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怪奇箱  作者: にとろ


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甘い白湯

 理沙さんはある時期ダイエットをしていた。夏の旅行に行くのに海で水着を着るため体を絞っておこうと春頃から食事制限を始めた。出来れば適度な運動もするべきなのだが、生憎それほど余裕のある会社勤めではなく、かなり前にお盆の休暇を申請してなんとか通った位なのでそんな時間はない。


 仕方ないので食事制限のみでダイエットをすることにした。朝はフルーツ入りヨーグルト、昼はサラダチキン、夜はサラダで、飲み物は白湯のみと栄養士が見たら卒倒しそうな偏った食生活を続けていった。その結果、体重は確かに減っていった。そこまで制限をしているのだから当然だろうが、体を削られる思いをしながら体重を落としていった。


 夏の足音が近寄ってきた頃、頭がぼんやりする症状に悩まされていた。栄養失調にも近いと思うのだが、輝かしい夏のためには必要な努力だと我慢し続けた。有休まで一月を切った頃、朝目が覚めてヨーグルトを開けて中に冷凍フルーツをいくつか放り込んだ。暑いので解凍さえしていない食事をかき込んだ。少しして頭が少し冴えてきた。そろそろ出社だなと思いながらいつも通りポットからお湯を出して口をつけた。途端に甘味と苦味が口いっぱいに広がる。


 その味は父が好きだったコーヒーの味だ。子供の頃、それを飲ませてもらったが、苦味がどうしても受け付けなかった。今にして思うと慣れの問題だったのだろうと思う。


 ふと思いだしてスマホを取り出し日付を確かめた。この日は父の命日に間違いなかった。


「全く……死んじゃってまで好みを押しつけないでよ」


 そうは思いながらカップを見たが、確かに透明な白湯だった。口をつけると父が好きだった砂糖たっぷりのコーヒーの味がする。それを一杯飲むと久しぶりに糖分が体に染みこんでいくように気分がよくなった。それから出社前に化粧をしようと鏡を見ると、頬がこけた自分が写った。


 ダイエットで食事制限をしていたので顔の肉付きがとても悪くなっていたのだが、痩せるためだとそれから目を逸らしていたようで、これじゃあ体を絞るより健康的な体を目指す方がよほど良いなあ……そう思ってから夏までに食事制限は解除していつもの食事を再開した。体重はある程度増えたが、それでも健康的な体を取り戻した。


 そしていよいよ一人で小旅行に行こうかと思っていたお盆休みが来たのだが、あの日予約をキャンセルして旅行ではなく帰省をすることにした。田舎に帰って母と父の墓を参ると夏に似つかわしくない涼しい風が吹いた。


「結局、無理なんてするもんじゃないですね、下手したら入院ものだったんじゃないかと思うとゾッとしますよ」


 今では彼女は健康的な生活を送れているそうだ。

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