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第11話 「トイレトレーニング」


 トイレの穴を完成させた翌朝、俺は早速完成させた穴でウ〇チをすることにした。

 ファーストウ〇チは、トイレを作った俺自身がするに相応(ふさわ)しい。


 トイレの穴は二等辺三角形のように設計してある。

 オークの大人から子供まで対応できるように、溝の幅が徐々に広がっているのだ。

 自分のベストな幅の部分にしゃがんで用を足すということを想定して作った。

 穴の先端の一番細い部分、これがオーク村で一番小さい俺にぴったりの幅になっている。

 そこにウ〇チスタイルで構え、便意が来るのを待った。


 そして時はきた!


 プリプリと可愛(かわい)い音(オークに比べて)を立てて穴に落ちていくMyウ〇チ。


 用を足し終えトイレの穴を(のぞ)くと、そこにはホカホカのウ〇チがあった。

 思わずガッツポーズがでた。

 これならいける! そう確信できたのだ。


 意気揚々と広場へと向かう。

 村の広場では下級オーク民たちが、朝の太陽の陽を浴びてのんびりとしていた。



 これからウ〇チをしそうなオークを探す。

 朝ということもあり簡単にそれは見つかった。

 集団から少し離れたところでモゾモゾしているオスのオーク。

 今にもウ〇チをしそうな雰囲気だ。

 俺は走ってそのオークのところへ向かった。


 が、一足遅かった。

 ボトボトと音を立てて目の前に落ちるホカホカのウ〇チ。


「くそー! 間に合わなかったか……。(くそ)だけに」


 思わずクククと自分で笑う。

 自分で言うのもなんだがユーモアのセンスはある方なのだ(^^ゞポリポリ



 脱糞したオスのオークは、突然走ってやってきた俺を何事かと、まじまじと見つめた。


 しかし用が済んだオークに俺は用がなかった。

 俺はすぐにそのオークを手で「シッシッ」と、どこかに行けと追い払った。

 そして目の前に転がっているホカホカウ〇チを盾に載せながら考える。


「広場とトイレまで少し距離があるから間に合わないかもなぁ……」


 そうなのだ。

 今にもウ〇チをしそうなオークを連れて行っても、トイレまで間に合わない可能性が高い。

 まだ湯気をあげるホカホカのウ〇チをトイレの脇に設けたウ〇チ置き場に放り投げた。



 俺は方針を変更することにした。


「よし、オークをトイレに連れて行ってウ〇チが出るまで踏ん張らせてみよう」


 今朝、まだウ〇チをしていないオークを探す。

 まだトイレをしていないオークを探すというのは難しいことのように思えるのだが、簡単に見分ける方法があったりする。

 実は、お尻の匂いを嗅ぐだけで判別できるのだ。

 オークはウ〇チをした後、紙で拭いたりしないから微かにそれ(・・)が香るのだ。

 これオーク社会の豆知識な。



 俺は広場で日向ぼっこしているオークのおけつをクンクンと()いで回った。


「よし、こいつに決めた!」


 何匹か候補がいたのだが、最初にやらせるのにうってつけのオークがいた。

 村の村長であり俺の養父でもある、オークパパである。


 オークパパの手を引いてトイレに連れていく。

 そういえばオークパパと一緒に過ごすのは、村に来た日ぶりだと気づいた。

 食事の時間はパパと一緒ではなく、いつもオークママの胸の中でミルクを飲んでいる。普段の接点は寝る時ぐらいだが、寝る時ですらもママと一緒で、パパは少し離れて寝ている。

 なのでスキンシップと言えるものは皆無だった。


 そんな接点のあまり多くないオークのパパに何かをやらせるというのは危険ではないか? そんな考えが頭をよぎった……。


(ひょっとしてこれは迂闊(うかつ)な行為だったか……)


 今日まで村長の息子として好き勝手にやってきたから、気が緩んでいたのだろう。

 村のボスであるパパオークに気軽に触れていいものだろうか。

 慎重に行動すべきだった、深く考えが及ばなかった、と今更ながら後悔した。


(パパの機嫌を損なえば俺は殺されるかもしれない……)


 俺は恐る恐るパパの顔をチラリと見上げた……。



 そんな心配は杞憂(きゆう)だった。

 恐る恐る見上げたオークパパの顔はデレにデレていた。

 久々の愛息子(まなむすこ)との触れ合いに、パパはとても機嫌が良さそうだ。

 これに俺は反省した。


(ママにベッタリで寂しい思いをさせてしまったな……。これからはパパにも甘えて息子としての責務を()たそう)


 そう思ったオークの息子だった。


 

 パパと手を(つな)ぎ、広場の外れへと連れていく。


 程なくしてトイレにたどり着いた。

 そして穴の中にある俺がさっきしたばかりのMyウ〇チを指さした。


 それを見て「??」と首を(ひね)るオークパパ。

 さすがにこれだけでは理解できるとは思っていない。

 あの若いオークで意思疎通の難しさを経験していたからだ。

 今度は穴の溝にまたがってウ〇チの姿勢を見せてみた。


「??」


 やはり簡単には理解して貰えない。

 理解どころか、愛息子の奇妙な行動に困惑している様子だった。

 パパはいかにも脳みそまで筋肉が詰まっていそうなオークだから、理解できなくてもしょうがない。

 パパにウ〇チのポーズを見せていると、広場の方からオークママが走ってこちらに向かってやって来るのが見えた。


「何事か?」


 おそらくそんなところだろう。

 愛息子が普段あまり触れ合わないパパを村の端へ連れてきて何かやっているのだ。

 気になるに決まっている。

 自分で言うのもなんだが、俺はママに溺愛されているからね。



 パパのトイレトレーニングにママも加わる。

 俺はウ〇チのポーズをママにも見せてみた。

 首を(ひね)って不思議そうな顔をするママ。


(くっ……ダメか……)


 諦めかけたその時だった。

 オークパパに便意が来たようだった。

 モゾモゾとし始めるオークパパ。

 俺は急いでオークパパを適切なトイレポジションへと誘導する。

 そして溝の上でウ〇チングスタイルをとらせてすぐの出来事だった。


 鳥のさえずりに交じって「バスンッバスンッ!」と豪快な音が辺りに鳴り響いた。


 ウ〇チングスタイルで溝にまたがるパパをママと一緒に見つめる。

 溝に転がる出来立てホヤホヤのパパから(ひね)り出たウ〇チを俺は指を差して喜んだ。

 オークママは理解したような、していないような、微妙な反応だった。


 あぁ駄目か……、などと落ち込むことはそれほどなかった。

 最初からそう簡単にいくわけがないと思っていたから。



 意外だったのはオークパパの反応だった。

 ウ〇チをした後、顔を少し赤らめると、そそくさとトイレから離れ広場へと戻っていった。

 どうやらオークにも羞恥心があるようだ。

 普段平気で広場でウ〇チをする癖に、それをまじまじと見られるのはどうやら恥ずかしいようだった。

 実に興味深い出来事だった。



 オークママにもここでウ〇チをして貰いたかったのだが、お尻の匂いで事後だとわかった。

 ママにウ〇チをさせるのは諦め、手を引いて広場へと戻った。


 いつものように広場に転がるウ〇チを盾で拾いながら、まだウ〇チをしていないオークを探す。

 初日はオークパパただ一匹にしかトイレトレーニングをさせることはできなかった。


 道は長い。

 でも諦めるつもりはなかった。


 ただのウ〇チ拾いなんかで終わってなるものか!


 と気合を入れると、今日も広場に転がるウ〇チを拾いに駆けて行く。


 ◇


 次の日も、その次の日もトイレトレーニングは続いた。

 お尻の匂いを嗅いではこれからウ〇チをしそうなオークの手を引っ張ってトイレに誘導していった。

 当然のことながら、俺はオークの言葉がわかるわけではない。

 オークもまた人間である俺の言葉を理解できない。


 情熱〈パッション〉だけで、意図や気持ちを伝えるというのは本当に骨が折れた。

 それでも何匹かのオークにウ〇チをさせることには成功していた。

 パパの時と同じく、便意のタイミングが偶然重なっただけなのだが。



 その辺にいる子供オークが、俺と同じことをやろうものなら、頬を一発シバかれておしまいだろう。

 だが俺はそこらにいる(くそ)ガキオークとは違った。

 

 普通の子供ではなく権力者〈村長〉の息子なのだ。


 大人のオークと言えど俺の指示に従うのだ。

 これが厳しい縦社会というやつだ。

 立場という力を使って、オークたちにトイレというものを地道に認知させていく。


 頭の中まで筋肉が詰まっている奴らだ。

 そう簡単には覚えてくれないだろう。根気よく教え込まねば。


 そう思っていたのだが、俺の予想は簡単に裏切られた。


 ◇


 あの憎たらしいウ〇チを投げつけてくる子供のオークのなどは、一度教えただけでトイレを覚えたのだ。


 どうやら比較的若いオークたちは物覚えがいいようだった。

 そしてトイレトレーニングを始めて十日ほど()った頃には、トイレの意味をほとんどのオークが理解し、便意がくると自発的にトイレに向かうようになっていた。


 オークはトイレの意味を理解することができる。

 Wikipediaに載るくらいの大発見だと思う。


 トイレで用を足すオークを遠目に見ながら、俺は達成感というものを味わっていた。


 情熱〈パッション〉があれば、人間とオークという異種間であっても気持ちは伝わる。

 これは間違いないのだと証明された。



 だが、俺にはどうしても納得いかないことが、ひとつだけあった――。


 どうして俺の情熱〈パッション〉は、あの冒険者たちに伝わらなかったんだろう……。


 本当に解せない話である。


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