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怪奇箱  作者: にとろ


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使わない押し入れ

 啓太さんの家には使ってはいけない押し入れがあったそうだ。その部屋にある押し入れは、きちんと敷き布団も掛け布団も入っているにもかかわらず決して使われることがない。たまに親戚が来た時にその部屋に泊まっても、必ず布団は別の部屋から持ってくる。そういうものだと思っていたが、よくよく考えると不思議だった。


 小学校も高学年になってくるとその事が気になり、父母に尋ねたが決して色よい返答は返ってこず、ほぼ無回答、『知らなくていい』と言われるのが関の山だった。それを聞くと露骨に不機嫌になるので、いくらか繰り返すともう訊くことをやめてしまった。


 その部屋が使われるのは客人が来た時だけだし、エアコンもついていないのでわざわざ泊まりたいとも思えない。知らなくていいといわれているものをわざわざ聞いてやぶ蛇になるのもなんだか嫌だったので、そういうものだと自身も思うことにして、深く考えるのをやめた。


 それが起きたのは中学生の時で、親と関係が悪かった時だ。所謂反抗期だった。そのとき親と些細なことで喧嘩をしてしまい、なんとなく部屋に居づらくなった。そこであの部屋のことを思いだした。そう言えばあの部屋は滅多に使わないので、隠れるにはぴったりの部屋だ。向こうもわざわざこちらを探したりしないだろうし、幸いトイレにも近い、上手くすればほとんど家族と顔をあわせなくてもすむと思った。


 早速部屋に入ると、なんだか居心地の悪さのようなものを感じた。きっとこの部屋にほぼ入らないからだろうと思い、気にせず横になった。すぐにウトウトと眠気がやって来たので、布団を押し入れから出して敷きその上に横になった。睡魔はすぐにやって来て意識は落ちていった。


 目が覚めたのは夜中だった。部屋の窓を開けていなかったせいだろう、体中に汗をびっしょりかいていた。窓を開けるとひんやりした風が吹き込んできたので、部屋が冷えるまでに汗を流そうとシャワーを浴びることにした。そこで脱衣所に入ると思わず悲鳴を上げた。汗をぐっしょりかいていると思ったのだが、実際は汗とは程遠い赤黒い液体が服にびちゃびちゃについていた。真っ先に見たところ血のように見えるが、鉄臭い匂いもしないし、体には傷一つない。そこへ悲鳴を聞きつけた両親がやって来た。


 当然のことながら父親からグーを一発もらい、母親からは延々とお説教をされた。そしてあの部屋の曰くを教えられた。


 なんでも古い家なので昔は旅人を泊めるようなこともあったらしい。そのときに使われていたのがあの部屋だが、ある時その部屋に泊めて旅に戻っていった人がその翌日に夜盗に襲われ斬り殺されるという事件があった。それ以来あの部屋の旅人が寝るのに使った布団で寝ると何かの怪異が起きるようになってしまったそうだ。それ以来あの部屋で旅人が使った布団は間違っても使わないようにしていたとのことだ。


 赤黒く染まったお気に入りの服はあえなく廃棄処分の憂き目に遭い、それ以来多少は両親の言うことにも耳を傾けるようにしていると啓太さんは語った。旅人が通る街道に面した民家での出来事だそうだ。

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