表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/27

第4話 「敵襲!」


 昨日の晩に、馬車に乗った魔法使いのお(じい)さんが俺たちに合流した。冒険者たちの会話を聞いたところ、どうやらどこか近くの村で馬車を借りてきたらしい。


 馬車を借りた理由それは……。


 オークの子供を運ぶためである。


 どうやら人型モンスターの子供は、一部のお金持ちのマニアに高く売れるらしい。


 大きな岩の上で気絶していた間抜けなオークの子供を幸運にも捕獲した冒険者パーティーは、即席の木の(おり)を作るとそれを生け捕りにした。魔法使いのお(じい)さんに馬車を手配しに行かせ、昨晩戻って来て合流したのだ。


 運転台の魔法使いが、後ろを振り向くと商人に尋ねる。


「しかし、これがいくらで売れるというのだ? 馬車を借りるのに銀貨八枚だぞ?」


 荷台で小袋の貨幣を勘定していた商人は、その作業をやめると満面の笑みで答える。


(じい)さん心配するなって。金貨三十枚いや四十枚は堅いだろうなぁ。うまくいけば八十枚だって夢じゃないぞ!」


 自信満々に商人は言った。


「金貨八十枚とはこれまた大きくでたなw」


「カカカ!」と運転台の魔法使いが豪快に笑った。


 道中、冒険者の顔色を伺いながら


「*********!」


 と自分は人間であると訴えたのだが、つぶされた喉からは出るのは言葉ではなく、うめき声だった。なんとか自分の意思を伝えようとうめき声を発する度に、それにイラついた戦士の剣の(さや)が容赦なく飛んできた。


 さすがの俺も学習し、喉が回復するまで大人しくすることに決めたのだった。


 ◇


 どれくらい進んだだろうか。


 森はまだ続いていた。


 辺りは薄暗く ”いかにも” な雰囲気だ。俺は悪寒というか、嫌な予感を感じていた。


 しかし冒険者たちは何も感じていないようで、馬車を運転する魔法使いと商人は呑気(のんき)に酒や女の話に夢中になっているし、戦士は大きないびきをかいて寝ていた。


 会話にも参加せず、一人で黙々と自慢の短刀を布で磨いていた盗賊が、ようやく何かの気配を感じたようで慌てて言った。


「おい! 何かいるぞ!!」


 その言葉で目を覚ました戦士は、目をパチクリして何事かと盗賊を見る。戦闘態勢をとって真っ先に荷台から飛び降りた盗賊の姿を見て、戦士もこれはただ事ではないとわかったのか、慌てて(さや)から剣を引き抜くと馬車の荷台から飛び降りた。


 商人も鉄の(かぶと)を被り(やり)を持ってそれに続く。魔法使いは馬車から降りるとすぐに詠唱を始めた。戦闘態勢を整え相手の出方を見守る冒険者たち。


 緊張が俺にもピリピリと伝わってくる。


 だが一向にモンスターは襲ってこなかった。唾を飲み込む音が聞こえるくらいの静寂が、あたりを包む――。


 その時だった。「ガサガサ!」と前方の草木が揺れる。魔法使いは揺れる草木に向かって魔法を放った。


「ファイア!」


 揺れた草木の辺りが勢いよく燃え上がった。


 (早すぎる!)


 この世界の戦闘がどういうものか知らないが、いくらなんでもそれはないというのはわかった。普通、モンスターが現れてから魔法を放つものだろう。


 案の定、魔法使いの放った魔法は草木を燃やしただけでモンスターには当たってはいないようだった。


 魔法使いの放った魔法の数秒の(のち)、その鬱蒼(うっそう)と茂る森の奥から緑色の巨人が姿を現した。


「オークだ!」


 戦士の言葉がまるで合図だったかのように四方から次々とオークが現れて、パーティーへと一斉に襲い掛かる。オーク一匹ならまだしも集団となると、普通の冒険者が相手にするのは難しい。囲まれたなら猶更(なおさら)である。


 戦いは戦いにもならず、防戦一辺倒だった。

 冒険者たちは連携もなしで個々に戦っていた。


 俺は現実〈リアル〉で実戦の経験はない。だがゲームの世界では、幾万ものモンスターたちを蹴散(けち)らしてきたからすぐにわかった。


 これでは勝てないと――。


 戦いは個人競技ではない。もちろんそういう形の戦い方を否定するわけではない。


 だが、こういう場面ではチームプレイが基本なのだ。個々の力は弱くとも、運用次第では強敵だって蹴散(けち)らすことができる。俺はそれをNeDAオンラインで学んでいたから知っていた。


 負け戦の様相がプンプンとしている中、いち早く盗賊は「これは勝てない」と判断したのだろう。一人その場から抜け出すと森へ飛び込む勢いで駆けだした。


 盗賊が一人で森の中へ入って行こうとする姿が魔法使いの目に入った。それを数秒目で追うと、盗賊が何をしようとしているのかを理解した。そして叫ぶように言った。


「ちょっとおい! おまえどこへ!!」


 魔法使いの男が目の前のオークから、ほんの少しだけ目を離し盗賊を見た時だった。

 オークは大きなこん棒をスイングすると、魔法使いの頭はまるで野球ボールのように外野スタンドを目指して飛んで行った。


 盗賊の男はうまく森の中に飛び込んだのだが、戦いに参加せず森の中に控えていたオークにあっけなく捕まった。森の中にもオークが伏せているとは盗賊もさぞ驚いたことだろう。オークは盗賊の体を両手で優しく包むと、次第にその力を強くしていく。盗賊の体は、オークのその大きな手の中でゴキゴキと何回か音を鳴らせると、やがて動かなくなった。


 商人と戦士は最後まで善戦したが、魔法使いと盗賊を片付けたオークたちが戦いに加わると、囲まれてタコ殴りに()い絶命した。


 人間を始末しやることがなくなったオークの群れは、その興味を荷馬車へと向ける。


「ヒンヒン」と恐怖で弱い鳴き声をあげる馬をまるでなでるかのように軽く(ひね)って殺すと、荷台の(おり)の中でガタガタと震える俺の方へやってきた。



 オークの集団の中でも、ひときわ大きいオークが木の(おり)をバキバキと壊した。

 そして俺の首根っこを(つか)み持ち上げると、何かを確認するかのようにジロジロと眺める。


 俺を(つか)んでいるオークの顔が徐々に近づく!


「*********! (たっ、食べられる!!!!)」


 俺は恐怖のあまり、言葉にもなっていない悲鳴のようなうめき声をあげると、その場で失禁して気絶した。


 オークは気絶した俺の臭いをクンクン()ぐと


「*********」


 と笑った。

 仲間のオークもそれにつられて笑ったが、当然俺は気絶しているのでそんなことは知らない。



ご覧いただきありがとうございます。

金貨八十枚の男、山井進です。

マニアの好物、山井進です。

今後ともよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ