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怪奇箱  作者: にとろ


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18/24

以上、未満

 礼次さんがまだ高校生の頃のこと、一時だけオカルトが校内で流行ったので、一人のクラスメイトが『百物語をしよう』と提案した。スマホのチャットグループにその情報が流れたのだが、当の友人がたまたま住んでいる家の離れに自室があったので多少は騒いでも問題無いという。だからみんなでバカ騒ぎをしようと提案したらしい。


 一も二もなくその提案に乗って参加すると言ったのだが、いくらオカルトが流行っているとはいえ、怖い話をそんなにストックしている者が多いわけではない。そこでいくらか集めている面子で集まって行うことになったのだが、その数は十人に満たなかった。


 まだ一年生の頃だ、なんとか夏休みに外泊をすることも出来た。男女で集まるとギャーギャー言われるのが確かだったので男のみのむさ苦しい百物語になったが、それでもみんなして集まってバカ騒ぎをすることが楽しみだった。


 休みに入るのを待って、待望したその日、いろいろなツテで集めた怪談を覚えてその家に向かった。


 友人宅にはもうすでに数人居て、部屋にはカウンターとロウソクが数本用意してあった。エアコンがきちんと効いているのでロウソクをつけても問題あるまい。


「来たか、悪いがロウソク百本は無理なんで再利用するぞ、このカウンターで話の数を計るから安心しろ」


 そう言って交通量調査などで主に使われるカウンターを持ち上げる。これで数を計りながらロウソクをつけたり消したりするのだろう。


「再利用ねえ……ロウソクなんてそんな高いもんじゃないだろ」


「バカ言え、この部屋でロウソク百本立てろってか? 俺だってオヤジに殴られたかないよ」


 言われてみればそれもそうか。六畳間に百本もロウソクを立てるのに無理がある。火事になったらいくら何でも大問題だ。締め付けが厳しくなるどころか死人が出かねないので仕方ないな。


 それから日が沈む頃にかけて残りの友人たちが集まった。結局、九人で百物語を始めることになった。


「これは俺の友人の友人の話で……」


 そんなありきたりな話から始まった百物語は、ロウソクを立ててそれに火をつけ、話が終わるとそれを消し、次の話の前につけ、それの繰り返しで進んでいった。途中でロウソクが短くなったら次のものに取り替えて数本のロウソクを消費した。会談によく出てくる和物のロウソクではなく、普通にヒモの芯が通ったロウソクを使ったので小さな火の明かりの中で話を進めていく。迫力はそれなりにあるものとなった。


「よし、九十九話だな。次で終わりだ、頼むぞ」


 そう言われて礼次さんはとっておきの話を出した。なんの話だったかは覚えていないそうだ。ただ、問題が起きたのは翌日になった時だ。


 翌日、解散してスマホを弄っていると一人がこんなメッセージを流した。


『ネタが沢山あるやつがいて助かったよ、俺とか十話もストックなかったし』


『俺も無かったよ、ホント持ちネタがおおいやつっているんだな』


 その何気ない言葉から混乱が広がった。なんと誰も十話以上話をしていないのだ。確かに友人のカウントは百になっていたことを覚えている。一人が十話以上話しておらず、集まったのが九人なのでどうやっても百物語の計算が合わない。誰かがたくさん話をしていないと百話を超えないのは小学生でも分かる計算だ。


『なあ……カウンターは間違ってないんだよな?』


『多分……カウンターを進める幽霊が居たとかいう話でないならな』


 そんなピンポイントな幽霊が射るとも思えない。しかし数がどうやっても合わないのでその場は誰かがカウンターを押し間違えたのだろうと無理矢理納得することになった。真相は不明のままだが未だに誰も説明をつけられない謎の怪談会となったそうだ。

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