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怪奇箱  作者: にとろ


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通ってはいけない道

 福田さんが高校時代、学校の帰り道をいつも遠まわりしていたそうだ。その理由は、入学してから通学路が指定されており、一軒の家を避ける道になっていたのだが、何故その家を避けるのかは決して教えてもらえなかった。その結果、誰も理由は分からないが、その家は噂の対象となった。


『あの家は強盗に遭って一家全滅したらしいよ』『私はガス漏れで全滅したって聞いたけど』『私は買い切れない数のペットを飼って病気で亡くなってからペットが全滅したって聞いたけど』等々、どれも噂の域を出ないものが流れていた。


 まことしやかにそんな噂が流れていたのだが、福田さんが困ったのはその道が家から直線で高校に行こうとするとその前を通ることだった。通ってはならないということでその家の前の道を避け、かなりの遠まわりをすることになる。


 当然、毎日そんなまわり道をするのは面倒なのだが、友人にもそこを通ったときに何か変なものを見たと言う子が大勢居たので不気味であり、嫌々ながら避けておいた方がいいだろうと迂回していた。


 そんな時、受験が近づいてくると夜も遅くなってしまう。夜というと大げさだが、夕暮れで日が沈みかけくらいの時間にはなる。日が短くなっていた時期なので仕方ないが、嫌々ながら遠まわりをして帰っていた。


 ただ、ある日、家族がいつも勉強を頑張っていると言うことで新しいスマホを買ってきてもらう約束をしていた。模試で結果が良好だったご褒美なのだが、新機種を使いたくて待ちきれず、下校したら大急ぎで帰った。そのときは流石にその家の前を通っても何もないだろうと踏んで突っ切ることにした。


 どうせ一瞬で通り過ぎるのだから危険など無い、そう思って駆け抜ける。駆け足で通り過ぎようとして、ついその家を見上げてしまった。家の二階の窓から女が一人、明かりのついた部屋からこちらを見下ろしているように見えた。ただ、その女は瞳が真っ白で、こちらが見えているとは思えなかった。


 そこでようやくそこを通ってはならないと理解したが、今更引き返せないので大急ぎでそこを駆け抜ける。家について人心地ついて、ようやく深呼吸が出来た。


「アンタどうしたの? スマホは逃げないから安心しなさい」


 どうも親はスマホを待ちきれなかったと思っているようなので、彼女は今見たものを母親に洗いざらい……といっても不気味な女がいたことくらいだが……を話した。するとすぐに表情が険しくなる。


「その女は生きてるもんじゃないよ、いいかい、そこはもう二度と通らないようにしなさい」


 そこでアレが何ものなのかを聞くと、あそこの謂れを話してくれた。


 それは彼女が生まれる頃、まだ記憶のない頃にその家であった事件だ。あそこには家族が暮らしていたのだが、母親が育児ノイローゼになり子供に手を上げていたのだが、それが明るみに出て父親が子供を引き取って実家に避難した。離婚も考えていたそうだが、その前に母親がその家で餓死しているのが見つかった。なんでも子供がいなくなって食べるという人の本能すら失ってしまったのではないかと言われたらしい。


 そうしてその家には誰も住んでいない状態で放置されているという。福田さんが怖くなるには十分だったが一つ疑問が湧いた。


「ねえ、その家って誰も住んでないんだよね? 私が通ったときには女の人が明かりの中に立ってたんだけど?」


 そう言うと母親は険しい顔になってから『多分まだあの家に誰か戻ってくると思ってるんだろうね、アンタも引っ張られたくなかったらあの家に近づくんじゃないよ』と言われた。


 母親の目が白くなっていたことを言うと『何でかは知らないけどね、見つかったときは白内障の末期だったらしいよ。そんな歳じゃなかったはずなんだけどね、どうしてかなんて知らないよ』と言われた。


 お祓いの一つでもしないのかと聞くと、あそこを見たところで神主から住職まで匙を投げたそうだ。家への執着が強すぎるので建物だけ残して自然に恨みが薄れるまで放置するしか無いと言われたそうだ。


 そうしてあの家は放置されていると言う。ただ、何故その家で明かりがついたのかは分からない。おそらくそれは電灯ではなく何か不気味な別の何かだろうということだ。


 それから彼女は新しいスマホをもらったが、学校で写真を取るときにその家が絶対に映り込まないように気をつけていたそうだ。またアレが見えたら自分の正気が怪しく思えてしまうと言う。


 高校を卒業したらさっさと大学に進学するのに合わせて一人暮らしすると言い、あの家からは急いで逃げたそうだ。たまに実家に帰るときもあそこから迂回できるかぎり遠まわりをして駅から帰っていると言う。


 その家はまだ本州某所にあると言っていた。

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