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怪奇箱  作者: にとろ


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人差し指

 岡田さんは友人たちととある神社に来ていた。そこは軍神を祀っている神社だ。


 史跡を見て回るということで数人の友人と一緒に来ていたのだが、中には歴史などに全く興味は無いが、歴女ブームなどでワンチャンあるのではないかという者や、観光地なんだから面白いだろ程度の気持ちで参加した人もいた。


 皆で電車に乗ってそこへ向かったのだが、歴史に興味のない連中はスマホを弄っていたし、むしろ岡田さんのような歴史に興味がある方が少数派なのかもしれないというグループになってしまっていた。


 しかし数人話が合う人はいて、その人達とその神社の謂れについて話し合ったりしていた。隣でFPSの銃声がしていたのは気になっていたが、空気が悪くなるのは嫌なので聞こえないふりをした。他の人はどうもそういった冷やかし連中はそもそも興味を持っていないようだ。別に何も言わず、ただ興味がある人たちだけで話し合っていた。


 そうしてしばらくして目的地の駅に着いた。観光名所だけあって、その地にちなんだ名物料理や、お土産などを売っている店が目についた。それらを丁重に後回しにして目的の神社へ向かった。


 神社には立派な鳥居があって、それをくぐって全員で入っていった。都市部なのだが、そこでは何故か自然を感じられるような気がして気が引き締まる。そうして各所を回っていった。鎮魂の碑やこの神社の来歴などを見ながら、思いを馳せていたのだが、興味のない連中が、わずかに興味のあった友人に『アレって何?』などと指さしてそれがどういうものか聞いていた。罰当たりだと言うこともできるが、どうせ態度を改めたりしないだろうという諦めから、これをきっかけに少しでも興味を持ってくれたらなと淡い期待を持っていた。


 様々なものを見て回り、観光地化するだけのことはあり、見応えのあるものが多いなと思いながら皆で電車で帰っていった。その中でも今日見たものに興味のない連中が、女を口説いていたのだが、その気がないとみるや『おもんないところだったな』などと言い放っていた。呆れつつその日は地元の駅まで帰ってそこで解散となった。


 話は翌朝に飛び、スマホのメッセンジャーを開くと全員に『ちょっと集まってくれ』という連絡が入っていた。昨日あそこに行った奴らの中でも興味のなさそうな連中が即座に反応しているのを見て、アレだけやらかしていたのだから何かあってもおかしくないなと思いながら集合場所に全員で集まった。


 そこには昨日一緒に行った連中のほとんどが集まっていたのだが、あの時興味も無いのに参加した連中が人差し指に包帯を巻いたり絆創膏をつけたり、様々な治療をしている様子だが、とにかく怪我をしていた。


「なあ岡田、お前祟りと狩って信じてるか? 俺らがこんな怪我をしたのって祟りなのかな?」


 昨日とはうって変わって弱気な連中に『祟りにしては軽い方だし、たぶんそれ以上何かは無いんじゃないかな』と言った。


「でもさ、やっぱりお詫びとかした方がいいんじゃないか? 賽銭を入れたりさ……」


 そこまでしなくてもいいだろう。指さすだけで怪我をするにしても、それ以上に何かがあるとも思えない。しばらくは不便するだろうがそれで済むだろうと言っておいた。


 安心したわけではないのだろうが、皆怪我をした連中を悪く言うこともなく、適切な治療や必要なら病院を勧めて解散した。


 そうして帰ってから、その神社に祟るような神様がいるのだろうかとふと思った。自分たちが守った人間の子孫が不敬を働いたからと言って命を奪うようなことはしないのではないかと思う。念のためスマホであの神社について調べると、そもそも日本に銃が来て、それが大量生産され始めた頃の軍神と呼ばれたような神を祀っていると書かれていた。


 そこでふと思った。あの時は人差し指ばかり怪我してるんだなと思ったのだが、よく考えてみるとアイツらは全員右手の人差し指を怪我していた。そう言えば銃を撃つための引き金は人差し指で引くなと思い、ああ、それで人差し指を怪我したのかと妙に納得したのだった。

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