リビングデッド
《神器神》リィラ
レア度:☆3(R)
神属性:冶金神
コスト:8
属性:秩序・善
声優:逢坂アイラ
イラスト:卵かけ食パン
ステータス
筋力B 耐久D 敏捷E- 魔力A+ 幸運B 神判C
保有権能
原初の鍛造:すべての冶金神が持つ《鍛造》の上位スキル。鍛造という概念を一から作り上げ生み出したものの証。虚空から武器を生み出し、手に持った武器のランクを2ランク上昇させることができる。ただし使いこなせるとは言ってない。
神火の担い手EX:神剣を鍛造する際、天空神から与えられた天の炎がスキル化したもの。天の炎=太陽光によって武器の鍛造が可能となり、日が出ている間だけ0コストで武器の鍛造が可能となる。
死体愛好家-:彼女の夫であったといわれるシャマルが死体であったという俗説からつけられてしまった不名誉スキル。別に本当に死体が好きなわけではない。タダ死体であったとしてもシャマルは愛していますよ~という証明をするだけのもの。死体属性を持つ個体に対する攻撃力微減少。
神判解放:《愛示す陽光の剣》
詠唱「日の光よ、天の炎よ。我が愛の結晶、我が傑作……我が根源をここに」
冶金神リィラが太陽の光を用いて鍛造したといわれる、最高傑作ウトゥルアを概念的に呼び出し莫大な量の光に変換。その力を味方全体に与える権能。
冶金系《守護神霊》としては異例の戦闘能力を持つ彼女だが、何故か神判権能はアシスト系になってしまった……。どちらかというと、神判権能よりも通常スキルの方が脅威度が高く、本人はその状況に不満を覚えているとか……。
「私の最高傑作よりも、雑多な神剣、雨のように降り注がれる方が怖いとぬかすかっ!」byリィラ
効力としては筋力値1ランク上昇と、対悪性特攻を光を浴びた存在に付与する。
彼女を《守護神霊》として運用するならば、開幕でこの神判権能を付与してもらい、即席鍛造による神器豪雨に援護してもらい、主人が殴りに行くというスタイルがベストだろう……。
彼女自身の戦闘能力はあまり高くないので……。
マテリアル
1:バビロニオン神話における冶金の女神にして、すべての冶金神の根源たる神器の作り手。彼女の登場以降バビロニオン神話に現れるすべての神器は彼女の手によって鍛造され、下界によって作られた神器もすべて彼女の作品を参照し造られたといわれている。
2:性格はわりと頑固で、曲がったことは大嫌い。そのため諸事情により長年自分たちを騙していたシャマルとは一度袂を分かっており、シャマルの《神政神話》の旅には同行しなかったという。
しかし、創世神ソートによって愛を諭された彼女は、傷つき倒れ伏したシャマルのもとへと走り、自らが鍛造した神剣を届け彼に新たな命を与えたという。
3:《守護神霊》として現れた彼女は、非常に快活で探究心旺盛。暇があれば新しい神器を作るための図面を引いており、ほっておくと現代には不釣り合いな神器を平然と作り出す……。やめてください女神様、陽光を放出する銃とかそれ核の炎を発射する火炎放射器ですよねっ!? え? 神器だから地球にやさしいクリーンな兵器? ねぇ、人間には? どうして黙るの、ネェ?
4:夫であるシャマルとは《守護神霊》となった後もつながっているらしく、よく虚空に向かって話しかける光景が見られる。危ない奴とか思ってはいけない……即座に悟られて事情説明からのシャマルとののろけ話コンボが君を襲う。リア充爆発しろと思ってはいけない、どこからともなく神剣が飛んでくる。
5:幕間『夫婦喧嘩は犬も食わない』クリア後解放
正義の裁判神となるため……その権能を植え付けるために、死体に魂を宿らされたシャマルのことを、彼女は始め信じられなかった。
長年自らをだましていた彼を、育ての親すら欺き切った彼を、――生まれるはずだった赤子の魂を塗りつぶし体を乗っ取って平然としていた彼を――彼女はどうしても許せなかったのだ。
だが、創世神ソートは言った。
「たとえどのような完璧な存在であったとしても、苦しみを覚えぬわけではない。間違いを犯さぬわけではない。大切なのは間違えた相手に対し、周りがどれだけ愛を与えてやれるかだ」
「汝罪を許しなさい。汝、隣人を愛しなさい。汝罪人を愛しなさい。許しとは……常にそうやって与えられるものである」
「っていうか、ごちゃごちゃ抜かしている暇があるならさっさと行けこのバカたれが! その神剣作っといて『心配とかしてないし!』とか言われても説得力ねぇんだよボケがぁっ!」
結局彼女はシャマルを愛していた。どんな存在であれ、どんな所以があれ、彼女に冶金の知恵を与え、彼女とともに成功を笑いあったのはこの世でただ一人――シャマルだけだったのだから。
…†…†…………†…†…
ソーシャルゲーム《《守護神霊》コレクション》wiki『リィラ』の記事より。
「お前がいた未来って……どういうこと?」
「――!!」
知られた。一番知られたくない人に知られた。
リィラが放った問いに無言になる俺を見て、再び頭上からは嘲笑が響き渡った。
「聞いての通りだ娘。その男ははるか時の向こう側、この国が滅びてさらに時がたった未来からやってきたのだ。魂だけでな」
「で、ですがエアロ様。しゃ、シャマルは……あの村で生まれて育ったと」
「魂だけだといっただろう? 未来から送られたそいつの魂は、もとより流産として処理され、魂など宿っていなかった赤子の体に入り込み動き出した、偽りの生者にすぎん」
「っ!」
否定できなかった。それはそうだろう……。
生まれた時から自分の体がおかしいことなど……俺自身が一番よく知っていた!
「事実その男の体はまともな生命活動をしていない。体が温かいのも、鼓動の音が聞こえるのも、すべて周囲の人間を謀るために、まともな転生一つこなせぬたわけた未来神がそいつに与えたただの異能だ。それらがすべて停止すれば、あとに残るのは鼓動無き冷たく動く躯のみ。本来ならばこのような汚物を我の統治下に置くことなどありえないが、そいつの知識は有用であった。下らぬ真似をした未来神も消し飛ばしておいたゆえ、あくまでそやつが我が国のために働くのであれば見逃してやると――そやつの沙汰は見送っていただけにすぎん」
死体に宿ってそれを動かす魂。聞いた自分でもこう思う。
それはいったいどこの動く死体――化物だと?
俺と同じ意見にたどり着いたのか、不安な様子で俺に縋り付いていたリィラは、ゆっくりと俺から手をはなし……そしてそのまま離れて行った。
それを止める権利は、俺にはない。そう考え俺が唇をかみしめたときだった。
「逃げるのはかまわんが、まだお前の天命の説明を受けていないだろう小娘。しばしここに残れ」
「ひっ!」
リィラを一人の女性がとめた。
当然それはこの場にいるおれたち以外の唯一の神――ニルタ様だ。
突然肩をふれられ悲鳴を上げていたリィラだったが、ニルタ様の存在に気付き安堵したのか、彼女はそのままニルタ様の背中に回り、震えながらこちらを見つめていた。
つい数日前まで、親しげに話しあい、鉄の鍛造に挑戦していた少女とは思えないほど怯えた様子に、俺の心は深く沈み込む。
そんな俺の心情など知ったことではないのか、エアロ様は淡々と話を続けた。
「では小僧。貴様のヘタなごまかしが我に通じないことは理解したな?」
「えぇ……代わりにあなたに対する恨みを覚えていますが」
「戯け。貴様の下らぬごまかしなど、いつまでも続くものではなかろう。実際既に……いや、これは本人から言わせるべきではあるな」
「?」
先ほどまでのこちらをあざ笑うかのような声音ではない、どこか敬意を払うかのような言い淀みを見せたエアロに俺は首をかしげる。
しかし、エアロはその言いよどみがなかったもののように元の口調に戻り、
「とにかくだ。貴様は生まれただけで罪な存在だ。本来ならば産声を上げた途端に殺してやるところだが、少々事情があってな……その時は貴様の生誕に即応できなかった」
「事情?」
「先ほど言っていた未来神の消去も事情の一つだが……現在エアロ様は天空神として保有していた千里眼を失われておられる」
「っ!?」
それはいったいどうして? と、ニルタ様の言葉にリィラから驚嘆の感情が送られてきた。
それは俺も同じである。普通神の力というものはそうやすやすと減るものではないだろうに……。
「諸事情あって上位権限を持つ創世神の眷族と揉めてしまってな。あの愚物風情め……女の癇癪が厄介なのは女神になっても変わらんらしい」
「あ……」
女神シェネとの口論か……。と、俺の頭の中でバビロニオン神話の一説が思い浮かぶ。
創世神ソートに黙って様々ないたずらをしていた生命の女神シェネ。そんな彼女をいさめようと、天空神エアロは千里眼を用いシェネの悪戯の現場を押さえた。
それに気付いたシェネは、創世神ソートに提示されそうになっていた証拠をエアロに渡すように迫り、エアロがそれを拒むと癇癪を起こし彼の千里眼を奪い、マルドゥックが世界を支えている奈落の底へと投げ入れたという。
天空神エアロは天空の神。奈落の底へ行くことはかなわず、その千里眼は未来のとある大英雄が手に入れるまで半永久的に失われたのだと……バビロニオン神話では語られていた。
――日食に神話的解釈をつけるために作られた神話だと学術書には書いてあったけど、本当にあったことだったんだな。
と、神話の重要な一場面に立ち会っていることに一瞬感動しかけた俺だったが、瞬間ニルタ様の後ろに隠れているリィラが視界に入り、その気持ちは瞬時にしぼんだ。
――そうだ、俺はこの天空神のせいで大切な幼馴染を失ったのだと。
「で、あなたが困っているからと、俺になにか関係があるんですか……」
「あるとも」
そういうとエアロは、一枚の鏡面を作り出し、そこにある光景を映し出した。
「――っ!」
「え……そ、そんなっ!」
それは、見慣れた集落が燃え盛る様子。その集落は……俺が住んでいた村だった。
「未来の神を消し飛ばした際に、そやつの記録権能から奪い取った記録なのだがな――今から五年後、お前が発展させ溜めこんだ富を狙い、他の集落の人間たちがお前の村を襲撃する。住民はすべて皆殺し。生き残った者はおらず、食料だけ奪われた状態でな」
「どうして……そんな、今まで平和だったじゃないかっ! 野盗だって盗賊だって……そんな連中出たなんて聞いたことも」
「その通りだ。我の統治下において、下らぬ私欲で他者を傷つけるような戯けを我が見逃すわけがなかろう。そういった下らぬ悪心を持つ魂は、我が天雷によって間引き、この平穏な世界を作っていたのだが。今まではな」
「だが、今のエアロ様はその悪心を見つけるための千里眼を失っている。悪心を探しだし、裁きを与えることが難しくなっているのだ」
「――っ!」
――そうだ! 神話でもたしかそう書かれていた。千里眼を失ったことにより、エアロは悪しき神々を制する力を失ったと。そして、そこで産み落とされたのが、《正義神》シャイラだと!
「そこで貴様の出番だ、汚物。貴様は未来の知識を持ち裁判? 法律? という物にも精通していると聞く。それさえあれば罪人を正しくさばくことも可能であろう。罪人を見つける権能に関してもお前はもとより腐らぬだけの動く死体。体を弄繰り回したところで、まず死ぬことはあるまい。すでに肉体は死んでいるのだからな」
「えっ……」
瞬間だった。天を覆い尽くすほどの莫大な量の光線が、頂上が見えない神殿から落ちてきたのは!
――死ぬ!
そんな感情を抱く暇もなく、光は瞬く間に俺の体を穴だらけにし――同時に夥しい量の力を俺に注ぎ込む。
激痛が走った。痛覚などとうの昔に失われているはずの死体に、稲妻が走った気がした。
――きっとこれは体の痛みじゃない。魂の痛みだ! 本能的にそれを悟らされるほど、その痛みは凄烈で凄惨な痛みだった。
同時に俺は自分の体が――魂が、別の物に作り替えられていくのを悟った。
「しゃ、シャマル!? シャマル大丈夫!?」
唯一良いことと言えば、怯えていたはずのリィラが、光がやんだ後、悲鳴のような声を上げて心配してくれたことだろうか?
もっとも、だからと言って今まで人間のフリをして騙していた――化物に近づいてくれることはなかったが。
「なにを……した?」
もうこんな奴に敬語はいらない。
自分に不幸しか与えてこない天空神をいよいよ見限った俺は、それ以上リィラが近くにきてくれないことを認識しない様に、激痛に歯を食いしばりながら立ち上がり、明らかに先ほどまでとは違う俺の肉体を調べる。
いまだに激痛の余韻が残るが、それでもあれだけ穴だらけにされたからだとは思えないほど、俺の体は健康体だった。
唯一胸に埋め込まれるように存在する、赤い十字架の形をした鉄のような材質の物体を除けばだが……。
「その神鉄は我の血に形を与え、お前の心臓に埋め込んだ一部が露出したものだ。そこを砕かれればお前と言えどもただでは済まないので気をつけろ」
「はっ、妙なこれを植え付けただけか?」
「よく考えろ、汚物。それを砕かれればといったであろう。つまりそれを砕かれぬ限り貴様は不死身となったのだ」
「――っ!」
不死身。それは神話の英雄たちが目指した一種の到達点と言える場所。
唐突にそれが与えられた事実に固まる俺に対し、エアロは鼻を鳴らした。
「つまり、そのくらいの力を与えねばこなせぬ難行を、貴様はしなくてはならないということでもあるが」
「難行……? まさかっ!」
「十二の試練――王の試練。その内容な我に変わり人界の規律を守ること。その動かぬ心臓代わりとなった神鉄から送られる力を使い、悪心ある者のもとへと転移し、現代知識を用い貴様は悪心持つ者を裁くのだ」
「………………そん、な」
無理だ。と俺は言いかけた。現代知識を持っているからと言って、俺は裁判関係の仕事についていたわけではない。
だけど、
「無理だというのならば仕方ない。貴様の集落の人間が皆殺しになるだけだ」
「…………っ!」
そう言われた瞬間、俺は弱音を吐くわけにはいかなくなった。
――俺がしないと、俺を育ててくれた両親が……村の人たちが、死ぬ!
あまりに残酷すぎる選択肢を与えてくるエアロに、俺は歯を食いしばった。
「貴様がいない間は、我が集中してその村落を見ていおこうと思う。そこまでやればさすがに下らぬ襲撃など未然に防げよう。それだと他の監視がおろそかになる故な。集落の守りを我が固める代わりに、貴様にはその他の罪人を裁いてもらいたい」
「……………」
「いまだに我が千里眼が失われたことを知るものは少ない。だからこそ、今だけは新たな悪心を抑える抑止力が生まれ出でる余裕があるのだ。汚物――貴様がいまだに人であるのだと主張したいのであれば、その功績を持って我に貴様を人だと認めさせて見せよ」
その言葉を最後に俺の意識は落ちて行った。
突然穴が開いたとかそんな安っぽいものではなかった。まるでここはお前がいていい場所ではないといいたげに、突然地面が俺を飲み込み、その後闇の中へと放り込んだのだ。
堕ちる――落ちる――オチル。無限とも思える落下の中、俺はゆっくりと頭上を見上げた。
その景色だけは妙に鮮明に見えた。
ニルタ様に支えられたリィラが、優しい黄金の光輝によって俺と同じように与えられる光景が……。
――もう彼女に合わせる顔はない。
心の底でリィラの怯えた顔が脳裏をよぎる。
同時に、この成人の儀の夢を見終わった後彼女が集落の人間に、俺の正体をばらしてしまうことを何より恐れた。
だから俺は覚悟を決める。
目を覚ました瞬間に集落を飛び出し、エアロが与えた難業に挑む覚悟を。
「さようなら、リィラ。俺みたいな化物を、友達にしてくれて……ありがとう」
最後にそれだけ言い残し、俺は――
「――っ!」
下界の寝床で、目を覚ました。
…†…†…………†…†…
「よろしかったのですか?」
「何がだ?」
アンジーに騎乗し、元の私――ニルタの座である第四階へと降り立った私は、玉座に片肘をついて座るエアロ様に問いかけた。
「あんなに人間関係をこじらせて……。彼に真なる裁きの神になってもらいたいのであれば、周りの人間の協力も得られるようにしておいた方が」
「戯け。たかがガキ一人のごまかしなど、我の臣民が見破れぬわけがなかろう」
「まぁ……何か隠しているのはかなりあからさまな子ではありましたが」
鼻を鳴らし吐いて捨てるように「わかりやすすぎ」とシャマルに対する評価を下していたエアロ様に、「その通りですけど……」と肯定を示しながら、私は草原の向こうへと歩いていく少女の背中を見送る。
信じていた幼馴染が、淡い恋心さえ抱いていた男が、もう死んでいる死体などと知らされて呆然自失となっている彼女の背中を……。
「だとしても、あの子にだけは知らせるべきではなかった。あの子はこれから自らの根源として、あの少年専用の剣を作らねばならないというのに……。あの少年に対する気持ちがあんなに散逸していては」
「作れないならばそれでよい。この《天命の書》に記された愛の力など……その程度であったと証明されるだけの話だ」
神器の作り手など、のちの世でいくらでも出てくるのだからな。と、不用意にこちらの時代に手出ししてきた未来の神から奪った、いくつかの記録鏡面を浮かばせながら、天空神エアロ様は座して構える。
第二の試練の結末を、余すことなく見届けるために。
「というか……もとはと言えばエアロ様がシェネ様と揉めなければこんなことには」
「さぁて! うちの神官どもにあの集落の護衛を命じなければなぁっ!」
自分に都合の悪いことなど、なかったがごとく振る舞いながら。
いやぁ、剣豪七番勝負おもしろかったですねェ……魔界転生のパクリとか言われていますけど私は好きですよ? えぇ。
え? 上の設定はパクリかって……はははは。そんなこと……オマージュですよ、オマージュ。
ところで魔界転生ってなに?(ヒソヒソ