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怪奇箱  作者: にとろ


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本物がいる

 羽田さんが大学にいた頃の話になる。今ほど評価が厳しくなく、卒業すればとりあえず就職できるような時代だった。


 さて、単位を取るために必死になる必要が無いとやはり大学を楽しもうと思う、そのためご多分に漏れずサークルに入った。何のサークルかは迷惑をかけるのでオフレコと言うことだ。ただ、早速大学で新入生の歓迎会ということで肝試しをすると知らされた。体育会系のサークルだったので珍しいなと思っていたら、男女同数でいって良い感じになるのが目的で、別に誰も幽霊などというものは信じていないとサークルのみんなが公言した。


 そして高校生と違い、夜に町を出歩いても補導されるような年ではない。だから大学一回生はタガがはずれやすいのか、結構な人数が集まった。目的地は上級生が決めているが、下級生には伝えられていなかった。しかし、そんなことより高校までの田舎感が抜けない自分には洒脱な女性たちは刺激が強かった。そのためどこへ行くのかなどどうでもよく、ただ数台の車に揺られるままに可愛い子たちに目移りしていた。


 そうして着いたのはまだ町からそこまで離れていない霊園だった。そこで好きにカップルを組んで霊園の中を一周してこいと上級生が言う。もちろん行った本人たちも楽しそうに女漁りをしている。


 大体のペアが決まったところで余っていた地味な子とペアを決められた。余り物どうしでくっつけられた感じはしたが、それでもなかなか目立たないだけで可愛い子だったので安心できる。


 それから順番に霊園を一組ずつ回っていく。中でイチャついているのだろう、懐中電灯の明かりがぐらぐら揺れているのが見える。楽しそうで何よりだなと思いながら、ようやく自分の番が回ってきた。その子、仮にRとする、子と一緒に霊園に入った。Rは迷わず抱きついてきたので自分に気があるのかと思ったが、すぐにRは『ゴメン、お腹痛いから帰ろう』と言う。正直がっかりだったが、体調不良のRを無理して連れ回すことはない。


 そもそもそんなに体調が悪いなら何故ついてきたのか疑問だったが、Rがそこで座り込んだので少し待って、『落ち着いたよ』と言うのを聞いて安心して霊園をさも一周したかのような顔をしたまま皆の前に現れた。


 どうだった? などといろいろニヤニヤした視線を感じるが、ここで正直に言っても冷めるだけなのでRと一緒に『怖かったねー』などと適当に返事をしてそのまま肝試しは続き、全員が回ったところで現地解散となった。必要ならタクシーを使えということらしい。Rがタクシーを呼んでいるのだが、『羽田くんも一緒に帰ろ』と言われ、困惑しつつも同じタクシーに乗って自宅のアパートに送ってもらった。『元気でね』と言い彼女を見送る。


 何か言いたそうにしていたのだが結局言わずに帰っていった。


 それから大学のサークルで怪我人が続出した。普段ならあり得ないような普段の使い方をしているのに変な壊れ方をしてその器具で怪我をするようなことが多かった。


 他にも自動車やバイクで怪我をしてギプスを着けているような人も居た。しかし自分とRだけは何も起きなかった。勇気を出してRに話を聞くことにした。なんだか彼女が事情を知っているような気がしてならない。


「ふぅ……その事ね、言って信じるかどうかは自由だけど霊障よ」


「え……? 霊障って幽霊が原因ってことか?」


 Rは大きく頷いて語り出した。


「あの霊園ね、割と多くの悪霊が見えたのよ。信じるかどうかは自由だけど、あんな中に入っていくのはゴメンだったからあなたを引き留めて入らなかったの。おかげで助かったんだよ?」


 にわかには信じられないことを言うが、現在のサークル内の怪我人の数がその理論の信憑性を高めていた。


「その……俺は大丈夫なのかな?」


 怖々Rにそう尋ねると……


「私が安全な場所で引き留めたから大丈夫よ、でもあの霊園にはもう行かない方がいいと思うよ」


 それだけ聞いてなんとなく今までの怪我人の理由を想像してしまう。結局怖くなってサークルを辞めようとしたのだが、その前に怪我人があまりにも多いので普通にサークル自体が立ち消えになって終わった。彼は出来れば今でも霊園に行く時はそこで眠っているあの世の者達に敬意を払っている。そのおかげか、社会人になっても未だ祟られるようなことはなかったという。

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