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この世界は確かに愛で溢れていた。  作者: たま
第1章:再開、そして
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6月15日:いつもの朝。

時々思うことはあったんだ。

人間って、どうしようも無い生き物だよな。


大した努力をした訳じゃないのに、何かに失敗したり、躓いたりした時に、


「あの時こうしていたら……」

「なんであんな事をしたのか……」


とか、過去の自分に苛立ったり、ムカついたりするだろ?

それで、出来ることなら過去に戻ってやり直したい……って大抵の人は思うよな。


だけどさ。

どんなに過去をやり直したところで、ゴールは結局同じなんだと思う。

だって、後悔するような選択をずっとしてきたのは、紛れもなく自分自身なんだから。

過去に戻ったとしても、結局は同じ選択をするんだろう。

いや、違うか。他の選択を選ばないんだろうな。


……ごめん、皆が同じ思いをしてるわけじゃないよな。

だから、人間っていうよりも、俺がどうしようも無い存在だったんだよ。


大事な選択を全て後回しにして、逃げていった自分が許せない。

自分では何もしないで、他の人に任せようとした自分が許せない。

その結果として、色々な人が不幸な目にあうなんて想像もしてなかったんだ。


それで、例えばの話だけど。

さっきの話に戻るんだけどさ。


もし、過去に行けるとしたら


過去に戻ってやり直せるとしたら、どうする?

今度こそは、後悔が無いように行動したいって思うよな。


俺だってそうしたさ。過去に行って後悔の無い選択をして来たんだ。

でもさ、結局は変わらないんだ。

救いたい女の子がいるのに、どうやっても救えないんだ。


……いや、そりゃそうだよな。

今まで俺は、後悔する選択しかしてこなかったんだ。

そんな奴がさ、過去に行ってもう一度行動出来ると言っても、結局後悔する選択しか取れないんだよ。


もし……もしも、過去をやり直せるとしたら。

もしも、あの子を本当に救いたいと思うのなら。


どうしようも無い俺自身が死ぬ必要があるんだと思う。

何も努力せず、逃げ続け、他の人に押し付けていった、どうしようも無い自分を殺さない限り、大切な事を一生見失い続けるだろう。


あの子の未来を今度こそ救うために、俺は……



6月15日

朝飯を食べ終わって、テレビの天気予報をダラダラと見ている所だ。

朝飯と言っても、昨日の夕方にタイムセールで安くなっていたクリームパンと牛乳だけ。


「今日の天気は、一日中雨が降り続くと思われます。」

「げ、今日は雨かよ……」


テレビのアナウンサーの声を聴きながら、俺は若干憂鬱になった。

ゴールデンウイークという楽しい長期休暇も終わり、6月は休みが無くて辛い。

さらに梅雨の時期にもなり、雨の日々が続いているのも憂鬱になる原因の一つだ。

今は高校三年生。受験シーズンの到来である。

周りの友人は塾や補講で勉強漬けの日々を送っている。

もちろん俺もだが。


7月になれば、待望の夏休みが始まる。

……と言っても、俺は夏休みの予定は特には無く、塾とバイトを往復する日々になるだろう。

高校最後の夏休みだというのに何とも味気無いな、と思って溜息をもらした。


「はぁ、せっかくの長期休みなのにな。しかも高校最後の夏休みだってのに。」


友達の中には「彼女と海に行く」だの「花火大会行ってくるわ」だのリア充トークをしてくる輩も少なくない。ってか多いかも……

べ、別に羨ましく無いし!高校最後の夏は勉強をするのが当たり前だし!

それに今後の一人暮らし用の資金だって集めていかないといけないからバイトもしていかなきゃだし!

だから、俺の夏休みだって、かなり充実してるし!


「……何て、強がってもしょうがないよなー。」


と、本日二度目の溜息。

溜息を吐いたと同時に、スマホが鳴った。

ラインにメッセージが来ていた。母親からだった。


「安芸君へ。

連絡忘れていました。今日は仕事で遅くなります。

お父さんも今日は遅いとの事です。

夕飯は一人で食べておいてください。ごめんね。」


母さんも父さんも大変だな。

父親はエンジニアとして、国内国外問わずバリバリに働いてる仕事人だ。

母親も父親の働いている会社で、事務などの裏方を担当している。


二人とも仕事で忙しいはずなのに、子供の頃から、大事に育ててもらったと思う。

仕事が忙しくても、授業参観や運動会など、家族が来てくれる行事には必ず参加してくれた。

土日休みには一緒に旅行やハイキング、釣りとかに連れていってくれたっけ。


高校生になってからは、親が海外出張が多くなったし、俺がバイトを始めた事もあり、そこまで家族と出かけたりする事は少なくなった。

最近は二人の仕事がとても忙しくなってきているようで、帰ってくる時間が深夜帯になる事も珍しくない。

二人とも好きな事をやっているので、応援はしているが、体だけは壊さないでほしいな、と思う。


両親の仕事が一段落ついたら、二人にプチ旅行でもプレゼントしてあげようかな。

高校一年の時から始めたバイトのおかげで、貯金はそこそこ溜まっている。

いつか行う一人暮らしのための資金ではあるけど、たまには親孝行もしておかないとな。


「さぁ、今日の占いランキング!」


いつも朝の占いを見てから学校に向かっている。

占いは別に信じてはいないのだが、上位のランキングに入ってくれれば、それなりに嬉しいものだから、個人的には好きだ。


「残念!今日の最下位はうお座の君!

いきなり呼び止められてしまい、注意不足でケガをするかも!

後ろには気をつけてね!

ラッキーアイテムは友達!

友達や恋人と仲良くしておけば、不調は全部取り除かれるハズだよ!

それじゃあ、今日も一日頑張ってね!」


ちぇ……最下位か。今日は友達と遊んでから帰るかな。

占いも見終えた事だし、そろそろ学校に行くか。


俺は学校用のバッグと傘を手にして、家を出た。

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