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雨の記憶~ジューン・ブライド~

作者: unbabobi


 朝、テレビをつける。


 ニュース番組にチャンネルを合わせると、私の住む地域で梅雨入りをした、と発表があった。


 窓を開けると、雨の匂いが私の鼻孔をくすぐる。

 

 私は梅雨が嫌いだ。というよりも、雨が嫌いだ。


 私が純也と出会ったのはちょうど5年前。


 純也は急な雨で傘を持ってきていなかった私に、傘を貸してくれた。


 そこから私たちは次第に仲良くなり、その後純也から告白されて、付き合うことになった。


 たしか告白を受けた時も、それまで晴れてたのに、急に雨が降ってきたんだっけ。


 告白の甘酸っぱい雰囲気が一気に無くなって、二人で大慌てで駅に駆け込んだのを覚えてる。


 それからディズニーランドとか、海水浴とか、温泉旅行とか、、、。


 純也と一緒に、いろんなところをデートしたっけな。


 でも、どこに行っても必ず途中から雨が降ってくる。


 私たちは二人で、「お前が雨女(雨男)のせいだ!」って笑いあったっけ。


 私たちのデートは、いつも雨だった。


 元旦に一緒に初詣に行った時も、「神様、お願いですからデートの時くらいは晴れにしてください!」って頼み込んだけど、お参りのすぐ後に雨が降ってきたから、流石に私も笑っちゃった。


 ああ、これからも私たちの思い出は雨ばかりなんだろうなって、その時感じたの。


 それからも純也と一緒に過ごして、私は純也からプロポーズを受けた。


 レストランの中だったけど、外では当たり前のように雨が降っていた。


 プロポーズを受けた後、こんな時も雨が降るんだなぁって二人で笑いあったのを覚えてる。


 「どうせ雨が降るんだし、6月に結婚式をしようぜ!」


 「それって、ジューンブライドってことだよね?」


 「おう!」


 純也が私に、にこりと笑いながら言う。


 私にとって、こんなに幸せな瞬間はなかった。


 それから式場を決めて、二人で結婚式に向けて準備したのを覚えてる。


 あの時の私たちは、本当に幸せだった。思い出は雨ばかりだったけど、どの思い出も私にとっては宝物だった。


 そう、あの時までは。


 

 ある日の朝。そう、その時も雨が降っていた。


 私の携帯に、純也の両親から連絡が入った。


 「なんだろう?」と思いながら電話を受けて、内容を聞いて、私は病院に急いだ。


 でも、どれだけ急いでも結局ムダだった。


 、、、出勤途中だった純也は、雨でスリップした車に巻き込まれて、即死だった。


 遺体の損傷が激しいとのことで、顔中に、体中に白い包帯を巻かれ、純也の最後の姿を見ることができなかった。


 雨が私と純也を結びつけ、雨が私と純也を永遠に引き離した。


 私は雨が嫌い。


 私の大切な人を奪ったから、、、。


 私は、雨が嫌い。


 私の大切な思い出を、思い出させるから、、、。


 私はこれ以上雨が入ってこないよう、窓を閉め、鍵をかけた。



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