第12話 「売られた喧嘩は買ってやる!」
自ら進んでトイレで用を足すようになったオークたち。
以前はあちこちに落ちていたウ〇チだったが、それもなくなり村は衛生的になった。
しかし、トイレのウ〇チを処理する下水場システムは、当然ながらこの村にはない。
トイレに溜めウ〇チをそのままにしておいては溢れてしまう。
だから、どこかに集積しておく必要があった。
村の外れに設置したトイレの側に、山のようにうず高く積まれたウ〇チ。
通称ウ〇チ山。
俺しかそう呼ぶことはないのだけど。
俺が広場のウ〇チ拾いを始めてからというもの、そのウ〇チ山は日に日にどんどんと大きくなっていた。
さらにトイレに溜まったウ〇チも定期的に回収し、ウ〇チ山へと積み上げていた。
どこまで大きく、高くできるか? と少しお遊びの要素を取り入れつつ、どんどん積み上げていったのだが、ある時から一向に大きくならなかった。
きっと乾燥して水分が飛んで体積が小さくなったのか、下の古いウ〇チから徐々に土に還っているのだろう。
その時まではそう思っていたのだが――。
◇
ある朝、信じられないことが起きた。
なんとウ〇チが消えたのだ。
その辺に落ちているウ〇チが消えた訳ではない。
広場で拾い集めたウ〇チや、トイレに溜まったウ〇チを積み上げていたウ〇チ山のウ〇チが消えたのだ。
もちろん全部消えた訳ではないが、昨日と比べて大きさが目に見えて小さくなっているのだ。
これには俺も目を疑った。
どう考えてもこれは明らかにおかしかった。
こんなに早く土に還るはずがない!
これは何かの事件の前触れではないかと調査に乗り出すことにした。
と言えば格好が良いかもしれないが、実のところただの暇潰しである。
毎日やることといえば、広場のウ〇チ拾いとママのミルクを飲むこと、それに寝ることだけなのだ。
ここにはネットもなければテレビもない。娯楽が何一つない!
だから、こうでもして過ごさないと退屈で死んでしまうのだ。
そんな訳でウ〇チはなぜ減ったのか、原因を調べてみることにした。
洞窟の一番奥にある秘密のガラクタ置き場で装備を整える。
以前、オークの餌となった商人の道具袋から偶然見つけた虫眼鏡を装備すると現場へと出動した。
――――――――――――
進 LV?
職業:ウ〇チ探偵
武器:虫眼鏡
あたま:なし
からだ:なし
うで:戦士の盾(ウ〇チ臭い)
て:皮手袋
あし:なし
ステータス:健康
――――――――――――
事件現場のウ〇チ山に到着する。
「ここが現場ですね……」
掛けてもいない眼鏡をクイッとあげてみる。気分は探偵ドラマだ。
自分の指紋が証拠品につかないように革手袋をすると、何か犯人の手がかりが残っていないか調べ始めた。
ウ〇チ山の高さは約二メートル。俺の身長より少し高い。
高さは大したことはなかったが、重さで横へ横へと広がるのでかなりの幅があった。幅は七~八メートルはあったはずだ。
それが急に三割減といったくらいに小さくなっていた。
山が小さくなったその証拠にウ〇チがあったであろう跡が地面に残っている。
土がじっとりと湿っているので、つい最近までは、確かにここまでウ〇チが広がっていたはずなのだ。
虫眼鏡でウ〇チ山の表面を見てみる。
普通ならウ〇チ山の表面は、乾燥によって乾いていなければならないが、全体的に湿っていた。
「おやおや? これはまるでウ〇チの表面が削られたような感じですねぇ……」
少し時間が経って、乾燥してカピカピになっているであろうウ〇チの表面が、じっとりと濡れている。
ウ〇チの山の表面だけを削ったりすることは可能なのだろうか。
一体どうやったのか、まったく見当もつかない。
ひょっとしたら動物が舐めたのかもしれない。
鹿系か何かの動物だったと思うが、塩分を求めて山へ岩塩を舐めに行ったりすることがあるというのを以前テレビで見たことがある。
それなのかもしれないと周囲を調べてみたが、動物の足跡はひとつも見つからなかった。
ただひとつ痕跡があるとするなら、水糊が渇いたようなカピカピの筋が地面にあるということだった。
筋を見失わないように虫眼鏡でその跡を追う。
するとその筋は森へと続いていた。
このカピカピの筋は何かの生物の痕跡で間違いない!
そう断定した時だった。
「びちゃ」
俺の背中に何か冷たいモノが当たった。
「*********!」 「*********!」 「*********!」
と同時に笑い声が聞こえてきた。
振り返ると糞ガキたちがいた。
(この野郎……俺を誰だと思ってやがる!!)
俺は糞ガキたちに怯むことなく、番長格の糞ガキオークへと向かっていく。
その糞ガキたちを束ねるリーダー格の子供オークは、身長が百八十センチほどだろうか。
百九十二センチある俺の方が身長は勝っているが、体重は二百キロ以上ありそうだ。俺より八十キロほど番長オークの方が重い。
実際に立って並んでみると、俺と比べかなりの体格差があることがわかる。
とくに腕など子供オークのくせに丸太のように太かった。
番長オークと至近距離での睨み合いが数秒続く。
お互いの息がかかるくらいの近さだ。決して目を反らさない。
俺は怒っているのだ!
「俺を誰だと思っていやがる! 俺は! 俺は! 村長の息子(※注 三十八歳)だぞ!!!」
とは口に出して言わなかったが、そんな言葉を込めて手のひらでヤツの胸を押してやった。
あまりの怒りに思わず、こちらから手を出してしまったのだ。
グイッと押せば後ろに下がるかと思ったが、俺の手は番長オークの胸をなでただけで一歩も後ろへ下がらせることはできなかった。
そりゃ体重差があるからね……。勢いでついやってしまったんだ。
反抗の姿勢を見せつければ、少しは糞ガキも反省するかと思った。
ところが、反省するどころか逆にヤツのハートをファイヤーしてしまったようだった。
番長オークは俺を軽々と持ち上げると、野球選手がセカンドバッグを小脇に抱えるが如く俺を小脇に抱えると、トコトコと歩き始めた。
やがて立ち止まると、突然、俺を宙へと放り投げた。
ふわっと放物線を描いて俺は空を飛んだ。
まるでスローモーションのように俺の視界にゆっくりと世界が流れていく。
澄み切った青い空に鳥が群れで飛んでいた。
見慣れた広場をバックに糞ガキたちのニヤけた顔が映る。
上昇しきった俺はやがて下降していく。
そして――。
ズボボ……。
音をたててウ〇チ山に沈んでいく俺。
そう、俺はウ〇チ山へ目がけ投げられたのだ。
すぐに視界は真っ暗になる。頭も山の中に沈んでしまったのだ。
このままでは窒息して死んでしまう!
必死にもがいてなんとか頭だけはウ〇チ山から出すことができた。
ウ〇チ山から頭だけ出した間抜けな俺の姿を見て、糞ガキオークたちは「キャッキャ!」と悲鳴のような笑い声をあげた。
すると、この騒ぎに気づいた大人のオークと若いオークが、広場からもの凄い勢いで飛んできた。
オークがこんなに速く走れるものなのかと、感心するくらいの勢いだった。
そしてここまでやってくると、大人のオークは番長オークを容赦なくボコボコに殴り始める。
番長が殴られているその間に若いオークは、ウ〇チ山に埋まった俺を引きあげてくれた。
助けてくれたこの若いオークに見覚えがあった。この前森に入った時のボディーガード役を務めたオークだ。
一緒に駆け付けた大人の方のオークは、確かパパの右腕的な存在の一匹で幹部メンバーのオークだったと記憶している。村のナンバー1がパパなら、ナンバー3あたりのポジションに相当するポジションにいるオークだった。
ナンバー3にこっぴどく殴られ「*********!」 と泣き声をあげる番長オーク。
若いオークは、番長の後ろを金魚の糞のようについて回っていた糞ガキオークたちの頭に強めのゲンコツを落として回った。
(ざまぁみろwww 権力者にたてつくとこうなるのだ!)
大きなオークに糞ガキどもが叱られている様子を心の中で喜びながら眺めていた。
ナンバー3のオークは、若いオークが金魚の糞にお仕置きし終えたのを見て、
「*********?」
と俺に向かって優しい口調で尋ねた。
ボコボコにしたから、これで許してやってくれ。という意味だろうか?
たぶんそうだろう。さすがに俺の怒りも収まったから、これで許すことにした。
俺は軽く頷いた。
ナンバー3は俺の許した意思を感じ取ると、ウンウンと大きく頷いて広場へと帰っていく。
そう言えば、以前、ウ〇チを投げつけられたときに糞ガキオークたちをビンタしたのもこのオークだ。
ナンバー3のオークは俺に対して理解力があり、優しいのかもしれない。
番長オークの方へ少し目をやると、さすがに懲りたのかシュンとしていた。
◇
村の外れの小川へとウ〇チまみれの体を洗いにいく。
若いオークも一緒についてこようとしたのだが、丁重に断った。
さすがにウ〇チだらけの俺のお世話をさせるのは可哀そうだと配慮したのだ。
俺が断ると少しホッとした顔をしていたので、たぶん嫌だったのだろう。
小川でウ〇チを洗い流しながら、ウ〇チ山に残された痕跡の事を考えていた。
あの量のウ〇チが消えるなんて、何か大変な事が起こる予兆のような気がする。
なんだか胸騒ぎがするのは気のせいか。
「これは正体を確かめる必要があるな……。あの怪しい跡は森に続いていた。森に入って調査してみるか」
バシャバシャの川の水で顔についたウ〇チを洗い流すと、太陽はもうすっかり西へと傾いていた。
主人公の山井進(38歳)は身長192センチ、体重120キロのお腹が膨れている普通体形の相撲取りのような人です。
それでもオークは軽々と進を投げます。さすがモンスターですね。
いつも読んでくださってありがとうございます。
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