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怪奇箱  作者: にとろ


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背の高い生徒

 椎奈さんは高校生だった頃、学校に忘れ物を取りにいった。まだ通っていた高校が木造校舎だった時代で、それまでも何かが出ると噂が絶えない場所だった。別に幽霊の類いを信じているわけではなかったが、やはり気持ちの良いものではない。さっさと忘れ物を持って帰ろうと自分の在籍している二階の教室を見上げた。まだ夕方だったので鍵は開いている。そこに一人の背の高い女子生徒が窓際に立っているのが見えた。


 何故こんな時間に教室にいるのだろうとは思ったが、自分も忘れ物を取りに教室に入ろうとしている手前、気にすることもなかった。


 ギイギイ鳴る廊下を歩いて教室に入ると、鞄の中身だったものを放置していたため、それを回収して学生鞄に入れて教室を出ようとした。ふと窓の方を見るとカーテンが掛かっている。はて? ではさっき窓際に立っていた子がカーテンを閉めたのだろうか? いや、それにしてもおかしい。教室から出てくる気配は全く無かったし、よく考えてみるとあの少女を見た時に教室のカーテンはもう閉まっていた。


 では彼女はカーテンと窓の間に立っていたことになる。不可能ではないがそんなことをする理由が分からない。そもそもこの教室は部活にも使っていないのだから教室に入る意味がよく分からない。忘れ物を自分と同じようにしていたのならそんな奇妙なところに立って肯定を見下ろす理由が分からない。


 じゃあ一体誰が何のために? そう考えるとこの校舎に沢山の怪談があるのを思いだして冷や汗が出てきた。早く帰るべきだと頭が言っているのだが、ついつい彼女の立っていた窓が気になりそこに近寄ってみた。カーテンはしっかり閉まっているし、誰かが立っていた跡も無い。きっと気のせいだったのだろうと思い確認のために開けたカーテンを閉めて、教室を出ようと考えていたところでついつい上を見上げてしまった。


 そこにはカーテンレールがあっただけなのだが……カーテンレールに傷がついていた。嫌な予感がする、脳が『それ以上考えるな』と言っている。だが思考は止まらず、その部分をよく観察してしまった。


 そこにはなにかがこすれた跡があり、何か重いものをぶら下げていたようにこすれた痕が残っている。考えるなと思うのだが、彼女の背が高く見えたこともよく考えると……まるで何かの上に立っていたかのようで……それがもしも立っていたのではないのだとしたら……


 想像はとめどなく溢れ恐ろしい結論に達しようとしていたのだが、必死に考えないようにしてその場を立ち去った。考えたくない結論が頭に残る前に必死に教室から逃げ去った。そんなことがあってたまるか。


 急いで家に帰って必死に勉強をした。勉強をして難しい問題に取り組んでいる間はあの恐ろしい想像をする余裕が無い。だから必死に明日の予習をして深く考えないようにした。


 後日、あの教室で何があったかは極力考えないようにした。世の中には知らない方が良いことがある。ただそれだけのことだ。


 その後、その女子生徒を見たと言う生徒はいなかったので忘れようとしていた。


 後に校舎も取り壊され、彼女の記憶もすっかり過去のものとなりつつある。今の懸念と言えば、自分の娘が同じ高校に行きたいと言い出したことだ。もちろん旧校舎はもう無いし、新校舎では不穏な噂など聞いたことも無い。だからきっと大丈夫なはずだし、いつまでも四半世紀も前のことを引きずるべきではないことくらいは分かっている。ただ、それでも娘をそこに進学させるのはどうしても心理的な抵抗があるそうだ。

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