再会
昼休みになると、朝に出会った少女の事などすっかり忘れていた。
拓といつものように一緒に昼飯を食べていた。
「なぁ安芸。帰りゲーセン行かね?」
昼休みに拓からゲーセンの誘いを受けた。
「新作ゲーム出たし、少しやりに行こうぜ。」
「いいよ。今日はバイト無いし。」
「よっしゃ!久々のゲーセン楽しみだなー。」
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放課後。
拓と合流して、下駄箱まで歩いた所で
「あ、ごめん。そういえば日直だった。日誌を職員室に届けてくるから、校門の前で待っててくれ!」
「あぁ、わかった。」
サンキューと拓は言って、駆け足で職員室に向かっていった。
俺は下駄箱から外履きに履き替えて、一足先に学校から出た。
校門の前で待っていても暇なので、グラウンドの方をボーっと見ていた。
「・・・ねぇ。」
「ん?」
声が聞こえた。
振り返ると、女の子が立っていた。
歳は同じくらいで、髪を少し茶髪に染めている今時の子だ。
制服は俺のと違うから、ここの学校の生徒じゃないとは思う。
「アナタ、佐伯・・・君よね?」
「え?あ、あぁ。そうだけど?」
あれ?何かデジャブが・・・
そういえば、朝も同じような事があったなー
というか、目の前にいる彼女は誰だっけ?
俺の名前を知ってるって事は、知り合いなんだよな?
色々と悩んでいると、彼女の方から声をかけてくれた。
「あぁ、やっぱり佐伯君か。久しぶりね。」
「え!?あ、あぁ。ひ、久しぶり!」
まだ俺は君の事を思い出せてないというのに・・・話が進んでしまった。
今更「君誰だっけ?」って言ったら怒られそうだから、話を合わせておこう。
挙動不審な動きを見せたから、目の前の女の子には怪訝そうな顔をされた。
「どうしたの?」
「い、いや。何でもない。それで?何か用?」
「何でもないならいいけど。佐伯君。最近彼女に会った?」
・・・え?彼女って?
「ごめん、質問が抽象的すぎてわからないんだけど。彼女って誰?」
「え・・・私が佐伯君に聞く子なんて、一人しかいないでしょ!彼女だよ、あーちゃん・・・夏目さんが来なかった・・・?」
そういって彼女は俯いてしまった。
あーちゃん・・・夏目さん・・・
夏目さんって確か・・・
「夏目さんって・・・小学生の時に転校しちゃったあの子?」
「そうよ。その子以外に誰かいる?」
「いや、いないけど・・・って待って、もしかして・・・」
そういうと、目の前の彼女がガバっと顔を上げた。
「え?もしかして、佐伯君の前に来たの??」
「いや、そうじゃないんだけどさ。」
俺の目の前にいる女の子。
この子ってもしかして・・・
「もしかして、綾瀬・・・さん?」
「・・・は?そうだけど。」
彼女は何をいまさら?っていう顔をしている。
「え?ちょっと待って。私の事気が付かないで話てたの??」
「ご、ごめん。でも気づかないだろ。だって6年も見なかったらわからないって。」
平謝りしつつ、懐かしい名前を聞いたな、と俺は心の中で思った。
夏目さんに綾瀬さん・・・か。
昔は一緒によく遊んだっけ。
「それで?なんで綾瀬さんは夏目さん探してるの?ってか夏目さんってこっちに来てるの?」
確か小学生の時に、遠くに引っ越したんじゃなかったけ?
「呼び捨てでいいし、タメでいいわ。あーちゃんは高1から東京に戻ってきたわよ。」
「え!?そうなのか?全然知らなかったわ・・・」
なんだ、帰ってきてたんだったら言ってくれればいいのに。
という事を思っていたら、綾瀬に睨まれた。怒っているかの様だった。
俺と目が合うと、すぐに顔を下げた。
「ここ1週間くらいなんだけど、あーちゃんと連絡が取れなくなったの。あーちゃんの通ってる学校の友達に聞いたんだけど、しばらく学校来てないのよ!」
「連絡取れなくなっただけなのに大げさな。風邪とかなんじゃないの?」
綾瀬は深刻そうな口調で話すから、何事かと思ったけど、少し拍子抜けしてしまった。
そういうと、綾瀬は肩をプルプルと震わせた。
「ア、アンタ・・・心配には思わないの!?」
「い、いや・・・そりゃ心配だけどさ。それだけじゃ何とも言えないし。そもそも俺らにどうする事も出来なくないか?」
綾瀬はもう一度俺の方を睨みつけてきた。今度は確実に怒っているのがわかる。
「・・・もういい。今日聞いた事は忘れて。じゃあね。」
「え?ちょ、ちょっと・・・」
俺の声を無視してそのまま歩いて行った。
「一体・・・何だっていうんだよ。」
久々に旧友に会ったというのに、あんなに怒りを向けられるとは思わなかった。
「おーい。ゴメンゴメン、待ったか?」
綾瀬がいなくなると同時に拓が校門から出てきた。
「いや、大丈夫だよ。行くか。」
「おう。」
そう言って、彼女が来たことを特に気にも留めず、俺は拓と遊びに出かけた。