第4話 工作BOX
「とりあえずこんなもんかな」
素材を回収しながら100歩×100歩の土地を整地し終えた俺は、ひとたび【黄金のつるはし】をしまった。
これより拠点の建設へ移る。
俺は呪文を唱え、今度は超S級土魔法【工作BOX】を発動させた。
「Aperi(開け)」
ブン……
すると、空中に透明な画面が開かれて、そこに以下のような光の文字が浮かぶ。
――――――――――――――――
1.素材の目録
2.素材の解析
3.素材の編集
4.部材の工作
――――――――――――――――
俺は『1』の方へ手を触れた。
すると、右へ新たな画面が生じて、魔法空間上にストックされている素材の目録が表示される。
――――――――――――――――
《素材》
・石材 7276
・土 27965
・木材 157
・クリスタル 6
・銀 0.6
・銅 16
・鉄鉱石 1.2
・魔石 4
・思考石 1
・古代魔獣の化石 4
――――――――――――――――
うん、今日のところは十分な素材が回収できたんじゃねーかな。
ピッ、ピッ……
俺は『石材』の文字へ手を触れ、選択状態にしてから、最初の画面の『4.部材の工作』へタッチする。
すると、さらに右側へ三つ目の画面が生じた。
「むっ、むむ……」
そして、俺がこうして頭の中に図形を思い描くと、思い描いたままの図形が画面の中へも映し出されていく。
チチチチチ……
画面にあらわれたのは、正方形の『石板』である。
板のサイズはキング・ベッドほどの大きさに、厚さは拳ほどへと指定した。
これでよし。
俺は地面へ手をかざすと呪文を唱える。
「Evenire(出でよ)」
すると、魔法空間上にあった『石板』が現実世界に出現するのだ。
どすーん…………
さらにもう一つ。
それからもう一つと出現させていく。
石板と石板の間は隙間なく出現させ、さっき整地した土地へ敷き詰めていった。
【上空イメージ図:1】
□□□□□□ □□□□□□
□□□ → □□□□□□
□□
こんな感じに。(※実際は□と□の隙間はない)
□□□□□□ □□□□□□
□□□□□□ → □□□□□□
□□□□□□ □□□□□□
□ □□□□□□
できた。
100歩×100歩の土地にみっちり敷き詰められた石板は、『石の絨毯』のようで、とても整然として見える。
「うん、なかなか頑丈だな」
石板の地面の上で思いっきりジャンプしてみてもびくともしない。
次はこの周りに城壁を作ろう。
俺は工作BOXで、再び≪素材:石≫を選択する。
そして、今度は直方体の部材を思い浮かべた。
サイズは成人した牛くらいの大きなブロックだ。
「Evenire(出でよ)」
ドスーン!……ドスーン!……
先ほどの石板よりも、ずっと重量感のある音。
呪文を唱えるとブロックがあらわれ、どんどん積み上がっていく。
そして、工作BOXで作られたこのブロックは完全なる直方体だから、レンガ積みの要領で積んでいけば、隙間のない強固な石垣が築ける。
こうして石の城壁が一面できた。
【上空イメージ図:2】
■■■■■■■■
□□□□□□
□□□□□□
□□□□□□
□□□□□□
積み上げた壁の高さはだいたい俺の身長の五倍くらい。
この壁を四方に形成し『囲い』を作る。
【上空イメージ図3】
■■■■■■■■
■□□□□□□■
∈□□□□□□■
■□□□□□□∋
■□□□□□□■
■■■■■■■■
東西の∈と∋は門である。
門は木材でぶ厚い部材を生成して設置した。
蝶番とネジは銅で工作してある。
ギギギギギ……
試しに二、三度門を開け閉めした後、肩で体当たりしてみるがビクともしない。
「よし、強い強い」
これで、この拠点の『外面』ができあがりだ。
土から発生する魔物は石板の床によって抑え込んでおり、外からの侵入は高い城壁によって防いでいる。
あとは、この囲いの中に施設を作っていく。
「うーん……」
俺は四方を高い城壁に囲まれた空間の、真ん中に立って少し考えた。
「よし、これで行こう」
と手を打つと、また工作BOXを開く。
頭の中で『家』の設計図がまとまったのだ。
どすーん!……どすーん!
まずは、こうして石のブロックで土台と床下を作る。
今度のブロックは先ほどのような巨大なものではなくて、子羊くらいの大きさだ。
【家・土台 上空イメージ図】
■■■■■ ■■■■■■
■ ■
■ ■
■ ■
■ ■
■■■■■ ■■■■■■
家全体の大きさは横40歩、縦30歩。
ちょっとしたお邸サイズだな。
四方の中央には隙間を空けて通気口とする。
この土台の上に木材を格子状に通し、床を張っていく。
コンコンコンコン……
さらに石の柱、木の筋交い、石積みの壁……と組み立てていった。
それぞれのパーツは、ブロックを凹凸に生成し、木槌で叩いてピッタリ嵌めこんでいくのだ。
ドアや窓は木製だが、蝶番やノブなどの細かいパーツは銅で工作する。
やがて、工事は二階部分に到達した。
半分は吹き抜けの高天井で、半分は二階を作ろうと考えている。
柱から梁を通して二階の床を作っていく。
コンコンコンコン……
最後、三角屋根を木材で組み立てているころには、空が西日に落ち始めていた。
うーん、作業開始がおやつの時刻ぐらいだったからなぁ。
セーラに『任せろ』と言ったわりに意外と余裕がねえ。
「やべ、木材もギリギリだな……」
木材もなくなれば木の生えているところへ行って回収すればいいのだけれど、回収に行っていると日が暮れてしまいそうだ。
日が暮れると魔物が出るらしいからな。
「間に合え、間に合え……間に合っ…………た!」
完成した屋根の上でそう両手をあげた時、空はすでに赤く染まり始めていた。
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