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怪奇箱  作者: にとろ


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最後の挨拶

 日和さんは小学校に入学するときに、祖父が「子供はこういうのが欲しいんだろう」と言ってスマホをくれた。まだスマホが普及しきる少し前で、まあ使えるかなという黎明期だった。


 小学校に入ってから、ケータイを持っている子たちと連絡先の交換をしていった、あまり教師はいい顔をしないものだが、当時はもうスマホとまで行かなくても携帯は割とみんな持っていたらしい。


 そうして入学してから早速友人を作ることに成功したのだが、連絡先の交換はそれから親の承認制となった。始めは両親ともに使い方がよく分かっておらず、初期で渡されたときに入っていたのは祖父と両親の連絡先だけだった。


 一応結構な数を消したかったようだが、もうすでに両親より使いこなしていたので、連絡先はバックアップしていたし、そもそも紙に書いた友人の連絡先もあったので結構な数が残った。


 その頃はまあまあ治安が悪いネットだったが、スマホの普及もあり、徐々にルールを決めた家庭も増えていった。結局は学校側も規制を諦め、授業中は出さないことと、持っていない子を仲間はずれにしないことと言う条件付きで認められた。


 それからは普通に使っていたのだが、問題の話は二年後に起きた。


 朝起きて部屋のカーテンを開けると陽光が差し込んできた。深呼吸をしてから登校の準備をしつつスマホを確認した。その頃になるともう大体の子供はケータイではなくスマホを持っていた。


 まだ持っていない子もいたが、そういう子は従来型のケータイすらも持たせない方針の家庭だった。


 スマホにはいつもの友達からのメッセージが届いており、確認をした。一通りの確認を済ませてホーム画面に戻ると、いつも使っているメッセンジャーではなく、スマホのショートメッセージに通知がついていた。こちらは送る度に料金がかかるので出来るかぎり使うなと言われていた。


 些細な料金ではあるが、それが積み重なると野放図な使用をするようになるからだと後で理由を聞いたそうだ。


 そこには祖父の名前が出ており、メッセージをタップして読んだ後、返信して問題が無いか母親に許可を求めることになっていた。


 数円くらいとは思うけれど、自分のお金を使うわけではないとも思っていたので、キッチンに行って料理を作っていた母に『おじいちゃんからメッセージが届いたんだけど返信していい?』と尋ねた。すると母親はキョトンとしてから顔を赤くして『アンタは何言ってんの! 怖い嘘は止めなさい!』と怒られた。知っている相手だというのに何故そんなに腹を立てたのかは不明だったが、とにかく返信はしない方が良いなと思った。


 何故母親が怒ったのかが分かったのは夏になる。お盆休みで帰省をすることになったのだが、おじいちゃんの姿が見えないなと思っていた。その事を何気なく言うと『アンタは子供だったから参加させなかったけどね、おじいちゃんのお葬式は春にしたのよ』と母が言った。


 メッセージが届いたのは夏の前、よく考えると家がバタバタしていたのはそれより前だった。そのときは何故忙しそうにしているか不明だったが、どうやらその頃が葬儀だったようだ。ではこれは誰が送ったのか? そう考えると少し怖かった。ただメッセージを見る限り、そんなに怖がることもなかったんじゃないかなと思うらしい。


 メッセージには『さよなら、元気でな』とだけ書かれて送信されていた。

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