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怪奇箱  作者: にとろ


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伝わる話

 最近では何にでもAIが搭載されているが、近藤さんはAIスピーカーが嫌いなのだそうだ。スピーカー自身で処理しているわけではなく、サーバーに送ってそこが処理しているのは分かっているが、やはりAIアシスタントというものが好きにはなれないらしい。


「娘の相手をさせるのに便利だと思って使い方を教えたんですけどね……なんというか……優秀すぎるんですよ」


 その日は夕食の準備をしていたんですが、娘の相手が出来ないのでスピーカーに相手をさせていたんです。時々そういうことはありましたし、良い玩具だと思っていました。娘は楽しそうにあれこれ話しかけている様子でした。楽しそうにしているならまあ良いかなって思ったんですが……娘が一人で遊んでいるものだと思ったら、なんだか会話が成立しているようなんです。


 私もAIスピーカーの仕組みくらい知っていますから、毎回の問いかけがそれぞれ無関係なものとして処理されているはずなんです、だから娘の会話はその前の会話の影響を受けないはずなんですけど、何故か分かりませんが会話が続いている様子なんです。


 キッチンで音がするものを止めて聞き耳を立てたんです。そうしたら言葉の端々に『お兄ちゃん』って言葉が聞こえるんです。当然娘は一人っ子で兄なんて居ません。だから寒気がしたんですよ。ただ、娘に直接聞いて良いものかは悩みました。結局、『誰とお話ししているのかな?』と娘に聞いてみたんです。そうするとあの子は『お兄ちゃんがね、いるの』と言うんです。その子の見た目を聞いたら、白い服を着ているの、ずっとその服ばかり着てたから他の服が無いんだって、と言うんですよ。


 そこで心当たりが一つ出てきたんです。私には昔、兄が居たんですよ。病弱で長らく入院を続けた末、亡くなったんですけどね。病室ではあまり顔色がよくないまま私に微笑みかけてきたのを覚えています。ただ、まだ私がそれほど大きくなっていない頃に亡くなり、夫には話していますが、娘には話していないんです。その上見た目なんて夫にも話してないですからね、娘がどうやっても知る事なんて出来ないんです。


 その日は料理を途中でやめてレトルトカレーを夕食にして娘の相手をし続けました。そして寝かしつけたらそっとスピーカーを娘の手が届かないところに隠しておきました。翌日から娘はグズりましたが、私は断固としてスピーカーを出しませんでした。


 一応はそれ以来娘の様子がおかしくなったことはないんですが……今でも兄は私の近くにいるんでしょうか? 兄には悪いですけれど、私には今の暮らしがあるので娘には手出しされるわけにはいかないんです。悪いですけれどこれからお寺に行って拝んでもらうつもりです。実はこうしてお話をしたのもお心付けでお金が必要ですからね、申し訳ないんですがいただきたいと思いまして……


 私は謝礼を出して問いかけてみた。


「お兄さんはそれ以来現れていないんですか?」


 その答えに彼女は少し曇った顔を見せて言った。


「そうですね……娘『には』会っていないようです。ただ、時折当時の姿のままで私の夢に出てくるようになったんです。だからそろそろお別れをしっかりしなきゃなって思うんですよ」


 そう寂しそうに言ってから席を立った。出来れば彼女とそのお兄さんの魂が平穏であることを祈るばかりだ。

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