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PK
全国高校サッカー選手権大会決勝、延長後半アディショナルタイム終了直前。
試合は、両チーム無得点。
俺 ”井上基樹” は、PKを獲得した。
キッカーは俺自身。
このPKで全てが決まる。
相対するのは、本大会MVP候補の絶対守護神にして、俺の幼馴染 ”菊池康弘”。
幼い頃からずっと何度も何度もシュートを防がれてきた。
その度に次こそは打ち破ると自主練に励んだ。
チャンスはやってきた。
神様が用意した、己の存在証明の場。
緩急をつけて相手の重心を浮かせる。
相手の最後の動きで判断する。
そんな小細工は必要ない!
俺はボールの傍に踏み込み、シュートモーションに入る。
何の為にスパイクを汚した?
何の為に時間を犠牲にした?
康弘がどれだけの速度で反応しても至らない速度と精度が、俺の努力を証明する!
全身全霊を以て、最速で神コースに叩き込む!
もう勝敗の行方などどうでもいい。
ただ俺は、目の前の最強を超えたいだけ!
キッカーはありったけの力をボールに叩き込んだ。