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レジェンダリーファンタジー  作者: また太び
第二章 真竜が住まう港町ブルース
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第28話 雷神の怒り

リーシアの疾風突きに一度は面食らったサンダードラゴンだったが、すぐに油断を断ち切って一撃離脱したリーシアよりも迫りくるジェニファと武人に視線を向ける。



(練度は低いようだな)



本来ならば大盾で味方を守らねばならないタンクが一番遅れており、お世辞にも自分の攻撃を防げるとは思えないライトシールドを持つ金髪の女を見てサンダードラゴンは鼻で笑い、その無謀さを思い知らしめるためあえて彼女を狙う。



『ぬん!!!』



稲妻を纏った右拳を構えたサンダードラゴンはふわりと浮かぶと、風を巻き起こしながら盾ごとぶち抜く勢いでサンダードラゴン固有スキルである『サンダークラッシュ』を抜き放った。



「お願いッ!!」


『なにッ!?』



ジェニファの盾に『サンダークラッシュ』が直撃する瞬間、サンダードラゴンの眼前にどこからともなく現れた麗奈が風の刃を纏ったアストラルステークを右肩に振り下ろす。


風の刃は僅かながらサンダードラゴンの右肩を切り裂き、意識を乱された攻撃をジェニファは綺麗に恐れることなく盾で受け流す。



「武人!!」


「おうとも!!」



そこでジェニファの後ろにいた武人は勢い余って地面に拳が突き刺さり動けなくなっているサンダードラゴンの腹部に潜り込むと腰を低く構え、拳に力を込める。



「おおおおおお!!!タイラントブレイク!!」



拳に属する中級スキル『タイラントブレイク』は防御の高い相手に程効果を発揮するスキルであり、確率で防御力を15%下げることもできる優秀なスキルである。



『ぬうううう!!!!』



放たれた拳により後方へ少し下がるサンダードラゴンは口から稲妻があふれ出し、ドラゴンをドラゴンたらしめる必殺のブレスを放つ。



「み、皆僕の後ろに!!」



そこへ絶妙なタイミングで間に合った新垣が大盾を大地に突き刺し、シールダー固有スキル『ガーディアン・フォレストシールド』を発動させる。


ドクン!と鼓動するよう音と共に盾は光を纏い、光は一瞬で横に広がると巨大な城壁と化し、サンダードラゴンのブレスを受け止める。



「あ、新垣…!」


「だ、大丈夫!僕が!皆を!!!」



ダメージを殺しきれない新垣の腕や頬から血が噴き出すが、新垣の心は折れることなく大地に聳え立つ。



「大丈夫よ!回復魔法なら任せて!」



新垣のダメージはすぐリーシアが治し、永遠に思えるかのような数十秒が過ぎるとそこには拳を構えたサンダードラゴンがいた。



「えッ!?」


『ふん!』



咄嗟のことで構えを解いてしまった新垣をつまらなさそうに殴り飛ばす。



「新垣!!!」



木に激突した新垣は一瞬で気絶し、バイタルが危険域まで下がる。すぐにでも回復魔法をかけにいきたいが、サンダードラゴンがそれをさせてくれるはずもなく、再び拳を構えて飛び込んできた武人の拳を受け止め、赤子の手をひねるかのように投げ飛ばされた。



「う、嘘!武人まで…!!!」


『少しお前たちを甘く見ていたようだ』



サンダードラゴンが言葉を発するたびに1人ずつやられていく。リーシアと麗奈を守るため前に立っていたジェニファが雷撃をくらって崩れ落ちる。



『お前のその短剣……忌々しい』


「きゃあああ!!」



今までまるで手を抜いていたかのように俊敏に動くサンダードラゴンの拳が眼前に迫り、麗奈はほぼ無意識に短剣を前に構えて拳を受けるが、拮抗はあっという間に崩れ去って殴り飛ばされる。



『攻撃したこちらの手が切れるとはなんとも悍ましい代物よ』



攻撃を受けた両手がだらんと下がり、麗奈は直感的に腕が今ので折れたことに気づくが、不思議と痛みはない。しかし、身体は言うことが聞かず地面に倒れたまま指一つ動くことができない。



『さて、残すはお前だけだが……まだ我に勝つ気でいるのか?』


「当たり前よ」



リーシアは一度目を伏せ、深呼吸をすると目を見開き槍を回すと槍に風が集まり始める。



「アザム……アリッサ……私に力を貸して」



槍を纏っていた風が解き放たれると、豪雨の中でも消えぬ緑の炎を槍先に灯り、激しく逆巻く。



『面白い』


「行くわ」



炎の残像と化したリーシアは縦横無尽に森を駆け巡り、すれ違いざまにサンダードラゴンを切り付けていく。



『なるほど、我が反応できぬほどの高速を以て倒す気か―――だが、見えているぞ』



だんだんと目が慣れてきたサンダードラゴンは今まさに攻撃を仕掛けようとしたリーシアの方へ向き、口からサンダーブレスを放つ。



「ッ!!!」



リーシアは槍を逆さに持つと槍から凄まじい風が吹き出し、風の力によって強引にブレスを避けると空中に飛び上がる。

サンダードラゴンは避けられたことに対した驚きも見せず、冷静に翼で飛び上がったリーシアを追撃するべく飛び立つ。



『ぬん!!』



一瞬で追いついたサンダードラゴンはリーシアを叩き落すようにサンダークラッシュを放つが、リーシアの目はしっかりと攻撃の軌道を捉えており、まるで車のギアチェンジするかのように槍を一瞬で持ち替え、あえてサンダードラゴンの懐へ風の力で飛び込む。



『ぬお!?』


「阿修羅八王撃…改!!」



腹部に槍を突き刺すと流れるように7連撃の疾風突きをかまし、怯んだサンダードラゴンの腹部に風の力で勢いをつけたドロップキックを放って地面に叩き落すと、そのままリーシアも重力に従って落下を始めるが、さらに彼女は風で加速した。



「チェエエエエストオオオオオオ!!!!」


『ぬおおおおおおおお!!!!』



サンダードラゴンは落下しながら戦いが始まって初めて防御のための結界を張った。



「そんなものおおおお!!!」



風の衝撃を受け止めた結界は最初こそ拮抗したものの徐々に『バキバキ!』と崩壊を知らせる音と共に崩れ去り、サンダードラゴンの右目をリーシアの槍が貫いた。



『グガアアアアアアアア!!!!!』


「弾けろおおおお!!!!」



突き刺さった槍の先から風の力がはじけ飛び、サンダードラゴンの身体は内側から風にずたずたに切り裂かれた。



軽いクレーターを作り上げたサンダードラゴンの落下音に麗奈は薄れゆく視界の中で見ていた。リーシアが肩で息をしながらもサンダードラゴンを見下ろしているのを。











「か、勝ったの…?」



槍を杖代わりにしてようやく立っているリーシアは倒れているサンダードラゴンを見下ろす。



『馬鹿め、その程度でドラゴンが死ぬものか』


「え?」



倒れているサンダードラゴンから声が聞こえたかと思えば、ジェニファを一瞬で倒した落雷がリーシアを襲った。

防御する暇もなかったリーシアは落雷をまともに受けてしまい、悲鳴を上げることもなく一瞬で意識を手放してしまった。



『全くとんでもない人間どもだ。しかし、左目が逝ったか……手痛い失態だ……』



ゆっくりと体を起こしたサンダードラゴンは体のコリをほぐすように肩を回す。すると腹部に受けていた傷が徐々に癒えはじめる。



『これは里の者に笑われてしまいそうだが、人間どもに我らの素材を加工できる者がいたとは誤算だった』



自分の鱗を貫通した武器を拾うため立ち上がったサンダードラゴンはそこで立ち止まる。



『………なんだ、この悪寒は……』



殺気を隠そうともしない気配にサンダードラゴンが顔を上げると、そこには降りてきた崖からこちらを見下ろすモンスターがいた。



『ユピテルクライだと……!?』


「キュオオオオオ!!!!!」



ユピテルクライは不意打ちをしなかっただけ感謝しろと言わんばかりに激しく飛び立つと、身体に落雷を纏い、サンダードラゴンに攻撃を仕掛けてきた。



『ば、馬鹿な!!ここはユピテルクライの生息区域ではないはずだ!!』



雷を司るサンダードラゴンですら軽減しきれない雷ダメージを受けて皮膚が焼け焦げていく。


武人やリーシアの奥義を受けてもびくともしなかったサンダードラゴンがボールのように飛ばされ、樹木をなぎ倒しながら大地を滑っていく。



『ガアアアア!!』



本気のサンダーブレスを飛んでいるユピテルクライに放つが、ユピテルクライは涼しい顔で受け止め、あろうことかサンダーブレスを吸収しているではないか。



『なッ!?我のブレスを!?そ、そうか!雷完全耐性ならぬ吸収!!』



もう遅いと、ユピテルクライは言うように黒雲の空に翼を広げると空の雲は渦を巻いていき、ため込んでいたエネルギーを解き放つが如くユピテルクライに稲妻が集まる。



『これが長が言っていたユピテルクライの怒りか……聞いたことがある。人間族の姫君を守るように1体のユピテルクライがいると。そうか、我はその姫君の怒りに触れてしまったのか……』



辺りが青白い光に満たされ、白銀の鳥と化したユピテルクライは翼をサンダードラゴンへ向けると名を示す神の技――――ユピテルサンダーを解き放った。






リーシアはふかふかのベッドで目を覚ました。



「あ………」


「リーシア様!!」



声が枯れていて声にならない声が出て、それに反応した人がいた。リーシアが顔を横に向けるとそこには腕や顔に包帯を巻いた傷だらけのジェニファが涙を流していたのだ。



「じぇ、にふぁ……」


「よかったです……!今お医者さんを呼んできますね!」



新垣達は?と聞く前にジェニファは涙を袖で拭いながら部屋を出ていき、その後昔からお世話になっている初老の医者が自分の体調を確認していく。



「特に後遺症もないようだね。しかし、よくサンダードラゴンと戦って無事だったね」


「なぜ……私は生きているんですか……」


「ラクーシャ様に感謝するといい」


「ラクーシャ様……?」



彼女の名を口に出した瞬間、部屋の扉が勢いよく開かれ、綺麗なドレスに身を包んだラクーシャが走ってリーシアの胸に飛び込んだ。



「よかった!!本当に無事でよかった!!」


「ラクーシャ様……」


「リーシア、無事でよかった」


「お父様……お母様、お爺ちゃんまで」



ラクーシャに遅れるように部屋へアルバルトとクレミアとオルバルトが入ってきて、ますます自分がどんな状況にあったのか理解できなくなった。



「お前はラクーシャ様のユピテルクライに救われたのだよ」


「え?」


「リーシアが危ないと思ったからクーちゃんを行かせたの」



アルバルトがあっさりとネタ晴らしすると泣き腫らした顔を上げたラクーシャがとんでもないことを言う。



「あ、あのユピテルクライを?」


「すごかったぞ。この城からもユピテルクライの必殺技『ユピテルサンダー』が見えたからな」


「伝承は本当なのだろう。あんな稲妻、まさに伝承にある通りの威力じゃ」



リーシアは窓から見える外の景色を見るが、嵐が過ぎ去ったように空は雲一つない澄み渡った空をしており、先ほどの土砂降りの黒雲が漂っていた空とは思えなかった。



「皆は?」


「お前より先に目を覚まして訓練をしておるよ。皆、あの敗北がよほど悔しかったようじゃの」


「でも、相手はあのサンダードラゴンだったのよ?新垣君達はよく頑張ったわ」


「だが、本人たちは納得していないのだろう」


「わしもそう言ったのじゃが、男2人の方はそう行かなくてな。オズマンにしごかれておるよ」


「そう、オズマン伯爵様が……それで私は何日寝てた?」


「5日だ」


「もう起きないかと心配していたのよ?」


「ああ、父さんも母さんも心配したのだ」


「心配かけたわね。でも、まさか城出てすぐドラゴンに襲われるなんてついてないわ」


「やはりアリッサ君の存在が大きいのだろう。今までおとぎ話とされていた存在が続々と姿を現し始めている」


「どういうこと?」



アルバルトの言葉にリーシアは聞き返す。



「各地にドラゴンの目撃情報が出てきているのだ。それもそろってドラゴン達はある人物を探しているそうだ」


「もう読めたわ。アリッサでしょ」


「ああ、そうだ。揃って彼らはドラゴンを倒した者は誰だ?と聞いているらしい」


「アリッサがドラゴンを倒したって知っているのは?」


「一部の関係者だけだ。まぁ真実を語ったところで信じる者は少ないだろうが、これを機に陛下はアリッサ君の捜索に本腰を入れるようだ」


「死人が出るわね……」


「お父様ったら酷いのよ!一度は私の願いを聞き入れてくれたのに話が変わったー!って言ってアリッサ様を探す気なの!」


「まぁ仕方ない気もするけど……お父さん、アリッサ今何しているのかわかる?どうせ監視役を忍ばせているんでしょ?」


「ああ、アリッサ君は嵐の海域に挑むようだ」


「あ、嵐の海域!?あ、あの!?」


「相変わらずむちゃくちゃするわ……」



ユピテルクライが住むと言われている嵐の海域に挑むアリッサを想像してリーシアは寝ているわけにもいかないとベッドから出て立ち上がる。



「まだ寝ていた方がいいだろう」


「いいえ、私もこうしちゃいられないわ。アリッサも頑張っているんだし、私も頑張らないと」


「しかし……」


「いいの!それよりラクーシャ様、ユピテルクライのクーちゃんの元まで案内してくれない?お礼が言いたいわ」


「ええもちろんよ。クーちゃんもなんだかリーシアに用事があるようだったし」


「え?ユピテルクライが?」


「ええ、私なんとなくクーちゃんが言いたいことが分かるのよ?」



実は動物会話スキルを持っている姫様に驚きつつもリーシアはユーデンス王子の研究所へ向かった。



「やぁリーシア。先日は大変だったようだね」


「ユーデンス王子」


「ああ、挨拶はいいよ。その様子を見るにユピテルクライのところへ行くのだろう?」



頭を下げようとしたリーシアを制し、ユーデンスはこうなることを想像していたのか鍵をラクーシャに渡すとさっさと去って行ってしまった。



「あれでもお兄様も心配したんですよ?」


「え?ユーデンス王子が私を?」


「ええ、ユーデンスお兄様、昔リーシアが好きだったみたいですし」


「初耳だわ……」


「ま、今はそれよりも楽しいことを見つけたみたいですけど」



衝撃の事実をさらっと流されてリーシアとラクーシャ。ジェニファとオリヴィアはユピテルクライが住むケージの前に立つ。


鍵を開け、小さなジャングルの中央へ来ると相変わらずユピテルクライのクーちゃんは大樹の枝にとまってこちらを静かに見下ろしていた。



「えっと……先日は助けてくれてありがとうございました。あなたが来てくれなかったら私たちの冒険はきっとあそこで終わっていたことでしょう。あなたは私たちの恩人です。ありがとうございました!」



リーシアは深々と頭を下げ、ジェニファも静かに頭を下げた。それを見たユピテルクライはばさりと翼を広げると突然甲高い声を上げ始める。



「え!?な、なになに!?」



何か機嫌を損ねてしまったのか焦って辺りを見渡すリーシアに対し、ラクーシャは至って冷静だった。

すると樹木の裏側から1人の小さな金髪の少年が現れる。



「へ?」



今度こそ混乱の極致に達したリーシアは考えるのを放棄した。



「キュオ」


「リーシア、彼はサンダードラゴンだとクーちゃんは言っています」



彼、身長はおおよそ156cm程度であり、黒いボロボロのマントを纏っている以外は何も身に着けておらず、マントから見え隠れする身体は傷だらけで他にも痛々しい火傷の跡が広がっていた。



「サンダードラゴン……ってまさか!!」


「ええ、リーシアを襲ってきたドラゴンでしょう。どうやら生け捕りにしたみたいです」



ユピテルクライはサンダードラゴンを睨みつけると彼は一歩前に歩み出てふんと鼻を鳴らす。



「ラクーシャは知らなかったの?」


「知ってはいましたが、クーちゃんがリーシアが起きるまで待てと言うので」


「ふぅ~ん……で、なんでいんの?」


「その前に我の質問に答えよ。貴様か?ウィンドドラゴンを下したというのは」



サンダードラゴンの問いに答えるか悩むが、話が進まさそうなのでリーシアは――――



「私の相方が倒したわ」


「………そいつは強いのか?」


「ええ、そりゃ強いわ。恐らくこの大陸にいる誰よりも」


「この鳥よりもか?」


「きっとユピテルクライにも勝てると思うわ」


「嘘は言っていないようだな。しかし、そんな人間が存在するのか……?」


「さぁ私は答えたわ。次はこちらの番よ」


「ああ、我がここにいる理由か。なに、簡単なことだ。この鳥に負けたから言うことを聞いているだけだ」


「え?クーちゃんと主従関係を結んだんですか?」


「そこまで強制力のある契約なんぞ結んでおらん。もっとシンプルに気軽なものだ。ただ負けたから一つ言うことを聞け、その程度のものだ」



勝った方のユピテルクライは会話に興味がないのか、先ほどからじっと目を伏せたままでリーシアが目を凝らしてみてみるとなんと寝ているではないか。



「クーちゃんはなんと?」


「忌々しいことだ。お前たちの旅についていけ、と言ってきやがった」


「え?あなたが?」


「この先お前たちは我以外のドラゴンと遭遇するだろう。その際今のお前たちでは到底太刀打ちできんだろうからな。この我が直々に守ってやろう」



と、言葉だけ聞くと自信満々に聞こえるが、彼の表情からは到底そうは見えない。



「なんだか不服そうね」


「当たり前だ。何故誇り高きドラゴンである我が面倒なことをせねばならぬのだ。本当ならば今すぐにでもその首をねじ切りたいところだが、サンダードラゴンは一度決めた約束を違えたことはない」


「ウィンドドラゴンとはまた違って真面目なのね」


「ふん、あんな軟弱なドラゴンと一緒にするな。あいつらは臆病者だ。自分たちが弱いことを理解していながらその身に甘んじている。発破をかけてもへらへらと笑うだけで張り合いのない馬鹿どもなのだ」


「アザムはそんなことなかったけどな。彼、いつかブラックドラゴンに勝つ気でいたわよ」



それを聞いたサンダードラゴンは大きな笑い声をあげて腹を抑える。



「くはははは!!!あのアザムがか!!ブラックドラゴンをだと!!これは傑作だ!!」


「どこに笑う要素があったのよ」


「全てだ!!あいつはドラゴン族中でも特に落ちこぼれである角なしよ!!ドラゴンの威厳すら失った奴がブラックドラゴンに勝つとは、笑わない方がおかしいというものだ!!」


「いいえ、彼は強くなるわ」


「小娘、それは何の根拠があって言っている」



サンダードラゴンの表情がすっと戻り、少し殺気が灯った目でリーシアを睨みつける。



「アザムはドラゴンを倒したあの人と旅に出た。きっと次に会う頃には信じられないくらい強くなっているはずだわ」


「それが例の我らドラゴンを倒した冒険者か」


「ええ、そうよ。私の相方、何でも嵐の海域に挑んだそうよ」


「嵐の海域だと!?あそこは我らサンダードラゴンですら突破できぬ暴風と轟雷の海域よ。ただの人間ごときが超えれるものではない!」


「いいえ、きっとアザムも一緒のはずよ。あの2人なら突破できると思うわ」


「落ちこぼれのウィンドドラゴンが超えれるはずが……―――――おい、それは本当か?」



サンダードラゴンはそこで頭上を見上げると目を覚ましていたクーちゃんがじっと彼を見つめており、どうやらその視線のやり取りで言葉を読み取ったらしい。



「ますますお前の相方とやらが気になった。ついていくのは面倒だが、これも遊びだ。少し付き合ってやろう」


「え、えっと、んじゃこれからよろしく……なのかしら」


「もう少し喜んでいいと思うが……―――ああそれと我の名はディケリ・サンダードラゴン。次期に族長の座を任されるサンダードラゴン族最強の戦士だ」



リーシアが近づいて握手を求めると、予想とは裏腹に彼は素直に握手に応じてくれた。



「だが、我はお前たちの旅路に口出しも手出しもせん」


「ええ、それは分かっているわ。それくらい自分たちの力で乗り越えなくちゃ旅の意味がないわ」


「わかっているのならいい。それと先に言っておくが、我はあくまでこの鳥に負けたのであって断じてお前たち人間に負けたのではない」


「もちろんよ。いずれあなたにもリベンジするわ。だから、今は強くならないと。あいつの隣に立つためにも…!」



と、そこにやたら拘るサンダードラゴンことディケリが新垣達の旅についてくることになった。

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