第2章 最終話 次の目標
「それじゃあ一樹。言い訳を聞こうかしら」
「若様……どうして華じゃなくて他の女なんかに……」
幹部たちがいなくなった部屋で、俺は相変わらず正座を続けていた。ただし詰め寄ってくるのはヤクザの幹部候補たちよりもさらに怖い翔子と華。
「わかってんでしょうね。適当なこと言ったら指詰めるからね」
「そうだ……華以外の女を皆殺しにすれば若様は華のものに……」
本当に怖い……本当にしかねないから本当に恐ろしすぎる……。
「いや別に俺が誰と付き合おうが俺の自由で……」
「あんたは私の所有物だって言ってんでしょ!?」
「毎日毎日華がアプローチしても触れようとすらしないのに!」
やばい……適当なこと言ったら本気で殺されそう……。ここはやっぱり逃げとくか……。
「優香……さっきは断りづらい雰囲気出しちゃっただろ……。よく考えたら殺そうとしてきた奴と付き合うなんて無理な話だよな……?」
「ううん……先生が私のこと傷つけたくないっていうのはわかってたし……でもそうだね……人のこと簡単に脅せるような人と付き合いたくないっていうのはわかるな」
うわ……さりげなくマウント取ってきてる……。俺に擦り寄りながら暗に責めてくる優香に対し、目の前の二人の怒りは頂点に達している。
「そ……そうだ……。カップルならちゅーしたいな……。ねぇできるよね? できないんだったら別れちゃおっかな……」
そして俺にまで簡単に脅してきやがった。そうか……そういうタイプだったんだ……知らなかったな……。
「なら別れようか。他人の迷惑も考えずに自分の欲望を満たそうとする奴は嫌いだし……」
「ごめんなさい! 謝るから別れないでぇ!」
だが相変わらず頭が悪いところは本当に頭が悪い。簡単な駆け引きでこの様だ。
「つ、付き合えるのはうれしいけど……でも捜査状況とかは教えられないからね……!」
「そっか。じゃあ俺いつか捕まっちゃうかもな」
「こ、これは私が独自で調べた情報なんだけど……!」
おいおいこれは本当に大丈夫か……? ちょっとゆすったら本当に警察の情報教えてくれそうなんだけど……まぁ優香が不利になるようなことはしないが……。
「今の狩咲組に……裏切者がいるらしいよ。追い出された人と共謀して狩咲組を乗っ取るつもり……なんて話があるの。だから先生……本当に気をつけてね……」
ああ……それは……。
「もちろん。気をつけるよ」
今回の騒動で改めて俺の立ち位置を思い知った。暴力で掴んだ地位は暴力によって奪われるのが当然のこと。裏切者が出るのも自然の流れだ。
だが俺のやることは変わらない。絶対に不公平は許さない。
「とりあえずその裏切者って奴を見つけないとな」
次の目標が見つかり。俺は新たな人生を歩みだすのだった。