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怪奇箱  作者: にとろ


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いつでも一緒

 私が小さい頃というと、もう四半世紀では聞かない時間が経っていますが、今では心の整理がついたのでお便りを送りました。


 まだ幼稚園児だった頃に私には友達がいました。その子は中学まで一緒だったんです、まるで姉妹のような話し相手で、両親には話せないような悩みもその子になら打ち明けられました。その子は明るくて私なんかとは大違いの出来た子としか言えなかった。


 なんで私と友達でいてくれるのか不思議に思いその子に尋ねても首を振ってニコニコするばかり、暖簾に腕押しといった感じで、まあ話したくないことくらい一つや二つあるだろうなと思っていた。


 しかし、中学に入る少し前に違和感に気づいた。その事は()()()友人だったのだ。父が転勤族で小学校だけで何回も転校しているのに、その子はどこに行っても私の隣にいて、常に友人でいてくれた。


 確かに不思議ではあった。ただ、それを聞くべきではないような気がして聞けずにいた。友達なんだからいいじゃない、そんな言葉を自分に言い聞かせて彼女の存在を無理矢理納得させていた。何故かその子には自分のプライベートな悩みまで心を開いて相談することが出来る。


 ただ、考えてみればおかしな事もある。彼女と一緒に遊んでいたはずなのだが、彼女は食事にもトイレにも決して行かなかった。私が駄菓子屋で駄菓子を買った時もあの子は私が食べるのを楽しそうに見ているだけだった。お金が無いのかと思い『何か欲しいの?』と聞いてみたが、ただ首を振るばかりだった。


 その子とは何回も遊んだが、彼女は綺麗なこのはずなのに誰かに会った時に彼女が声を掛けられることは決してなかった。あの子は目立たないってわけでもないんだろうけどな、そう思いながら遊んでいた。


 気になることもある、彼女は決して私の家に来ようとしなかった。遊んでいれば必ず外出をしていたし、雨が降ってくればそれぞれ帰っていった。彼女の家に行ったことも私の家に来たこともなかった。


 ただ……中学を卒業する頃、もう高校の受験が終わり、進学することになったのだが、そうなると彼女と同じ学校に行くのはまず無いことだろう。


 そう思っていつも通り彼女と散歩をして志望校に受かったことを語ったところ、あの子は『おめでとう、良かったね」と言っていた。


 直感で彼女とはもう会えないんだなと分かってしまい、涙をこらえながら夕暮れに家に帰った。母親が、『せっかくご馳走を用意してるのにどこに行ってたの?』と聞かれたので『○○と遊んでた』とそのまま口にしたのだが、その途端に母は泣き崩れた。何が起きたのか分からずオロオロしていると、居間にいた父がこちらにやって来て『バカ娘が!』と頭を思い切り叩かれた。父親は決して私を殴るどころか、頬を張ることすらない人だったのにそのときは感情をむき出しにしていた。


 彼女の名前は伏せておきます。今はもう母とは離れて暮らしていますが、なんとなくあの反応からあの子が母にとっての何なのか予想がついたんです、私も母親になりましたからね。


 彼女と最後に見た夕焼けはとても綺麗でしたが、私に憑いてきて欲しくはないのできっとまだあそこで一人遊んでいるのでしょう。これが私の体験したことです。

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