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女神の懇願

注:性的表現が含まれています。アウトかもしれませんので、閲覧には注意してください。

「夜伽巫女というのは、エンリゥ様にその美しさを見込まれ、エンリゥ様の夜伽を務める巫女のことです。表では皆名誉なことだと言うのですが、実際は美しい時分をエンリゥ様に縛られ、年老いたらすぐさま捨てられるこの巫女になりたがる女はあまりいません。妹にもすでに好きあっている男性がいて、来月には結婚する予定だったのですが……たまたま町に降りてきたエンリゥ様に見初められてしまって……こんなことに」

「なんですって! あいつ神様の権限使ってそんなことを! けしからん!!」


 やはり少し調子に乗っているようですね!

 と、薄幸な雰囲気を出し泣きくれる姉妹を見て、ナーブは義憤に憤った。

 だが、イシュルだけは憤った様子を見せない。


――一応同じ女性である女神なのだから、何らかの反応があってしかるべきだと思ったんですが?


 と、ナーブが内心首をかしげる中、イシュルはナーブの服の袖を引いてコソッと聞いてきた。


「ねぇ、夜伽って何?」

「―――――――――――――」


 瞬間、ナーブの内心に稲妻が走った!


「も、もちろん知っているわよ! で、でもほらね! 夜伽にもいろいろあるから、私の知っている夜伽じゃなかったらほら、お互い色々と会話が通じなくなっちゃうから、最低限の確認を……ね!」


 もう筒抜けすぎる言い訳をするイシュルを放置し、ナーブは必死に脳細胞を働かせ、なんかうまい答えを探した。

 どうやらこの女神、エアさまから生まれるにあたって、そういった性知識を一切与えられなかったらしいと、質問の内容から瞬時に悟ったからだ。

 だが、悟ったからと言って上手い答えが思い浮かぶわけではない。

 気分はさながら子供に性知識を教える親のそれ。


――おぉ、神よ。嫁すらいない私にこの試練はあんまり……って、こいつが神だったわ、ふぁっく!


 錯乱した内心でとりあえず罵りを吐き散らしながら、ナーブは必死に考えて考えて考えて考え抜いて!


「こ、子供をつくるための、し、神聖な行為なんですよ!」

「? 神様と人間との子供って、生まれないんじゃなかったかしら?」

「そういうことは知ってんのねッ!?」


 実際問題、神と人間の間に子供ができたという話はない。ソート様を代表として、神が神を生む話は多いのだが、神が人間に子供を産ませたという話しは、実は今の神話では存在していないのだ。

 つまり何が言いたいのかというと……。


「それって要するに無駄じゃない? 無駄な労力をエンリゥが支払っているだけじゃない?」

「そ、そうですけど! そうですけどっ!」


 とはいえ、ナーブも一人の男だ。エンリゥの行為は到底許せないが、男ってホント馬鹿ねという顔をするイシュルには、一言物申しておかないといけないのだ!


「たとえ無駄だったとしても、気持ちいいから、機会があればやっときたいっていうのが人間の(さが)ってモンなんですよ!」

「エンリゥは人間じゃないわよ?」

「ド正論で潰された! って、はっ!?」


 思わず叫んじゃったはいいが、姉妹からの視線が冷たくなっていることに気付くナーブ。

 慌てて咳払いをするが時すでに遅し。姉妹からの視線の温度は絶対零度に到達しつつあった。


「つまり、あなたたちはエンリゥのところに行きたくない。だからエンリゥに何とか諦めてほしいってことね?」

「そ、そうです! ですがあの方はこの町の守護神。機嫌を損ねられては町の運営に支障が出ます。ですから、女神イシュル様にどうか仲立ちをお願いしていただき――」

「なら簡単ね!」

「え?」


 女神を名乗る存在なら、その権威でエンリゥを説得できるかもしれないと、姉妹は思っていたのだろう。

 がっくりうなだれるナーブを無視し、とにかく交渉の場につかせてくれと、姉妹はイシュルに頼もうとした。が、


「私が代わりに行ってあげるわよっ!」

「「えっ!?」」


 割ととんでもない提案を先にされた!


「で、ですがイシュル様はその……」

「夜伽でしょう夜伽。要は子づくりでしょう! お父様はひとりで私を生んだんだから、二人がかりなら苦労しないわ」

「あ、いえ……イシュル様。た、多分エンリゥはそれが目的では」


 話が不味い方向に飛んで行っていると悟ったナーブが慌てて止めようとするが、姉妹たちにとって、それはたらされた蜘蛛の糸だ。

 なによりイシュルは自分たちよりもはるかに器量がいい。代わりに彼女が行ってくれるなら、エンリゥとの交渉などという危ないことをする必要もなくなる。そんな打算も働いたのだろう。


 ナーブの言葉をさえぎるように、姉がイシュルに問いを発した。


「ほ、本当によろしいのですかっ!?」

「女神に二言はないわ!」

「あぁ…………」


 いっちゃった……。と、ナーブがため息をつく中「それではよろしくお願いします!」と、姉妹は何度も頭を下げ、そそくさとその場から離れて行った。


 今度からはあの怒りんぼに気を付けるのよ~。と、お気楽に姉妹の背中を見送るイシュルに、もう誤魔化してはいられないと悟ったナーブは話し掛ける。


「あの、イシュル様」

「ナーブ! さぁ、さっさとあいつのところに行ってリベンジよ! 子づくりすることになっちゃったけど、そっちはまぁ難しくないでしょう。父さんが私を生んだ時のことを思い出す限り、私とあいつの神気で一人新しい神を造るだけだから、そんなに手間は掛かんないでしょうし!」

「あぁ、神様ってそうやって生まれるんですね。って、そうじゃなくて……そのですね」

「ん?」

「夜伽というのは、その単純な子供をつくる行為というよりかは……ごにょごにょごにょ」

「え? なに。痛いの? 棒を、穴に? え、あんた達棒なんて生えているの? え、それを女の穴に? うそよ、そんなにおっきい穴なんて開いて……えひろがる? うそでしょ? え、ちょ、ま、まって? うそ? ほんとなの? それしないと? え、え? えぇえええええええええええええええええええ!?」


 顔を真っ赤にしたナーブの教育を受け、イシュルはようやく自分がしでかした失敗を悟った。

 しかし、すでにあとの祭り。神の契約は絶対である。

 自分たちの下につく人間に対して、口に出して違えぬと約束した以上、神からその契約を反故にすることはかなわないのだ。



…†…†…………†…†…



 夜。ちょっと考えさせて。というイシュルのお願いを聞き入れ、ナーブ達は一晩だけ、森の開けた場所で野営をすることとなった。

 たき火の調節を行う中ナーブは、布と縄で作った天幕の中、ひとりの美女がもだえているのを眺める。


「あぁ、私のバカ! 痛いってどのくらい痛いの? うぅ、今からでもあの姉妹を見つけて……。でも、神と人間の契約を反故にするなんて、いよいよ女神の権威が……」


 すでに守らなくてはならない権威が崖っぷちなのは理解していたらしい。

 淑女らしからぬうなり声と、向うの明かりに照らされ天幕に映った影が、ドッタンバッタンもだえる姿をながめながら、ナーブは静かにため息をついた。


「まぁ、今回ばかりは多少可哀そうではあるけどね……」


 神々の性行為に関しては、実はそんなにわかっていない。ただ、よく人間と変わらぬ姿で現れることや、美女に弱い雄神が多いことから、一応性的快楽を得る手段はあるのではと昔から言われていた。

 

 とは言え今回はことがことである。性行為そのものをしらなかったイシュルは当然処女だろうし、相手は人間とは言え無数の女性を毎日抱いている性豪だ。


――よくてぼろ雑巾。悪くて廃人路線一直線かもしれぬ。


 と、ナーブは天幕でもだえるイシュルに同情の視線を送る。

 だがしかし、神の契約は絶対。それはナーブには破ること叶わぬ力に守られたものだ。

 だからこそ、彼はイシュルの気持ちの整理がつくまでゆっくり待ち、彼女が自分から行くと言い出すまで、気長に待つつもりだった。


 そう……待つつもりだった。



…†…†…………†…†…



 夜。さすがに眠くなって、ナーブが寝付いた頃だ。

 突然体に何かがのしかかる感触を覚え、ナーブが目を覚ます。

 妙に明るいなと思ったら、彼が消したはずのたき火に火がついており、残り火でゆっくり焚いていた猛獣避けの香が濛々と煙を上げていた。


「あれ? 風でも吹いて再着火したか?」


 って、そんなわけがない。彼は一応バビロニオンの各地を歩き、神々の神話を収集編纂する旅人である。そのようなヘマをするわけがない。

 つまり、誰かがたき火を再着火したということ。そんなことができるのは、


「イシュル様? なんですか?」


 眠気のあまりしょぼつかせた目をこすりながら、ナーブはようやく半泣きになって自分にのしかかってくる女神――イシュルへと視線を合わせた。


「うぅ、寝といてくれればよかったのに……」

「だとしても、もうちょっと遅くにしてくれません。あんな寝てすぐにのしかかられたらそりゃおき……ま、す」


 そこでナーブはようやく気付いた。

 イシュルがナーブから奪った服ともども、もともと着ていた服すら脱ぎ捨て、あられもない姿で自分の上にいるのを。


「ちょ、い、イシュル様!? なにを!?」

「わ、私考えたの!」

「は、はい!」

「もう契約しちゃったから、これはどうしようもないかなって!」

「あ、意外と割り切り速かったですね。これから姉妹探しに行くとかおっしゃられるかと」

「う、うっさい! 新米だからってね、守らなきゃならない一線があることくらい、なんとなく知ってるわよ!」

「え?」


――旅人から服をひん剥いたり、突然の空中旅行で魂半ば抜け出させるのは、守らなきゃならない一線じゃないんですか?


 状況を忘れ真剣にツッコミを入れようかどうか悩むナーブをしり目に、イシュルは顔を赤らめたまま彼の服の襟に手をかけた。


「え、ちょ!? い、イシュル様、だめ! や、やめてっ!?」

「でも私としてはどうしても我慢ならないことがあるわ!」

「いいから手を離せ!?」

「それはね、わたしがしょ、しょ……しょ?」

「処女ナッ!」

「そう! その処女ってあの髭エロ親父に馬鹿にされることよっ!」

「どうでもいいでしょそんなこと! いいから手ぇ離せよっ!?」

「どうでもよくないわよっ!」


 必死の抵抗を続けるナーブだが、やはり女神の膂力には逆らえない、あっという間に半裸の状態まで服を剥かれ、いよいよまずいと焦るがイシュルの拘束は外れない。


「このまま奴の神殿に向かったら、奴は間違いなくこういうわ! 『ほほぅ。彼の偉大なる天の女主人様が、わたくしめのような矮小な雄神風情に体を開かれるとは。とはいえ処女とはね! ぷぷっ、虫のような私が思いますに、処女が許されるのは十六歳までだよね!』」

「割とへりくだりますね」

「私と夜伽するんだから、このくらい当然でしょう?」

「うわ、絶対言わないわ。賭けてもいいわ」

「なんでよっ!?」


 一瞬いつもの真顔に戻った二人だったが、その隙に逃げようとしたナーブをイシュルはガッツリとらえて逃がさない。


 ちなみに、この時代の結婚適齢期は十六歳前後である。母体は非常に危険にさらされるが、べつにこの時代の人間は出産が絡まなくても割と短命なので、仕方ない処置ともいえた。


「というわけで、第一信者ナーブにお願いがあります!」

「内容は何となくわかるけど、言ったら信者やめます!」

「私の処女をもらいなさい!」

「いやだぁああああああああああああああ!?」

「ちょ、なんでそんなに嫌がんのよっ!? こんな美女と夜伽できるとか寧ろ光栄でしょ!」

「俺は好きな子に童貞捧げるつもりなんだぁああああああ!」

「好きな子いるの!?」

「まだいないけど! 旅ばかりだったから特定の女とそういう関係になったことないけど!」

「じゃぁ良いでしょう!」

「よくねぇええええ! こ、こんな行きずりの関係みたいなのは嫌――」

「えぇい! うるさいわねッ!! じゃぁ、これでいいでしょう!!」


 瞬間、イシュルの口がナーブの口を塞いだ。

 驚きのあまり固まるナーブに、勢いよく口をぶつけすぎて、ちょっと切ってしまったのか……イシュルは口元から血を流れる血を掌で拭いながら妖艶に笑った。


「女神イシュルの名において誓います。ナーブ。私はあなたを、我が存在が砕け散るまで、大切にするわ」

「……なっ!?」

「ほら。女神と人間の誓いよ? 絶対破れない誓いよ?」


 おおよそ、バビロニオンの歴史をどれだけ下っても存在しない、不朽の神による永遠の愛の誓いに、ナーブは凍りつき、


「あ、あんた……ほんとに女神さまかよ」

「う、うるさい! とにかく、ハイかイイエで答えなさいよ! ここまでしてやったこの私と、やるの! やらないのっ!?」

「……………………………」


 当然のごとく、ここまでされてやらないという選択肢は取れず……。


「もう、好きにしてくれ」


 いろいろ諦めたナーブは抵抗をやめ、ぐったりとその場に身を投げ出した。



…†…†…………†…†…



《見せられないよっ!:ここからは音声のみでお送りいたします》


 ふふふっ! ようやく諦めたわね、このおたんこなす! って、いたっ!? 調子に乗んなってこっちの台詞なんですけど!

 で、どれが棒よって……これ? あんた昨日見たのとだいぶ違うわよ? というかおおきく……。って、こら暴れるな! やっぱり見ていたかって、服脱がせるときに見えちゃったんだから仕方ないでしょ! 『くっ! いっそ殺せ!!』って、なに!? そんなに恥ずかしかったの!?

 生理現象だから仕方ないって誰に言い訳してんのよ!?

 とにかくこれ入れるんでしょう。どこに?

 だからどこよ! 私からは見えないんだからちゃんと説明――ひゃっ!? どこ触ってんのよ、バカっ!?


 あぁ、強く叩きすぎた!? ちょっと、あんた魂が口から抜け出過ぎよ! 癖になったんじゃないの!? 誰のせいだって、私のせいじゃないわよ! ないわよね?


 と、とにかくここね! ここに入れればいいのね!?

 ………………。わかってる! わかってるから、ちょっと待ちなさい 心の準備ってものが!

 ひゃっ!?


《中略》


 こんの! こんのバカっ! 痛いじゃないの! 普通に痛いじゃないの! そんなの俺に言われても困るって、初めに入れたのアンタでしょうがバカっ!


 とにかく動かないで! 慣れるまで絶対動かないで!! あとギュッとして!


《中略》


 はぁ、はぁ、はぁ……あ、案外悪くないわ。


《中略》


 なによもうへばったの? まだまだこれからでしょう! ふふふっ! さっきまであった余裕はどこに行ったの?

 ほら、もっと頑張って振りなさいよっ!!

 もう無理? 限界? おばかっ! 誰を抱いていると思っているの!! この女神イシュル様を抱ける機会なんて、そうないはずなんだからね!



…†…†…………†…†…



「R18パッチがいい仕事しましたね」

「どこかで見たようなキャラクターが看板出していただけだったが……これ大丈夫なのか?」

「最近の深夜アニメは、過激なシーンが光やら何やらで隠される場合が多いですからね。十五歳パッチは外れているので、このくらいが妥当ではないかと?」

「そんなもんかね……あと、お前はいつまで泣いてんだよ」

「なんで……なんで18パッチ外しておかなかったんだよぉおおおおお!!」

「18歳じゃないからだよ!」

「ちなみにプレイヤーの任意で年齢制限パッチ外すことは無理ですよ? 外したいなら、新しいハード買って、違うアカウントで生年月日再登録してくださいね?」

「ちくしょぉおおおおおおおおおお!」



…†…†…………†…†…



 翌朝。

 寝不足で目に隈を作ったナーブをしり目に、なぜか肌艶がさらによくなったイシュルが、元気よく朝日に向かって伸びをした。


「お父様。おはようございます。イシュル……女になりました!」

「やめてください。祟り食らいそうなんで……」

「へへへっ! で、最後は絞られるだけだった私の大事な信者一号は、案外たいしたことなかったです」

「初めてだっていっただろうがちくしょぉおおおおお!!」


 いろんな意味で男のプライドを砕かれたナーブが滂沱の涙を流す中、イシュルは背後を振り返り、エアがつかさどる太陽に背を向けた。そして、


「それじゃいくわよ、ナーブ」

「はいはい、良しなに。……ほんとにいいんですか?」

「くどい!」


 太陽に向かい合うようにそびえたつ神殿都市へと、胸を張った。


「女神に二言はないわ!」


 まるで誰かに勇気をもらったかのように、女神イシュルは意気揚々と、神殿都市へとカチコミをかけた!


アウト? セーフ? いや、でもイシュルとこの話って切り離せないしな……。直接的表現は避けたしたぶん大丈夫? 境ホラでもこのくらいやっていたし?


セーフだよね? セーフだといってよっ!?


あ、アウトなら運営に審査お願いしてください。俺もちょっと判断つかないので……。

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