表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怪奇箱  作者: にとろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/24

失う家

 私が小旅行に行った時、宮本という方から聞いた話だ。なんとも興味が湧く話であった。


「この町には、財産を失う家があるんですよ」


「財産をですか? 曰く付きの土地か家なんでしょうか?」


 私が怪談を集めていると知った彼は積極的に話してくれた。その内容は人命は失われていないらしいが、不吉なものらしい。


「多分土地でしょうね、なにしろ建物が変わっても住んでいる人は酷い目に遭ってますから」


 そこには始めの頃は……ええっとラーメン屋だったか、うどん屋だったか、いや、ファミレスだったかな? とにかく覚えていられないほどそこに入る店舗は変わっていったんです。始めは食堂みたいなものが入れ替わり立ち替わり入っていたんですが、流石にそこまで連続で撤退すると縁起が悪いと思うんでしょうね、次第にその土地が空いている期間が増えていったんです。


 特に交通の便が悪いとか、立地が悪いとかも無いんですよ、きちんと駐車場まで作ってまだ余裕がある土地なんですけど、何故か長続きしないんですよ。


 それで始めは居抜きのようなことをしていたんですが、悪い噂が立ったので今度は住宅地として貸しだしたようなんです。今度は大丈夫と思われていたんですが、何故か入居した人が突然の体調不良で仕事を辞めることになったり、単身赴任か辞職かを迫られて辞職を選んだりと経済的に困窮して出て行きました。ただ、不思議な事に体調の関係で退職した人も、退職後はわずかに住んでいましたが、驚くほど元気になっていました。何故か働いていると体調が悪くなって辞めると途端に元通りになるようでしたね。


 次第にそこは荒れていったんですけど、そこはそこで需要はあったんです。そもそも働いていない年金生活者や生活保護世帯だとそこを借りても何も起きないんです。あくまで現役でお金を稼いでいる人が対象なんでしょうね。


 そんなに怖い事じゃないんですけど、その土地に一度地元の企業の会長が住んだ事があったんです。会長といっても息子を社長において自分は隠居するのでちょうどいいだろうとそこに住むことにしたようです。所謂ご隠居様ってヤツです。


 その人は『ワシはもう老後だから関係無いやろ』と言い、自信満々にそこに住んでいたんですけど、一月ほど経ったあたりで奇妙なことが起きたんです。地元の企業なのでそこで働いている人は多かったんですが、何故かそこを辞める人が続出したんです。理由は体調から引抜まで様々だったんですが、次々と人が辞めていったんです。そこで息子の社長が験を担いでね、会長に引っ越してくれと頼み込んだらしいんだ。形だけのトップとはいえ、そこに住んでいるせいではないかと噂が立ったので会長は引っ越したんですよ。


 それからは人材の流出はピタリと止まったんですよ。やはりあの土地が原因だと思うんですけどね、何故住んでいる人では無く従業員が辞めたかなんですけど、少ししてそこの求人チラシが配布されたんですが……そこに『人財募集中!』と書かれていましてね、人も財産とカウントされるんでしょうかね?


 誰かが死んだりしたわけでも無いのにそこは今では人が住んでいないんですよね? 見ていきますか?


 私は一応自営業と言うことで、障りがあってはならないのでその申し出は丁重にお断りして、こうして地名を伏せて記録させていただいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ