表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪奇箱  作者: にとろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/56

封鎖トンネル

 私がバイクでツーリングをしていた時のこと、とある日本海側の小さな町で聞いた話。


 その町へトンネルを抜けて、決めてあった旅館に向けてバイクを走らせていたのだが、雨がポツポツと降ってきたので近くのファミレスに入った。はっきり言うと『過疎地だな』と思っていたので客はほとんど居なかった。


 シートにだけ防水カバーを掛けて、雨が止むまでバイクの見える席で待っていた。そうすると通りがかりの高校生が、そこの道を通る時に珍しいものを見る目でバイクを見ていた。確かにここに来るまで大型バイクは見なかったし、珍しいんだろうなと思いながら、ドリンクバーでコーヒーを淹れて席に戻った。


 そこで『おじさん、あのバイクすごいね!』と子供がはしゃいでいたのだが、些細なことで転ぶバイクに子供が興味を持つのは良いことではない。


「ありがとう、でも乗りたいなら大人になってからだよ」


 と答えたのだが、子供は私のバイクが気に入ったのかじっと見ていた。そこへこの男の子の姉がやって来て子供に「ダメでしょ! 迷惑かけちゃ!」と叱っていたので、別に構いませんよと答えると、彼女は弟を後ろにやって、よそ者が珍しいのか私に話しかけてくる。


「ここで何をしているんです?」


「ああ、たまにツーリングをしているんですよ。メインの趣味は怪談蒐集なんですがね」


 そう答えると、彼女は『席をご一緒しても?』と真剣な目で言うので、『どうぞ』とだけ言う。彼女は弟と席に座って私に話をし始める。


「あの……怪談を集めているんですよね? この前不思議な体験をしたんですけど意見をいただけますか?」


 それは願ってもないので一も二もなく頷いて話を促した。彼女の話によると、それはこの町にあるトンネルにまつわる話だそうだ。


 ここら辺には多くのトンネルで山を抜けてくるようになっていて、トンネルが無いと大回りをしないと出られないような場所なんですよ。そこでこの前奇妙な事がありまして。


 あの日はそろそろ暑くなってきていたので夜を選んでコンビニに文房具を買いにいったんです。この弟が突然『明日カッターがいるんだけどもってる?』と言うもので、家の誰も持っていなかったので、しかたなく涼しくなってきた時間にコンビニに買いに行ったんです。


 ただ、そのコンビニの近くなんですけど、使われなくなって封鎖されたトンネルがあるんです。そこは崩落こそしていないんですが、入り口に鎖が張られていて立ち入り禁止の札が下げてあるんです。危ないからだと思っていたんですよ。でも新しくしないのかなと思ってから、税金も有限だからかなと思い、そういうものだと思っていたんです。


 コンビニでカッターを買って帰っている途中で振り返ると、その封鎖トンネルから光りが二つ飛び出してきたんですよ。『車? 肝試しにでも来たのかな?』と思ったんです。それまでもバイクや車でヤンキーが乗り付けて肝試しをするようなことはあったんです。だからまた来たのかと思ったんですが、よくその光を見ると少しおかしいんですよ。


 普通は自動車のヘッドライトだったら平行に進んでいくはずじゃ無いですか? なのにその光は二つが競い合うように微妙に追い抜き追い越ししていたんです。車じゃない? と思ってその光をじっと見たんです。そうしたら悲鳴を上げそうになりましたよ。アレはライトなんかじゃないんです、二つの光る生首が競い合うように飛んで行っていたんですよ。それを立ち尽くして見ていると、お寺の方へ我先にと急いで消えていったんです。あれ、なんだと思いますか?


 その問いに対し、私は『すぐには分かりませんが害がないなら気にしないことです』と言っておいた。悪意のある霊の類いならもっと何か起きているだろう。それに悪霊が自分から寺に行くような話はあまり無い。


 彼女も一応は納得してくれたのか『ありがとうございます』と言って自分のテーブルに弟の手を引いて帰っていった。そこで雨が止んでいたのでそのまま会計を済ませバイクを軽く拭いて走って旅館に走らせた。翌日、そのとき彼女が見たのであろう古いトンネルが一つ目に入って、「ああ、ここか」と思い、『ここなら出るだろうな』と思った。


 その山はかつて上の方に刑場があったことで有名な場所だ。ただ、それをわざわざ彼女に伝えに戻る気にもなれずそのまま旅館で一晩泊まって帰宅した。あのトンネルにどれほどの悪意があるのかは分からないが、少なくとも救いを求めて寺に行くくらいなのでそれほど危険は無いだろう。


 帰宅してその某所で起きた事件を検索してみたが、大した事件が起きたという情報は出てこなかったのでおそらくは次第に鎮まってくれるのだろう。それと同時に、観光地にしようとしている以上、あの町では語り継いでいくような話ではないのだろうと思い、こうして某所として話に留めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ