第24話 「狩りへ」
オーク村のトップが住む洞窟の前では会議が行われていた。
パパ不在で村長代行であるママが座長を務めている。
そしてその横にはオーク婦人部から幹部であるメスオークが出席していた。
この幹部というのは、婦人部のナンバー2のポジションにいるメスのオークだ。
婦人部のトップは言わずもがなママである。
その二匹に加え、村長の息子である俺と通訳のガリベンが参加している。
大きなウ〇チ臭いスライムをなんとか撃退したものの、俺たちを襲ったあの超巨大なウ〇チ臭いスライムは、まだこの森のどこかにいる。
アイツがいつ襲撃して来るかわからない。
そこで襲撃に備えて万全の体制をとった方が良いと進言した。
万全の体制といっても、交代で見張り立てて、夜は集まって寝るということぐらいしかできないのだが。
これにはママも婦人部代表のメスオークも反対なく賛成してくれた。
話題はスライムからパパたち男衆の話になった。
食料を狩りに行ったパパたちの帰りが遅いのだ。
いつもなら狩りが空振りであったとしても、四~五日程で帰ってくるのだが、それも今日で六日目。
「さすがに何かあったのでは?」と心配していた。
しかし、いくら心配しても村にいる俺たちが、どうにかできる問題ではない。
それよりも、もっと重要な問題がある。
食料問題である。
パパたちが帰ろうが帰らまいが関係ない。
生きていく以上、何か食わねば死んでしまうのだ。
俺は狩りに出かけたいと思っていた。
そこで村に残る者で、何名か役に立つオークを出してほしいと提案した。
だがママと婦人部幹部からは、良い返事は返ってこなかった。
それもそのはず、今、村に残っているのはガードのような狩りに出たことがない若いオスや子供、そしてメスと老いたおばあさんオークだ。
若者オークの筆頭であるガードですら、実践となるとあの体たらくなのだ。
率先して狩りができるようなオークは……いないだろう。
これには頭が痛かった。
ガードは昨日のスライム戦で経験は積めたのだけど。うーん……。
そんなことを悩んでいると、
「*********」
後ろから突然、若いメスオークが会議に割り込んできた。
どうやら後ろで、俺たちの話をこっそり聞いていたらしい。
「*********!」と婦人部ナンバー2のメスオークが、間髪入れず若いメスオークを怒鳴りつけた。その若いメスのオークは婦人部の幹部から怒られると、しょんぼりとした顔を俺に見せて後ろへと消えた。
ガリベンはその様子に驚きあっけに取られていた。
やがて我に帰ると、あわてて一連のやり取りを通訳しようとしたのだが、俺はそれを手で制した。
二匹のオークの会話はオーク語で、俺にははっきりとした事はわからないけれど、きっとこういうだろう。
後ろでこっそり話を聞いていた若いオーク娘が「わたしが狩りに行くわ!」とでも言ったのだろう。
村の幹部会議に一般のオークが口出しするなんてとんでもないことだ。
しかもまだ若い小娘だ。婦人部の幹部オークがこれに怒ったのだ。
「黙れ小娘! これはおまえのような小娘が口を挟むような場ではない!」とでも言ったに違いなかった。
俺は少し考えるとガリベンに言った。
「やる気があるならいいよ。狩りに連れて行こう」
やる気がない者を無理やり引っ張って連れて行くよりも、多少能力的に劣っても、やる気がある者を使った方がまだマシだろう。
どちらにしたって、狩りには人手ならぬオーク手が必要なのだから。
ガリベンは俺の話をママと婦人部幹部に伝える。
「まぁ、坊ちゃんがそう言うなら……」
と婦人部幹部オークも渋々それを認めたようだった。
それを聞いたオークの小娘の顔はパッと明るくなり、ウホウホと胸を叩いて小躍りし始めた。
悩みに悩んで、狩りに出かけるパーティーの構成を考えた。
ガードと同じく、まだ狩りに出たことのない若いオスオークを一匹。
そして通訳のガリベン、志願してきた小娘オークの三匹を連れて狩りに出ることにした。
するとママは狩りにガードも連れていけと言ったのだが、俺はそれを断った。
森で俺たちを襲って来たサイズより小さいとはいえ、ウ〇チ臭いスライムとの戦闘に勝利し自信をつけたのだ。
もし俺たちが狩りで不在の時に、あの超巨大なウ〇チ臭いスライムの襲撃があれば、先頭に立って戦ってくれると思う。
あいつたった一匹でも、死ぬまで戦えば女と子供が逃げる時間くらいは稼げるだろうと思ったからだ。
翌日の早朝に立つと決めたので、早く寝るように皆に伝えて、俺もママのミルクを飲んで眠った。
◇
朝日が森に差してきたころ、ママに起こされ目を覚ました。
夜間の見張り役であるママが無事ということは、スライムの襲撃はなかったようだ。
目覚めのモーニングミルクを頂くと、さっそく狩りの準備を整える。
戦士の剣、戦士の盾を装備すると洞窟を出た。
洞窟を出ると、既に狩りのメンバーが集まっていた。
小娘オークはやる気に溢れているのだろう。鼻息が随分と荒い。
若い狩人見習いのオスのオークは、どこか不安げな顔をしていた。
初めて村を出て狩りをするのだ。心配なのはしょうがない。
ひとつ気になった。
どこにもガリベンの姿がないのだ。まだ寝ているのか……。
通訳なしでこのメンバーと一緒に行動するのは、さすがに無理がある。
ガリベンを起こしに行こうとすると、小娘オークはそれを察したのか、見習いの背中を指さした。
ガリベンは見習いオークに背中におんぶされていたのだ。
どこか具合でも悪いのかと心配になって、背中に背負われているガリベンを近くで見てみる。
ガリベンは見習いの背中で小さな寝息を立てていた。
寝ているガリベンはそのままに、早速狩りに出かける。
ママと婦人部幹部のオークが森の境界線まで見送りに来てくれた。
昼間はガードに任せてちゃんと眠ってね、そんな気持ちを込めてママに行ってきますのハグをして村を出発した。
――――――――――――
名前:進
職業:若葉マークの狩人
武器:戦士の剣
うで:戦士の盾(ウ〇チ臭い)
て:皮手袋
ステータス:元気
名前:ガリベン
職業:オークの子供
武器:なし
ステータス:眠り
名前:見習い
職業:狩人見習い
武器:なし
せなか:ガリベン
ステータス:緊張
名前:小娘オーク
職業:元気娘
武器:なし
ステータス:興奮
――――――――――――
◇
狩りに出かけるにあたって、どこへ行くかいろいろ考えた。
森の中を行く当てもなく、闇雲に進むというのは迷子になる可能性が高い。
いつまた超巨大なスライムと遭遇するかわからない。
森の中を行くのは、冒険初心者の俺たちにはリスクが大きかった。
そこで村の外れにある小川に沿って歩くことにした。
小川沿いは視界が開けているし、足元の状態も悪くないということを知っていた。
川沿いに歩けば、方角を見失って迷うことはないからね。
それに動物も水を求めて動いているだろうから、獲物を見つけやすいのではないかという考えもあった。
ちなみにこの小川はオークの飲み水にもなっているし、俺がウ〇チを投げつけられたりした時に汚れを落とすのに使ったりしているお馴染みの川である。
小川と呼んでいるがオークから見て小川なので、人間の俺からの視点で見れば、そこそこの川幅があることを付け加えておく。
俺たちは小川沿いに沿って歩いていた。
狩人見習いのオークは遠くへ出かけるのは初めてのようで、かなり緊張している様子だ。
それに今まで誰にも狩りの仕方など習ったことがないのだ。
狩りに連れてこられたものの、いざ獲物を目の前にしてどうやって倒すのか知らない訳だから、緊張もするだろうし不安もあるだろう。
実は俺も同じだった。このオークたちを狩りに連れてきたのはいいものの、どうやって狩りをすればいいのかと考えてはいるのだが、答えはまだ見つかっていない。
殴って倒すか、石でも投げるか、走って逃げるか。
手ごろな鹿か何かで狩りのテストを試してみたい、と考えていた。
問題は都合よくそんな獲物が見つかるかどうかなのだが……。
一方、小娘オークというと、出発した時からずっとウホウホと興奮気味で、冒険に出られたことに感激しているようだった。
まぁ、俺も似たようなものだけどね。
小娘オークにとっては、目に映るもの全てが珍しいのだろう。
初めて見る木や野草を見つけると、触ったり匂いを嗅いだりと終始落ち着きがなかった。
道中、南天のような小さな赤い実を見つけると、迷わずそれを口にした。
だがその実が渋かったのだろう。顔をしわくちゃにして渋い顔をするとブヘブヘと唾を吐いた。
その姿は小娘というより、お転婆という言葉がピッタリだった。
そんな小娘の姿を見て狩人見習いのオークは、なんとも言えぬ顔をしていた……。
ヒロイン(オーク)
ヒロインが美人である必要性を感じない小説。
萌え要素?
ガリベンで我慢してください。お願いします。




