第18話 「大追跡 ~遭遇!~」
スライムが残したウ〇チの臭いを追って、ボディーガード兼お目付け役のオークとともに森へと入ることにした。
いざ森の中に入ろうとしていたところ、ガリベンがトイレの近くの茂みをガサガサと漁っているのが見えた。
もうスライムは探さなくていいと伝えたのに、まだしつこくスライムを探しているようだった。
「ガリベン、もう探さなくていいってば」
少し離れたところから声を掛けると、ガリベンはこちらへ振り返った。そして何を思ったのか、駆け足でこちらにやってくると、俺の隣にいたお目付け役のオークに尋ねた。
「*********?」
どうやら、俺がお目付け役の若いオークと一緒にいるのを不思議に思ったようだ。
何をやっているのかをわざわざ聞きにやってきたのだ。コイツは俺がやることにイチイチ何かと首を突っ込んでくるから鬱陶しい。
ガリベンの問いにボディーガードのオークが「*********」と答えると、ガリベンは俺の方を見て「*********!」と言った。
ボディーガードのオークは困ったような顔をして俺を見る。
……。
二匹のオークは俺を見つめている……。
…………。
さーっぱりわからん!
少しは俺にわかるように話せ!
そもそも、お前らの会話には情熱〈パッション〉が足らんのだ。
だから俺に全く伝わってこないんだぞ!!
俺が困った顔をして黙っていると、ガリベンがもう一度俺に聞いた。
「*********」
今度は理解できたぞ。
なるほど。一緒に行きたいってか。
どうしようか。こんな糞ガキでも何かの役に立つかもしれない。
俺はボディーガードの方を向いて、ガリベンを指差して言った。
「*********」と。
……。
…………。
しばらく沈黙が続いた。
ボディーガードは全く俺の意図を理解できなかったようだ。
しかもガリベンにも伝わっていないようだ。
俺はもう一度「*********」と日本語でもオーク語でもないオリジナルの言語『ウゴウゴフガフガ語』で言った。
しかし伝わらなかった。
俺も彼らと同じく情熱〈パッション〉が足りなかったのだ……。
「だから、連れていくって言っているの!!!」
すると、横にいたガリベンが「*********」と俺の言葉を通訳してボディーガードに伝えたようだ。
するとボディーガードが
「*********」
と返事する。
どうやら一緒に連れていくということを理解してくれたらしい。
う~む、ガリベンはムカツク奴だが通訳として使えるかもしれんな……。
俺たちは犯人の臭いの痕跡を追って、ようやく森へと入る……。
――――――――――――
進 LV?
職業:名探偵
武器:虫眼鏡、戦士の剣
あたま:なし
からだ:なし
うで:戦士の盾(ウ〇チ臭い)
て:皮手袋
あし:なし
ステータス:寝不足、手荒れ、満腹
ガリベン LV?
職業:オークの子供
武器:なし
ガード LV?
職業:ボディーガード
武器:なし
あたま:からっぽ
――――――――――――
ガリベンに地面に残ったウ〇チの臭いを追わせた。
やはり臭いは森の奥深くへと続いているようだった。
森の奥へと足を進める。
案の定というか、いつも通りというか、五分ほど森へ入ったところでガードが「*********」と騒ぎ出した。
これ以上、森に入るなと言っているようだった。
オーク殺害の犯人を追っていることを理解しているガリベンは、事情を知らないガードに「*********」と反論するが、所詮は下級民のオーク、しかも子供のオークの意見など通るはずもない。
俺はガリベンに情熱〈パッション〉を込めてこう言った。
「*********」と。
すると、ガリベンは口をポカン開けて間抜けな顔をして固まった。
俺がウホウホフガフガ語で話したから驚いたのか、それとも提案に驚いたのかはわからないが、彼に通じたことは確かなようだった。
「おい早く伝えろよ」
とガリベンの脛を蹴ると、我に返ったガリベンが必死にガードに説明を始める。
「*********」
「*********」
「*********」
「*********」
会話をするオークたち。俺には何を話しているかさっぱりだった。
しばらくやり取りをした後、ちらりとガードは俺を見た。
俺は手にしていた戦士の剣で、木の幹に刃を当てて印を刻んで見せた。
「*********、な?」
俺が提案したのは、迷子防止のための目印を木の幹に刻みながら森を進むということだった。
ガードはこれを理解できるのだろうか? 少し心配になりガリベンを見る。俺の心配を察したのか、ガリベンが補足の説明を始めた。
お目付け役の若いオークは少し考えていた。
そして決断した。
ガードは迷子防止の印をつけるなら、もう少しだけ森の奥へ入って良いという判断を下したようだった。
なかなか話のわかるヤツじゃないか。このガードってオークは。
お目付け役のガードから、許しを得た俺たちはさらに森を進む。
木の密度は徐々に濃くなり、まだ昼だというのにどこもかしこも薄暗い。
ふと横のガードを見ると、どうも顔色が怪しい。
(こいつビビっていやがるな……)
まだ狩りにも出たことがない若いオークだ。
初めての冒険でビクビクしているに違いなかった。
引率者という手前、下の者にみっともない姿を見せたくないという見栄と恐怖がきっと頭の中で戦っているのだろう。
例えるなら、お化け屋敷に入った怖がりなヤンキーだ。
虚勢を張って怖くないフリをしているが、内心物凄く怖がっている。まさにそんな説明がピッタリだった。
性格の悪い俺は、ちょっと悪戯をしたくなった。
辺りを頻りにキョロキョロとするガードの背中を突然パチンと叩く。
ガードは飛び上がって驚いた。
あまりの驚き様に、それを見た俺は「アハハ!」と声を出して笑ってしまった。
あまりにビックリしたのか、目に涙を貯めながら「*********」と訴えるガード。
たぶん「びっくりさせないでよ!」とでも言っているのだと思う。
俺は「ゴメンなw」という気持ちを込めて「ウゴウゴフガフガ」と謝った。
きっと俺のウホウホフガフガ語は伝わってないと思うけど、雰囲気で伝わっていると思う。雰囲気で。
そんな時だった。
地面に残された匂いを真面目に追っていたガリベンが、慌てた様子で俺たちを呼びにきた。
◇
俺とガードでじゃれ合いながら森を歩いていると、真面目に臭いを追っていたガリベンが、慌てた様子で俺たちを呼びにきた。
ガリベンに案内された先には巨大な骨があった。
一目見て、これが巨大な人型モンスターの骨というのがすぐにわかった。
この前の犠牲になったオークの骨によく似ているのだが、そのオークの骨より遥かに太く大きい骨だった。
「これは何の骨だ?」
「*********」「*********」
ガリベンもガードも知らないという。
さっそく虫眼鏡を使って骨を詳しく観察してみる。
骨は綺麗だった。
それ程汚れていないし、苔も生えていないから、ごく最近骨になったのだと思う。
周りにウジ虫も落ちていない。
つまり、骨以外は残らず全て綺麗に食べられたということだ。
もし猛獣が食べたのなら、少しぐらいは肉や毛、それに食べにくい部分に何かしら残留物が残っていて然るべきだ。
それがないということは……。
匂いを嗅いでみるとウ〇チの香りがほのかに残っていた。
つまりこいつも犠牲者だということか――。
「しかしこの骨は一体……」
骨を丹念に調べていると、骨の傍らに、棒というか丸太が落ちているのに気づく。
試しに持ち上げようとしたのだが、俺の力では持ち上げることはできなかった。
ガードにその太い棒を持ち上げさせてみると、丸太の先端には鋭利に尖った石がついていた。それは巨大な石斧だった。
その石斧の先端に取り付けられている石は丁寧に研がれていた。
「これは磨製石器か……」
触っても切れることはないが、丁寧に研磨されていて刃のように尖らせてあり、これが体に当たればただでは済まないはずだ。
(これが作れる種族の骨か……)
「これは持ち帰るぞ」
そうガリベンに言うとガリベンはそれをガードに伝える。
ガードは「よいしょ」と気合を入れると、少しよろけながら金太郎のマサカリのように斧を肩に乗せた。
若いオークといっても、ガードはもうほとんど大人のオークと変わらない大きさにはなっている。
それがよろけるほどの重さの武器を振り回すモンスターか……。
俺はこの世界の冒険者ではないが、あっちの世界では長く冒険者をやっていたから、多少はモンスターに関する知識があった。オークより体が大きく、斧を振り回すモンスター……。
たぶんオーガだ。
オーガはオークより大きい。
そして多少の知恵はあったはずだ。ゲームの中では。
もしそれがこちらの世界にも当てはまるなら、これはオーガの骨に違いない。
ん!?
ちょっと待って。
オーガも飲み込んで骨にするようなモンスターが、村に遊びにやって来てるわけ!?
しかも夜に!?
これってかなりヤバイんじゃねぇの?
よく考えたら、高さ二メートル以上あるウ〇チ山を飲み込んで、それでも足りずにオークをペロリと食べちゃうモンスターだろ?
糞やべぇヤツじゃないか!!
俺はそれを想像しただけで、冷や汗がダラダラと止まらなかった。
「ジョロジョロジョロ……」
プンと漂う尿の香り。
見るとガリベンが失禁していた。
おいおい、ガリベンなにやってんだよ!
ガリベンにもこの敵の恐ろしさがわかったのだろうか?
それでも失禁はないだろうw お漏らししちゃうなんてガキだなぁw
そう言ってやろうとした時だった。
自分の目を疑った。
オーガの骨より巨大な茶色のアイツが、ノロノロとゆっくり動いているのが視界に入った。
ガリベンもガードもそれに気づいて恐怖で体がガチガチに固まっていた。
もちろん俺もそうだ。
唾を飲み込もうとするが、口の中はあまりの緊張でカラカラに乾いている。
「お、おい、帰るぞ……」
今にも消えそうな細い声で言った。
二匹は俺の言葉にコクリと頷いた。
オーク語でもないのに完全に二匹には通じていた。
やっぱり情熱〈パッション〉って凄い。
いやいや! 今はそんなことはどうだっていい!
一人と二匹は音をたてないようにソロリソロリとその場から後退していく。
後退する分だけ巨大なウ〇チ色のスライムも近づく。
こちらがピタリと止まると、ウ〇チ色のスライムもピタリと停止した……。
え~っと……。
これ……完全にロックオンされているような……。
もうこうなったら、やることはひとつしかない。
「逃げるぞ!」
そう言って俺が駆けだすと、二匹も後ろに続いた……。
「*********!」(いつもありがとうございます!)




