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怪奇箱  作者: にとろ


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不始末の末に

 お題はなんでもいいんですよね? そう書かれていたのでこの話を記しておきます。


 始めは同僚が営業で行ったキャバクラでの話ですよ。ソイツの名前は……山田とでも仮にしておきましょうか。


 山田は始めの頃は営業の時に使う機会が多い店って程度のものだったが、直にヤツはお気に入りのキャバ嬢を作った。その結果、毎回指名をしていたので金は結構な量を使っていた。なお悪いことに山田は既婚者である。当然奥さんがいい顔をするはずもないのだが、山田は『営業だから』と強弁して無理矢理キャバに通い続けた。


 次第に使う金額も多くなってくる。となると次第にキャバ嬢に求めるものも多くなってくる。そうしてしばらくの後、ヤツは突然職場を飛んだ。


 口さがない同僚たちは『借金をしていた』とか『ついにやり過ぎた行為で出禁になった』などと口さがないことを言い始めた。どれが山田が飛んだ理由かは不明だが、とにかくソイツが職場から失踪したのは確かだった。


 キャバ嬢と一緒に飛んだので、奥さんが焦った声で『主人の行き先を知りませんか?』と電話をしてきたが、こちらとしてもそれは知りたい情報だった。そのため、『こちらも手を尽しているので何か分かったらお知らせください』とお互いに山田を探していることを確認してそのまま日常は過ぎていった。


 ある日、電話がかかってきたのだが、なんと相手が警察であり、受けた社員が慌てて上に回した。そのとき何やら小声で話していたのだが、電話を乱暴に切ると、『山田のヤツが見つかったみたいだ、警察が確認してくれと言っているから行ってこい』と言われ、はるばる東日本から西日本まで新幹線を使う距離を移動しながら、面倒を掛けるヤツだと思っていた。


 そうして着いたのは病院だ。警察官が説明するには行き倒れていたのだが、ウチの社員証を持っていたのでこちらに電話が回ってきたということだ。とことん迷惑をかけるヤツだと思いながら病室に入る。そこにはげっそりと痩せて、見れたもんじゃないが、とにかく面影を残した山田がベッドに寝ていた。俺を見るなり手を上に上げる。


 何がしたいんだコイツはと思いながら腕を見ると、文字のような痣が浮かんでいて、『オマエモアイジンモユルサナイ』と読めた。山田といくらか話を聞くと、この痣が浮かんでから一緒に飛んだキャバ嬢はいなくなり、山田は突然食欲をなくし栄養失調で道に倒れていたところを救急車で運ばれたという。


 それでも山田は何を考えているのか知らないが、『○○(キャバ嬢の名前)はどこへ行ったんだ?』とか言う。バカじゃねーのと思いつつ『どっか行ったよ、何やってるかなんて知らんが、お前のところには戻ってこないんじゃないか』と言ってやった。山田はすすり泣きながら愛人への恨み言を言っていた。聞くに堪えないので身元確認が出来たと言うことでさっさと帰っていつもの生活に戻った。


 しばらくして山田が死んだという話が出回った。興味があったのでアイツの家に行くと確かに忌中と書かれた紙が貼ってある。そんな時、隣の家のおばちゃんと呼ぶのが正しそうな噂好きが俺に『あら、会社の人? 山田さんったら旅先で亡くなったってねえ……奥さんが笑顔で喪主をしていたんだけど、あなた、何か知らない?』と言われたので、『さあ? たまたまこの前を通っただけなので知りませんね』と誤魔化して家に帰った。


 山田がしたことは確かにクズではあるのだが、もしも呪いか何かがあるのだとしたら、せめて呪われないように義理は通しておくべきだったんだろうなとヤツの家から帰っている時に思った。

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