全に赤字なのだがタクシーを使って通勤した。おかげでなんとか間に合ったのだが、お金を払って働くなんて馬鹿馬鹿しいことをさせられるもんだと思う。


 同じく電車通勤の同僚の一人が遅刻したことをネチネチ文句を言われていた。事故があったんだから仕方ないだろうと言いたかったのだが、こちらが巻き込まれる覚えは全く無い。ターゲットにされても困るので申し訳ないが黙っておいた。


 後でその同僚が『時間を考えて欲しいよ、あんなもの避けようがないだろう』と愚痴っていた。ごもっともだと思っていたが、上司が怖いので『大変でしたね』くらいしか言えなかった。


 なんとも後味が悪いのだが、そのまま帰宅をした。結構な時間なので帰宅するとすぐにシャワーだけ浴びて寝た。その夢の中の話だ。人影が蹴鞠をしていた。いや、実際に蹴鞠がどのようなものかなど見たことはないが、学校の教科書で習ったイメージそのままの蹴鞠だった。そしてその蹴鞠をしている人影には頭がなかった。そこで鞠に意識がいって吐きそうな考えが浮かんだ。幸いなことにそれがはっきり見えずシルエットになっているのに心底感謝した。


 自分の……蹴っている……そのあまりにもおぞましい見た目に逃げ出したくなるものを見せられて、ようやくからだが動くようになったかと思うと振り向いた瞬間に目が覚めた。


 なんて夢を見るんだと思いながらその日の出勤の準備をした。電車は使いたくなかったが、毎日タクシーなんて使うわけにはいかない。そんなことをしたら生活費が大幅に削られてしまう。


 そのため嫌々ながらも電車に乗って出勤した。あんな夢を見た割には電車で何かが起きることもなく普通に会社に着いた。同僚がもう来ていたので、ついつい昨日の事故について話を聞いた。


『なあ、昨日事故があったんだよな?』


『そうだよ、迷惑なもんだよ、おかげで今日は余裕を持って出勤だぜ、早出も付かないってのにな』


『もしかして事故現場を見たりしたのか』


『嫌なことを聞くな……見たよ。女が飛んで行ってたな』


 女? 男ではないのか? 昨日の夢は確か男だったような……


『そうか、大変だったな』


 それだけ言って仕事に入った。しかしそれではあの影は一体なんだったのだろうと思えてならない。あの蹴鞠をしている影は何故か直感的に男だと思った。では一体なんだったのか? それは不明だが、あの事故とは関係無いようだ。


 どうしたものかと思ったのだが、帰宅するときに小さな神社があるのを覚えていたので、少し脇道に逸れて小さな社に賽銭を入れて拝んでおいた。そのおかげかどうかは分からないが、とにかくそれ以来怪しいものを見ることはなくなったそうだ。


「これが体験したことの全てですよ。日常生活に問題はないんですがね、テレビなんかで球技を放映しているとあまり良い気分がしないのでチャンネルを変えるようになってしまったこと以外に不便は無いですかね」


 彼はそう言った。一応日常生活に支障は無いそうだが、オリンピックがあった年は同僚や上司と話が合うだろうかと不安になるそうだ。

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