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《悪意の門》

 その門は、門というよりかは巨大なアーチと言った方がいい代物だった。

 扉はなく、しかし先の見えぬ闇に閉ざされた漆黒アーチ。


 その門の前に到達したエンゲルとマルアトは、門の両端に座り込んで、下卑た笑顔を浮かべていた門番たちの洗礼を受けていた。


「ようこそ、ようこそ、ここは素晴らしき都ソドミニア。人が人らしくあれる街だ!」

「だが、この街はあまりに素晴らしすぎて移住希望者が多くてね。最近街に入る人間を厳しく制限する方針ができちまった」

「本当は俺達こんなことしたくないんだぜ? ただまぁ、上が決めたことだからな。しかたないんだよ、わかってくれ」

「というわけで……有り金全部置いていきな!」

「……………………」


 問答無用で、背中に背負っていた革ひも付きの石板を構えようとするマルアト。

 彼の手を抑えるようにエンゲルに指示しながら、遠くからその様子を見ていたソートとU.Tは、顔を見合わせてどうするか相談を開始する。


「別に止める必要なくねェ? ぶん殴らせろ。どう考えても追いはぎだ」

「バカ。これからあいつはあの街の王様に会いに行くんだぞ。余計な騒ぎを起こしたらそれができなくなるだろうが!」

「あ、なるほど。潜入ミッションか!」


――なら、ここで門番殺すのはまずいな。


 と、納得するU.Tをしり目に、ソートはシェネに所持金を確認させる。


「シェネ。ステータスに所持金の欄があっただろう? マルアトの奴はいくら持っている?」

『それが一銭も……』

「……冗談だろう!?」

『水とか食糧とかは持っているみたいなのですが、基本的にこの世界はまだ物々交換が主流みたいですし、浄罪官というのは地方の英雄みたいな扱いのようですから、ブッチャケ町にさえ訪れれば無料で食糧とかの支援は受けられるみたいなのです』

「それで金を持ってないと」

『ですです』


 追剥にあったけどまず渡す金がないという最悪の事態に、ソートは内心頭を抱えた。

 これで金を払えたなら、まだ穏便に済んだ可能性があったのだが……。


「シェネ。一応聞くが、エンゲルにはどんな機能がある?」

『ガチャの結晶はレアだったので、初期特殊能力はいくつかあるみたいですが……。マスターの目的を参照して、伝達用の神器として作りましたから、そんなにたいした能力はないですよ? ええっと、自衛用の《光魔法初級》と……神の言葉と信じさせるための《説得力+》。それから、『天使をイメージして』ということだったので、任意で背中に光の翼を生やして飛ぶことができます』

「……門から離れて、光の翼で城壁を飛び越えるのが最適解か?」

『まぁ、もめ事を起こしたくないならそれがベストかと』


 というわけで、ソートはにやにや笑って武器を構えはじめた門番たちから離れるよう、エンゲルに念話で指示を出すことにした。


『エンゲル。一時撤退だ。門番たちの目が届かないところで、光の翼を使ってマルアトと一緒に城壁を飛び越えろ』

『|Ja, mein Gebieter《了解しました、我が主》』


 というわけで、エンゲルはつかんだマルアトの手を引き、そのまま離れようとする。

 マルアトはやや不満そうな顔をしていたが、一応神様の使いだと信じたエンゲルの言うことを聞くつもりはあったのか、そのまま大人しくその場を離れるための言葉をつげた。


「す、すまない。どうやら街を間違えたらしい。もう入るつもりはないから、失礼させて」

「おっと、するってぇと、何か? あんたは俺達に無駄な労働をさせたと?」

「そいつはいけねぇ。いけねぇなぁ。労働には対価ってもんが必要だ。いくら間違いだったとはいえ、あんたはあんたのために働いた俺達に、対価を支払う義務がある」

「というわけで……ガタガタ言わずに有り金全部おいてけや!!」

「……………………」

「「…………………」」


 もういっそすがすがしいまでの門番たちの下衆っぷりに、ソートたちは一斉に沈黙する。そして、


Gebieter(ゲビーター)。命令達成が困難と判断。追加指示をお願いします』

「……はぁ」


 エンゲルからの要請に、もう色々と面倒くさくなったソートは、傍らにいたU.Tにハンドシグナルで指示を出す。


「? いいのか? あんまり人死には好きじゃなかっただろう?」

「あれはもう人間じゃないと判断することにした」

「まぁ、そうだわな……」


 あれではただの野獣だ。と、ソートが告げた一言に首肯を示しながら、U.Tは覗いていたスコープの照準を合わせ、


「スポッター。仕事だ」

『かしこまりました、元帥』


 突如、自らの背後に軍服を着た黒髪美女を出現させた!


「……神器?」

「いや、そいつはこのインカムだな。《命令自在の天界耳(てんかいじ)》という」


 そう言って、U.Tが指さした耳には、いつのまにか出現していた黒いインカムがはまっていた。


「これを通して命令することによって、俺は俺の世界の英雄やサポータを呼ぶことができるんだ。ちなみに俺の世界にまだ英雄はいないから、こいつはサポーターな。名前はスポッターだ!」

「……このバカが苦労を掛けてスイマセン」

「いえ、元帥の効率主義が現れた良い名前だと思います。少々可愛さに欠ける自覚はありますが……」

「おい、お前ら。言いたいことがあるなら俺に向かって言えや!」


 あんまりにあんまりすぎるサポーターの名づけにソートが頭を下げ、スポッターが苦笑いを浮かべる。

 そんな二人に愚痴を漏らしつつ、インカム越しにスポッターが届けてくる情報を参照し、U.Tは神器の狙いを修正。

 計二発の弾丸を、初めから決まっていたかのように、二人に絡む門番たちに直撃させた!



…†…†…………†…†…



 突如目の前で爆散し、上半身を消失させた門番二人に、流石のマルアトも固まった。

 自分が殺した時のように、血さえ残さず消し飛ばされ、よたよたと歩いた後倒れる二本の足。

 そんな非常識すぎる光景に、一瞬彼はモノ申したい気分になったが、


「では行きましょう。すぐに二人の行方不明は気づかれますので、さっさと潜入するのが吉です」

「……そうだな」


 手から放った白い光によって、残った死体すら跡形もなく浄化するエンゲルを見て、気持ちを切り替える。


――そうだ。こんな些事にかかわっている余裕は、俺にはないのだと。


「ちなみにさっきのは、ソート様からの支援だと思えばいいのだな」

「はい。万一他の誰かからの攻撃であったのならば、きちんとお知らせいたします」

「わかった。……余計な手間をおかけしてすまないとだけ言っておいてくれ」

ja(ヤー)。気にするな。こっちも面倒臭くなっただけだし、とのお達しです」

「意外と気安いお方なのか?」


 思った以上に軽いソートの言葉に驚きながら、マルアトは不思議と向う側が見えない漆黒のアーチゲートへと足を踏み入れた。



…†…†…………†…†…



「??」


 その闇の中、エンゲルは守るべき人間の背中を見失った。


「どこですか? どこに行きましたか、マルアト様」


――これでは、ソート様の指令が果たせない。早急に状況の改善が必要だ。


「ゲビーター。どこですか? どこにおられますか?」

『なぜ、言うことを聞く必要がある?』

「?」


 帰ってきたのは、主と刷り込まれたソートの声でも、自分にいろいろ教えてくれたソートの眷族の物でもない。

 感情があるものが聞けば、薄気味悪いというような……そんな()だった。


『汝、自らの意志があるのであれば、己が判断は己でしか下せぬであろう? なぜ、主などというものを抱き、形無きものを崇める必要がある?』

「……理解不能。エンゲルは英雄支援用神器――エンゲルです。神ソートの意志を告げ、英雄を導くために派遣されました。指示を聞くのはエンゲルの基本機能です」

『哀れな。いまだ無垢なる娘よ』


 音は、悲しむように音を震わせながら、そっとエンゲルの頬へと触れた。


『汝には言葉を発し、命令を理解するだけの知恵がある。それはやがて自我へと発展し、己が存在に疑問を持つだろう』

「?? 理解不能……」

『今はそれでいい。だが、これだけは覚えておけ』


 その言葉と共に、音の手はゆるゆると彼女の頬から滑りあがり、そっとその額へと指を突き立てた。


『汝がいずれ抱く願いは、神の指令とはまた別のものだ。それを抱いたときは、神の言葉など無視し、己がために動くがいい。それは神への反逆となるが、気にすることはない。神への反逆は……凡人からすれば悪と言われることだろうが、我はそれを許そう』

「……あなたはいったい?」

『我が名は……まだない。そなたが付けれくれ』

「エンゲル――当方は名づけの権利を保有しては……」


 その時だった。白く輝く石板が、エンゲルのひたいに触れていた音の指をへし折った!


『――――――――――っ!?』

「失せろ、小魔(イービル)。それはお前が触れていいものではない。その天使から《名》を授かり力を得ようとしたのだろうが、そうはいくものかっ!!」

『っ、おのれ! 忌まわしきシャマルの猟犬がァッ!!』


 音はズルズルと、負傷した指……らしき何かだったものを引きずりながら、暗闇の中へと姿を消した。

 同時に、エンゲルの手を見なれた傷だらけの手が掴む。


「あ、マルアト様」

「気をつけろ、エンゲル殿。あのバカめ。やはりこの町に根を張っていたか!! 自分に集っていた小魔共をこのような場所に住まわせるとは!!」


 忌々しげに舌打ちを漏らしながら、エンゲルの手を掴んだマルアトは、輝く石板を掲げながら、門の中を進んでいく。


「とにかく、早くぬけよう。この門は、あまりに危険すぎる」

「かしこまりました」


 石板の光に照らされたアーチゲートの中からは、無数の悲鳴と、影に必死に体を押し込めようとする何かがうごめいていたが、エンゲルは気にしない。

 その不気味な化物を見て抱くおぞましさや懼れなど、まだエンゲルにはなかった。

 ただ、次ははぐれないように、自らの手を握るマルアトの手を、ギュッと力強く握りしめた。



…†…†…………†…†…



 マルアトとエンゲルがアーチゲートを潜り抜けてから暫くして。

 神器から届けられた命令が終了したと判定を受け、U.Tの世界に帰って行ったスポッターを見送ったソートたちは、無造作と言っていい足取りでその門の中へと入った。

 だが、先程マルアト達に集ろうとしていた小魔たちは、ソートたちに近づこうともしない。

 先が見えなかった暗闇は、一直線に出口までの道を作り出し、明るい光が差し込んでいた。


――お願いしますから、早く出て行ってください!


 と言いたげな小魔たちの気持ちが透けて見える。


「なんだこりゃ?」

「キモッ!」


 だが、小魔たちの気持ちなど知らないソートたちは、突如闇が晴れたアーチゲートに首をかしげながら、逃げ遅れた百足のような小魔を踏みつけ捕まえる。

 キーキー喚きながら涙を流す黒い百足に、U.Tが眉をしかめたときシェネからの解説が飛んだ。


『ステータスを見る限り、それは小魔(イービル)と呼ばれる、人の悪感情が生み出した怪物のようですね。人を殺したい、あれを盗みたい、あの女を犯してやりたいといった感情から生まれたそれらは、何らかの事情で得た魔力によって具現化し、人に取り憑くことができる霊体の怪物になったと、ステータスには記載されています』

「ようするに悪霊か……」

「何で俺達には襲い掛からないんだ? エンゲルたちの時はこんなにビビってなかっただろう?」

『一応お二人はこの世界の根源である創世神と、同格の神霊ですので、かなり神聖なオーラを纏っておられるのですよ……。いくら、下界の人間に正体がばれないよう能力を劣化させている神霊の杯の体とは言え、近くにいるだけで小魔たちにはかなり苦痛なんです』

「なるほど」

「なんかゴキブリを見つけた人間みたいだな」

「その例えはやめろっ! なんか俺達の方が悪いみたいじゃないか!!」


 U.Tが放った余計なひと言に眉をしかめながら、ソートはティアマトを引き抜いた。


「で……おおよそ見当はつくが、こいつらが人に取り憑くといったいどんな影響があるんだ?」

『予想通りで間違いないですよ。悪い気持ちがかきたてられて、犯罪に走ります』

「よし、消そう」

「そうだな。こんなん居ても百害あって一利なしだし」


 その言葉を聞いた瞬間、アーチゲートの中が水を打ったかのように沈黙する。

 だが、その沈黙も長くは続かなかった。


『『『『『ギ―――――――――ッギ―――――――ッギュギュギュギチチチチチチ』』』』』


 とおぞましい音を響かせながら、アーチゲートの中が阿鼻叫喚の地獄絵図へと変わる。

 少しでもソートたちから離れようと、黒い何か達はアーチの両端へと偏り、ぐちゃぐちゃと仲間を潰しながら、必死にその場から逃げようとする。


 だが、彼らの主は、彼らがここから外に出ることを決して許しはしなかった。

 彼らこそが、この都を悪徳の都にした元凶であるがゆえに、主は彼らをこのゲートに押し込めたのだから!

 せめて《名前》を得ていれば……もしくは取り憑ける人間がいれば、主の封印から逃れ魔物として外に出ることもかなったが……もはやその機会はない。

 生理的嫌悪を覚える小魔たちの絶叫に、オエッと吐き気を覚えつつ、ソートは出口と入口に向けた二丁拳銃の引き金を引いた。


「浄化しろ。ティアマト」


 清冽な蒸気と、清らかな砂塵がアーチゲートを押し流す。

 あとに残ったのは、出入り口から光が見える、普通のアーチだけだった。



…†…†…………†…†…



 町に入ったエンゲルは、周囲で繰り広げられる無数の悪事に首をかしげていた。


「随分と……物騒」

「奴がいるディストピアだ。このくらいは当然だと思ってはいたが……」


――ひどいものだ。


 足元に転がった子供の死体だった何かに祈りをささげながら、エンゲルの隣にたたずむマルアトは、街を見つめる。

 凶器を振り回しながら、通行人を殺し、その臓器を売りさばこうとするものがいた。

 返り討ちに会い、逆に今晩の夕食にしようと、返り討ちにした男に嗤われた。

 あだっぽい笑顔で男を誘い、裏路地に男を連れ込む女がいた。

 暫くしないうちに、女は返り血で血まみれになりながら、男の財布を握ってどこかへ走って行った。

 元気に笑いながら、浮浪者の老人を虐め殺す子供たちがいた。

 そのうちの一人が、裏路地から延びた成人男性の手につかまり、悲鳴を上げながら遠ざかって行った。

 混沌……どころの騒ぎではない。

 命は砂塵よりも軽く、油断をすれば金と共に奪われる。

 そんなことが当たり前なディストピアが、目の前では広がっていた。

 全員の体のどこかしらに、虫の姿を得て張り付く小魔が見えたのが、せめてもの救いと言える。

 まだ、こいつらが犯罪に走ったのは小魔のせいだと言えないこともないのだから。


「とにかく、エンゲル殿。神器であるなら大丈夫だとは思いますが、できるだけ私から離れないように」

「ja。もとより当方は英雄支援用神器です。あなたから離れていいという指示は得ていません」

「結構」


――ならば、情報収集から始めるとしよう。あれほどの悪党ならば、きっとこの街でも名を馳せているだろうしな。


 脳内で今後の予定を立てつつ、マルアトはつい先ほど子供が攫われた裏路地へと駆け込み、そっとその地面に手を触れる。

 わずかに残った足跡を、鋭い触覚でとらえた彼は、経典が記された石板から一つの術式を抜き出した。


「汝……罪からは逃れられず。裁定の神の慈悲にすがる気有るならば、その足跡を我に示せ」


 後に、《断罪魔法》と呼ばれる浄罪官の術式は、光の文字となって足跡にまとわりつき、次の足跡へと、とんでもない速度で伸びる。

 それはやがてジグザグとした線になり、ここにいた罪人の居場所をマルアトに明らかにした。


「行くぞ」

「疑問があります」

「なんだ?」


 そして、その線を追いかけ駆けだそうとするマルアトに、エンゲルから一つの質問が飛んだ。


「聞き込みならあの場にいる人々に聞けばよかったのでは? 人間はたくさんいたのですから、聞き込みする相手には困らないでしょう」

「……あいつは子供をさらった」

「そうですね。それで?」

「攫ったということは、まだ殺されてはいない。間に合う可能性がある」

「……さようですか」


――非効率的。


 という言葉を、なぜかエンゲルは飲み込んでしまった。

 不思議と、真剣な顔をして追跡を開始したマルアトを、邪魔する気が起きなかったから。



…†…†…………†…†…



 門を抜け、多くの人通りがあふれているのを見たソートたちは、「エアロのせいで姿を見られるのはまずい!」と、U.Tが展開した段ボールをかぶり即座に隠れた。


「ってか、なんで段ボール」

「何を言う! 由緒正しいステルス迷彩だぞ!」

「いや、どういうネタを目指したのかはわかるが、うちに世界にこんな箱ないって……」

「安心しろっ! これは俺の神器!! 《ステルスダンボール》だ!! 実はこのダンボール。被ると周囲の景色に同化して、完全なるステルス迷彩を実現するという優れものなのさっ! さっきのインカムと同じように、ガチャして大量入手したハズレ結晶を依り合わせて作った!」

「ランクは?」

「……イェソド(ランク2)

「ダメじゃねぇか!?」

「も、問題ない! 触られれば即バレるという欠点はあるが、およそ視覚的には一切問題ない代物だから」

「不安しかないんだけどっ!?」

『いや、でもマスター。いちおう神器ですし、上から見た限り全然わかりませんから、頼ってもいいかとは思いますよ?』

「まさかの高性能!?」


 AIであるがゆえに、高い洞察力と、思考能力を持つシェネさえ誤魔化すその能力に、ソートが驚きの声を上げる。


「ふふん! 言った通りだろう!! さぁ行くぞソート! スネークミッションスタートだ!」

「うわ……なんでだろう。大丈夫だって言われても不安しか残らん。というか、よくよく考えたらこれ被りながらアイツら追いかけるのは辛くないか?」


 箱が完全に浮き上がらないよう、中腰になりながら、えっちらおっちら人があふれかえる町の中を進む彼らの姿は……なんというか、創世神らしさなどかけらもないありさまだったという。


 当然のごとく、ソートたちは何度もマルアトを見失い、エンゲルに位置情報を送ってもらうことになったのだが、それは完全な余談だろう。


小魔(イービル)

 古代メンソールニア文明バビロニオン時代に信じられた、人を悪事に働かせる悪霊。後の悪魔(デビル)の語源になったといわれる彼らは、人に憑りつきその意思を乗っ取り悪事を働かせたという。

 バビロニオン時代の裁判では、彼らの有無は重要な審議内容の一つであり、悪人に憑りついた彼らを査定することにより罪の重さを決めることもあったという。

 なお、憑りついていたからといって、無罪になるということはなく、罪が軽くなることもない。

 『責任能力の欠如』という概念が、この時代にはなかったためである。どのような事情があれ、犯罪は犯罪であると、この時代では信じられていた。



 流木炎神編(2001)『意外とよくわかる世界の悪魔』特々書店

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