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この世界は確かに愛で溢れていた。  作者: たま
第1章:再開、そして
11/12

登校

最近雨ばっかりだな。

梅雨入りしてからは、ジメジメとした日々が続いている。


早く梅雨明けして貰いたいが、その頃には期末試験の時期か。

夏休みに入るまでに嫌な行事が続くのは嫌だな、と思いながら欠伸をした。

俺の通っている学校は家から電車で一時間程度かかる。

いつもなら、通学中に誰かしら友人に遭遇するのだが、今日は珍しく友人に遭遇しなかった。


通学中に友人には遭遇しなかったが、その代わりに、見知らぬ女の子に後ろから声をかけられた。


「…っくん。」


ん?誰かに呼ばれた気がした。

俺は後ろを振り返った。


そこには女の子が立っていた。

傘で顔は見えなかったけど、とても綺麗な黒髪が印象的だった。

顔は見えなかったけど、口元は笑っていた。

この子は誰なんだろう?と思ったし、もう一つ気になることがあった。


まだ夏には早いけど、気温は30度を越える日は少なくない。

それに、雨が多い時期だというのに、何でこの女の子は、長袖のセーラー服とタイツを着ているのだろう?

(これって多分冬用の制服だよな?)


これで首もとにマフラーでもしていたら、季節は1月だと勘違いする人も出てきそうだ。

そんな服装にちょっと気になっていた。

いや、まぁそんなことよりも、この子が誰なのかが一番気になる。

どうやら、向こうは俺のことを知っているようだ。

だけど、俺はどんなに頭を捻っても、この子の事を思い出せなかった。

申し訳ないと思いつつも、俺は顔の見えない彼女に向かってこう聞いた。


「あの、えっと、すいません。

失礼ですけど、どちら様ですか?」


すると、彼女は一瞬笑顔を止めた。

でもすぐに、口元は笑顔に戻り、


「いえ、私の勘違いでした。

知っている方と間違えてしまったようです。

登校の途中ですよね。

止めてしまい、申し訳ありません。

それでは失礼いたします。」


そう言って、彼女は俺の元から去っていった。


「一体何だったんだろう?」


俺はそう思いつつも、特に深くは考えずに学校へと向かった。

そういえば、今日は後ろに注意しろって言われてたっけ。

さっきの出来事の事だったのかな。


「まずい、このままだと遅刻するかも!」

そう思って俺は急いで学校に向かった。



無事に学校に到着。

遅刻はしないで済んだので、ホッとした。

教室に入ると、友人は皆先に来ていた。


「おっす。なんだ、今日は遅いじゃんか。」

「はよーっす。まぁ、その色々合ってな。」


色々って何だよー、と言われたが、自分でもよくわかってないんだから、説明ができない。


「そういえば聞いてくれよ、安芸!

少し前に彼女と出会って一年が経ったんだよ!」


「おー、そうなんだ、よかったじゃん。

それで?記念に何処かデートに行ってきたとか?」


今俺に話しかけてる奴は、浅井拓。

高校に入って一番最初に出来た友達だ。


「それがさー、一周年記念に気合いの入ったデートプランを考えてたんだけどさ。

彼女の学校さ、藤女なんよ。

バリバリの進学校だから、この時期にも土日は学校の補講が毎回あるんだってさー。

だから、今年はデートどころか、会うこともままならないかもなー。」


藤峰女子高等学校。

ここら辺じゃ、一番頭の良いエリート学校だ。

進学率も恐ろしいレベルで高く、某国立大の合格率も高い事で有名だ。

なんで、そんな凄い所のお嬢さんと、こんな悪友が付き合える事になったのかは、未だに謎だ。


「まぁ、お互いに受験生なんだから仕方ないだろ。

それに来年からはお互いに大学生だし、遊ぶ時間はお互いに沢山取れるだろうから、それまで辛抱しな。」


そういって、悲しそうな顔をしている拓を見て苦笑いしながら応えてやった。


「それはそうなんだけどさ。

やっぱり辛いもんだよ、好きな人に中々会えないってのは。

そういえば、安芸は彼女とか作らないよな。

見てくれはそれなりに良いのに、何で?」


う、痛い事を言ってくるじゃねーか。


「まぁ、でもお前はヘタレだからなー。

彼女を作る以前に女の子と話すのも苦手だし」


少しムカつくけど、拓の言うとおりだ。

そもそも、どうやって女子と仲良くなれば良いのかさっぱりわからない。

キッカケも無いのに、話しかけたら「うわ、コイツきも」って思われそうで中々前に進めません、って拓に言ってみると、「それはお前の考えすぎだアホ。」って笑われた。


「それにそういう事を言う奴は、大抵の場合、キッカケが合っても話しかけないで終わるぞ。

でも、そうだな。

もし、好きな子がいたとする。

それで、その子に話すキッカケが無くて、困っている。

というときの攻略法を教えてやるよ。」


「え?そんなのあるんだったら、さっさと教えてくれよ。」


「それはな、もう何も考えずにバカになればいいんだよ。」


は?


「安芸はさ、幼稚園とか小学生の時とかは、普通に女子と話してたろ?」


「そりゃあ、普通に話しかけてたな。」


「その時は何か考えてたか?

もし嫌われたらどうしよう。

何を話せばいいんだろう。

とか、そんな事考えてたか?」


「いや、そんなこと全く考えてないわな。」


「そう、それなんだよ!

ようは別にキッカケが有るとか無いとかどうでも良いんだよ。

あの子と仲良くなりたい。ただそれだけで良いんだよ。

だから、仲良くなりたい女子がいるんなら、もう何も考えずに話しかけろ。

俺はそれで彼女をゲットしたんだぜ?」


なるほど。

経験者の言う事は深いな。

って、そんなのわかってても、絶対にできんわ!

要はただのナンパじゃねーか!


「まぁ、でも?

ヘタレな安芸君には、いきなりはハードルが高いかもしれないな。」


って思っていたのは、拓にバレバレだったみたいだ。


「まぁ実際にハードル高いと思うし、別にやる必要は無いよ。

もし、この子とマジで仲良くなりたい!って思ったときにどうすれば良いか悩むくらいなら、この事を思い出してくれ。」


そんな話をしていたら、授業開始の予鈴がなった。

彼女か。そんなのいつ出来ることやら、と思いながら俺は自分の席に着いて、一限目の授業の準備をした。


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