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第14話 お客

 第一の拠点には事務所を作っており、よそからの来訪者はここで応対することにしている。


 どうやらまた失業難民が流れて来たようで、窓口には7名ほど人が並んでいた。


「開発をするなら仕事があるはずだろ!」


「お願えだ。もう三日食ってねえだ……」


 これに対応するのはモンド。


「大丈夫。大丈夫ですから、順番にお願いします」


 彼らには、とにかくメシと家を与えここで三日間過ごしてもらう。


 で、その後もこのバイローム地方で暮らす意思のある者は、「1事務」「2農業」「3狩り」のいずれかの職業に就かせ、領民となってもらうことにしていた。


 その割り振りも、とりあえずモンドに一任することにしている。


「しかし、父では対応致しかねた方は、こちらの客室にお待ちいただいております」


「うん、それでいいよ」


 そう答えると、ノンノはあいかわらずの無表情ながら段取りよく客室へ俺を案内した。


「……こちらです」


 事務所の客室は全部で5つ作ってある。


 今日はそのうち2つに客が入っているのだそうな。


 ギギイイ……


「あなたがこの地の開発を始めた領主様ですか?」


 一つめの客室の扉を開けると、そこには恰幅のよい四十男が待っていた。


「ああ。バイローム地方領主のシェイド・コルクハットと言う」


 と、俺は答える。


「ううむ、ずいぶんお若いのですなあ……」


「で、あなたは?」


「はっ、申し遅れました。私は旅の商人をしておるトネルと申します」


「商人か」


「は、はい! ぜひ今後貴領と取引を行わせていただければと思いまして」


 そりゃありがたいけど……


「しかし、何故このような辺境の地に?」


「それがですね。商用で街道を行っておりますと、森の向こうになにやら高層のタワーが見えまして。あのような建造物をお建てになる開発領主様ならば、きっとよい取引ができるであろうと、そう考えたのです」


 なんつーか、経験値回収タワーは本来の役割以上に宣伝効果を発揮してくれてるようだな。


「しかし俺たちはまだ開発を始めたばかりでカネがないんだ。ご期待するような取引ができるかわからないんだが?」


「いえいえ、『カネや債権』を財産とするのは身分の低い者のすること。領主様の財産は『土地そのものの支配権』でございます。カネなどなくても喜んで取引を開始させていただきますよ」


「そういうものかなあ」


「そうですとも! お近づきの印に、なにかご入り用の物があれば仕入れてまいりますが?」


 と商人が言うので、塩、綿布、ガラス、酒、タバコなど、まだ生産に着手していない物で思い付くものを少々注文してみた。


「承りました! それでは今後ともよろしくお願いします」


「ああ、こちらこそ。まだ何もないところだが、時間が許せばゆっくりしていってくれ」


 そう言って、俺は商人トネルと握手し、客室を辞した。




 ギギイイ……


 続いて二つめの客室の扉を開けると、そこには三十絡みで神経質そうな細身のヒゲ男が待っていた。


「あなたがバイローム地方の領主に就いたシェイド殿ですかな」


「ええ。あなたは?」


「私はロード地方で文官をやっておりますダイスと申します」


 ロード地方は隣の領地。


 つまり、彼は『隣の領主の家臣の人』ってことだ。


「シェイド様は以前、中央で宮廷魔術士をなさっていたとお聞きしましたが?」


「ん……まあ、ね」


 俺は少し眉間へシワを寄せる。


「いやはや、すばらしい経歴ですな。しかし過去は過去。今は今です。あなたの領地と我らロード地方では格が違う。まずはそのあたりよくよく肝にお銘じくださいませ」


「は?」


 口調が丁寧なので油断していたが、なんか田舎くせー威張いばり方をしてくる男だった。


 慇懃無礼ってやつだ。


「我があるじも、バイローム地方が憐れなる荒野であることは十分理解しておいでです。もしあなたが我らの派閥に属せば相応の『援助』もいとわないと、そう申しておりますが?」


「はぁ……」


 援助?


 喉から手が出るほど欲しいが……


 世の中『タダより高いものはない』と言うのはマジだ。


 ここで少しでも援助を受ければ、たちまちのうちに『子分』にされてしまうだろう。


 だから援助は断る。


 が、敵に回したくもない。


 同じ帝国領どうしで戦争になるのだけは回避したいしね。


「うーん、あなたのあるじは広い心をお持ちなんだな。しかし今のところ援助は必要ないよ。貴領とは友好関係が結べれば十分だ。『落ち着いたら改めて友好の手紙を送ります』とお伝え願おう」


 ってな感じでやわらかく断り、帰ってもらった。



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