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怪奇箱  作者: にとろ


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天然物

 吉城さんの家には使っていないが電源だけは入っている冷蔵庫があるらしい。彼はもういい年だが、その古い冷蔵庫は未だに彼の幼い頃の過ちを責めているそうだ。その事について話を聞いた。


 吉城さんの両親は当時、加工食品を目の敵にしていた。ハムやソーセージ、コーラやサイダーまで、様々な人の手が入ったものを嫌っており、人工物が入ったものなど人が食べるべきではないという考えで、食事も農薬などを全く使っていないものにしていた。肉は動物に薬が与えられているというニュースを見て拒否するようになる徹底ぶりだった。


 そのため吉城さんが食べられるお菓子となると、果物やニンジンのグラッセなど、出来るかぎりの天然物を選んで与えられていた。当然そんなものばかりだと文句を言いたくなるのだが、言ったところで『アンタのためを思ってるのよ』と幾度となくやった不毛なやりとりをする羽目になるので諦めていた。


 父親は諦めて残業と言い飲みに出かけてそこで好き放題食べていたのを知るのは少し後になってからだ。


 友人の家でもお菓子が出たら手を出してはいけない、食べたのがバレようものなら何を食べたのか友人宅に電話をするほどだった。


 友人たちはある程度理解はしてくれていたのだが、やはり食べたい人が多く、食べないことを責められはしなかったが、美味しそうにお菓子を食べている友人達を羨ましそうに見ることしか出来なかった。


 お小遣いはもらえていたが、明朗会計で、きっちり何に使ったか教えなければならない。そのくらい自由にさせて欲しかったし、それはもうお小遣いではないのではないかと思ったが、そんな言葉を聞いてくれることはなかった。


 そんな生活をしていた小学生の頃、ある日友人宅から帰宅しているとき、道ばたにお菓子がたくさん置かれていた。これがスーパーの棚に並んでいたのなら手を出さなかっただろう。誰も興味を持っていない、私有地でもない道路脇に置かれているのだ。当時はそれが何を意味しているか分かっていなかったので、その中から比較的綺麗なお菓子をこっそり持ち帰った。


 そしてお菓子の中にチョコレートもあったので、冷蔵庫の奥に溶けないように隠した。幸い冷蔵庫は天然物にこだわる母のため、加工済みのものを買えばもっとスペースもあるのだろうが、ぎゅうぎゅうに野菜などが詰まっているので隠しておいてもバレないだろうと奥の方に押し込んだ。


 その後、変化は割とすぐ起きた。美味しくスナック菓子を食べて、ゴミをこっそり近所に捨てにいっていたとき、母親が冷蔵庫の中を整理していた。見つかるのではないかと思い心配していたが、あの母親が何故かゴミ袋に野菜を詰めていた。よく見るとその野菜は全部色が変わって傷んでいた。


 その晩、あのチョコのせいだろうとなんとなく分かってしまい、隠しておいたものを全て部屋に持ちかえり、胃の腑に収めた。これで証拠は残らないと思ったのだが、お菓子がなくなってもその冷蔵庫では中身がすぐに傷んでいった。


 結局、冷蔵庫を新しく買って解決したのだが、古い方は電源が入っていないと強烈な腐臭を放つようになり、粗大ゴミに捨てるにも困ったので中身を空にしたままずっと冷やすことになったそうだ。


「あの時もう少しものが分かるガキだったねえ……」


 吉城さんは後悔をしつつしみじみそう語る。

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