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第1章 第2話 ルール

「若様、おはようございます!」



 俺の一日は、メイドの元気いっぱいな挨拶から始まる。



「……おはよう、華」

「おはようございます若様! 朝食の準備できております!」



 華に毛布をひっぺがされ、目をこすりながら起き上がる。ていうか……。



「メイド服着なくていいって言ったよな?」



 今俺が暮らしているのは、狩咲組組長の自宅。庭付きの豪華な日本家屋に、安物のコスプレメイド服は似合わないだろう。



「でも若様メイド好きですよね?」

「そりゃ嫌いな男はいないけど……」

「だったらメイド服で従事させていただきます! この華、人生の全てを若様に捧げると決めているので!」



 ここまではっきりと言われたらやめろとも言いづらい。なんせ俺と華の境遇はよく似ている。



 夏野華(なつのはな)。両親の借金の肩代わりとして、狩咲組に売られた俺の一個下の女の子。年齢とか関係ない、裏の風俗に売られそうになっていたところを俺が買収。世話係として傍に置くことにした。



「華の身体は若様のものです。どうぞ何でも命じてください。華はどんなプレイにも……」

「変なこと言ってないでさっさと行くぞ」



 朝から元気な華を連れて自室を出る。ここは組長の自宅だが、俺のような行く当てのない構成員や華のようなお手伝いさんも数多く住んでいる。彼らからの挨拶を適当に流し、朝食会場の広間に入る。



「おはよう翔子」

「……おはよう」



 ザ・日本の朝食といった感じの料理の前に座る組長の娘、狩咲翔子。朝早いからかずいぶん機嫌が悪そうだ。



「さっきパパが言ってたけど、追い出した連中に動きがあるらしいわよ。今日があんたの命日かもね」

「動きがあるのはいつも通りだろ」



 翔子の正面に座り、お茶を一口飲む。でもそうか……組長に伝わるほどか。それはちょっとやばいのかもしれない。



 俺が狩咲組の若頭になったのは約1ヶ月前。組の大勢を担っていた過激派連中を翔子と共に追い出すことで組を乗っ取ることに成功した。大規模ではないが、小規模とも呼べないほどの勢力のある狩咲組。敵は元々かなり多い。追い出した連中が敵と結託した可能性を考えると、命日というのも冗談ではないのかもしれない。



「話は伝わったようだね」

「あ、組長。おはようございます」



 お茶を飲みながら考えていると、杖をついた老人が広間に入ってきた。この人こそ狩咲組現組長、狩咲増也(かりさきますや)。この組で一番偉い人間だ。



「もちろん警備はしているが、警戒は怠らないように。自分の身は自分で守りなよ」

「そうっすね……」



 考えながらなので返事が少し適当になってしまったが、まぁこの組長なら許してくれるだろう。昔はずいぶん恐ろしかったらしいが、今は落ち着いていてただの優しいおじいちゃん。まぁそういう人でないと、いくら幹部候補をほとんど追い出したといえど俺が若頭になるなんてありえない話だったが。



「……しかし組長。一言よろしいでしょうか」



 ずっと翔子の後ろに控えていたパンツスーツの女性。翔子のお世話係、初芝真子(はつしばまこ)が恐れ多いといった感じで手を挙げ、そして俺を睨みつけた。



「この男に自身の警護などできないのでは? つけている者もメイドのコスプレをさせたただの売女。そもそもが若頭としてふさわしくないのではないでしょうか」

「ちょっと真子……」

「お嬢、あなたのためを思って言っているのです。こんな男に誑かされて嘆かわしい……」



 過激派や俺のことを認めていない連中は、基本的に組から追い出した。だが初芝さんが翔子の傍につくようになったのはつい数週間前。それまでは遠くにいたから俺のことをよく思っていないのだろう。まぁ前者はともかく、後者は自分から組を出た人間も多い。そういう連中がまだ一定層いることも把握している。



「初芝。私は娘が言うから一樹を若頭に決めたんじゃない。彼こそが組を背負って立つ人間にふさわしいと思ったから若頭にしたんだ」

「しかし組長……」



 初芝真子……。この前の抗争で元お世話係が離れてしまったことで呼ばれた組長の親戚の子。だからって組長相手にえらい意見するな……それができるからこの組を気に入っているのだが。



「五十嵐一樹!」



 お茶を飲みながら再び考えふけっていると、障子が勢いよく開かれ鉄パイプを持った男が俺の名前を叫び飛びかかってきた。



「お前のような任侠もわからない男が若頭など……」



 だがその絶叫は、すぐに部屋から消えてなくなる。俺が放った一発の弾丸によって。



「ぐああぁ……!」

「翔子、こいつ誰?」

「過激派の下っ端連中の一人よ。いわゆる鉄砲玉」

「ふーん。華、適当に拷問しといて」

「かしこまりました!」



 腹から血を流し悶える男の素性を聞き、指示を出してお茶を再び啜る。



「な……ぁ……」



 そうしていると、正面の翔子の後ろで初芝さんが口を大きく開けながら震えているのが見えた。こういうのは初めてだったか。なら一応伝えておこう。



「確かに俺は任侠とかヤクザのルールとかは知りません。ていうか興味ないし。だから俺のルールはただ一つ。俺の邪魔をする奴は潰す。人生は不公平なんでね。俺の敵になったことが運の尽きってことで。なんで初芝さんも気をつけてくださいね」



 俺の境遇はこの半年で大きく変わった。だがやるべきことは何も変わっていない。俺は俺自身のために。この不公平な世の中を生き抜くだけだ。

私の作品の主人公がいい子ちゃんばかりで復讐があまりできず、たまにはちゃんとした復讐も書きたいなと思ったのがこの作品の始まりです。なので少し過激になっちゃうかもしれないのでご容赦ください。個人的にはいい子ちゃん主人公の方が好きなので、他の作品もちゃんと更新いたしますので他の作品を読んでくださっている方もご安心ください!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 個人的にはいい子ちゃん=グズ主人公は好きじゃないです。大いに期待してますので何卒エタらずに完結を。
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