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怪奇箱  作者: にとろ


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サイレンの音

 平さんは高校生だった頃、不思議なものを見たそうだ。とはいえ、いろいろ理解したのは随分と後になってのことではある。それは今にして思えば後味の悪い話だったのだと思うようなことだった。


 高校時代、その日は休日だった。予習と復習はしたし、どうせ学年が上がれば必死に受験勉強になるのだからと一年のこの時期くらいは最低限で済ませようとしていた。


 彼の家からは通っている高校が見える。そこで自分が休んでいる中、必死に部活をしている連中を見物してやろうと悪趣味な思いつきが浮かんだ。向こうから見えない程度にカーテンを閉めて、スマホを操作しながらぼんやりと校舎とグラウンドを眺めた。グラウンドでは運動部がバタバタ動いている。この暑いのに屋内に入れないとは酷いものだと思ったが、その当時は今が一番暑い年だと思っていたので一年くらい我慢すれば来年からは過ごせる程度の気温になるだろうと思っていた。


 部室もいくつか見えるのだが、文化系の部活は少人数で何やらしている様子だった。帰宅部の自分には分からないが、少なくとも運動をしないで済むし、冷房も一応設置されているので幾らかマシなのだろうと思った。


 そうして一通りの部活を見て、グラウンドで野球部が模擬試合をやっているのを冷たい飲み物を飲みながら眺めた。勝手にどちらが勝つか予想しつつ冷えた部屋で見物するのは楽しかったそうだ。


 九回が終わった時点で逆転も何も無く、九回裏は流れてそのまま片方が勝った。がんばったなーなんて思いつつ見物も終わろうかとしたとき『ウーーーン!』とサイレンが鳴った。きっと野球部の試合終了を告げるものだろうと思い目を逸らした。そこでふと気が付いたのだが、普段彼が勉強している教室に結構な人数が集まっていた。模試を忘れていたかと思ったのだが、そんなものはしていない。部活は部室でやるもので、教室を部活に使用することはないはずだった。


 奇妙に思えたのでじっと見ていると、その教室に集まった生徒はなんだか違和感がある気がした。じっと見てその違和感に気づいたのだが、そこに居る彼ら彼女らは今の制服ではない、学校の歴史的なものを教えられたときに見たモノクロ写真の制服にそっくりだった。


 混乱しつつアレは一体なんだろうと観察していると、ふっと教室内から人が消えた。何が起きたのかは分からないが、おかしな事が起きていることだけは分かった。


 考えてもその教室は開いたままだったので、彼は見間違えだと自分に言い聞かせ、キッチンへジュースを取りに言った。そのとき冷蔵庫を開けようとすると、テレビのチャンネルがケーブルテレビになっているのに気づいた。何故そんなところを映しているのか考えていると、ローカルニュースとして、今年で終戦何年で、ある年にこの町に空襲があった日だと伝えていた。


 実際に聞いたことがあるわけでは無いのだが、今まであんな音は聞いたことがなかったので、野球部のサイレンだと思っていたものが、実は空襲警報だったのだろうと思い至った。


 ただ、家族の誰も聞いていないし、休み明けにも誰一人としてそんなものは聞いていなかった。結局彼はそれ以来高校を覗くということを止め、それからはまともに勉強をするようになったそうだ。

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