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怪奇箱  作者: にとろ


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あばら屋で起きたこと

 宏美さんの地元には雑木林があるのだが、その中に一軒のあばら屋があると言う。そこにはあまり平和とは言い難い噂があり、ある人はそこが飢饉の時の口減らしに使われたと言い、またある人は昔姥捨て山として使われていた時にそこに捨ててくるようにしていたとか、病が流行った時に感染者をそこに隔離したなどという噂が流れていた。


 何にせよそこがあまり良い場所ではないというのは確かな噂になっていた。しかしそうなると人が近寄ることも少なくなり、朽ち果てつつあるその小屋も、普通に不気味に思っている人は近寄らなかった。


 そうなると人を避けたい連中がたむろするには絶好の場所になってしまう。そんなわけでその周辺はあまり素行の良くない連中の集まる場所として評判になっていた。口さがないものは『あそこは掃きだめだ』などとはっきり言いきっていた。


 そんな場所にある日弟が『ちょっと行ってくる』と言って向かった。普段から素行の悪さに定評がある弟だったので、その付近で酒盛りをしたりしていると悪い意味で評判になっていた。家族含め『そういうやつ』で済ませていたので、未成年でもわざわざあそこに集まっているのだから、酒盛りをわざわざ責めて揉めることもないと誰も責めなかった。なんなら自分から人目を避けてくれるので歓迎している雰囲気すらあった。


 その日も、また酔っぱらって帰ってくるのかと思いながら弟を見送った。家族も誰も心配などしていなかったし、幸い歩いて行ける範囲なので飲酒運転の恐れもない。自分からトラブルを避けてくれているのを責める必要は無いという空気だった。


 そして両親と夕食を食べて呑気に自室のベッドでスマホを操作していると、いきなり着信が来た。弟の名前が表示されているのだが、彼は通話アプリを使っていたので通常の電話をかけてくることに違和感はあった。しかし無視するのも何だしと電話に出た。すると悲鳴が鳴り響いていた。


「姉ちゃん! 助けて! たすけ! たす……!」


 弟の名前を呼んだがそれに返事は無かった。一体何が起きたのかは分からないがただ事ではない気がした。しかし両親は弟が未成年飲酒をしているだろうし、わざわざ通報するなと言っていた。何かトラブルに巻き込まれても自業自得だとはっきり言って憚らなかった。


 仕方ないのでメッセンジャーで『何かあった?』とだけ送って放っておいた。電話をかけ直したかったが、混乱していたようだし、なんとなく嫌な予感がして不気味だったのでどうしてもかけられなかった。


 翌日、弟は何の問題も無く帰ってきた。スッキリした顔で、いつもの二日酔いでも、酔っぱらっている最中でもなく、全くの素面の様子だった。おかしいのはそれからすっかり弟の素行が良くなったことだ。


 多くの人から眉をひそめられていたのが、きちんと朝起きて遅刻せず学校に通い、真面目に勉強をして成績もめきめき上がっていった。そうなると両親も弟に少しはいい顔をするようになって、それでも調子に乗らない弟はそれから悪い仲間と縁を切ってすっかり品行方正な人になった。


 両親にその原因に心当たりは無いのか聞いたが『そんなのどうでもいいだろう』と一蹴された。


「で、いまその弟は県外の名門大学に通っているんですけど……思うんですが、今の弟って本物なんでしょうか? どうにも今の弟は、あのとき中身が入れ替わったんじゃないかという気味の悪い妄想が消えないんですよ。真相なんて分かんないですし、何の証拠も無いんですけどね」


 彼女はそう言って話を終えた。不気味ではあるが誰一人困っていないので問題視している人は居ないそうだ。果たしてそこで何が起きたのかは謎のままだ。

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