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獣の試練・開幕

遅れてすいませェエエええええええええん!


ちょっと私生活でいろいろありまして!(FGOやりつつ(おい 

言い訳する気はないんですよ! えぇ、言い訳する気はないんですよ!(白々しい

と、とにかく獣の試練開幕。まぁ、いろいろ不安要素もありますが、よってらっしゃい見てらっしゃい!


今回は綺麗な女の人が主人公よ?(白目

 それは、獣の如き姿をしたものだった。

 しかしその獣の如き者は尋常な存在ではなく、翼もないのに空を飛び、足もないのに大地をかけた。

 彼の者は獣達の総意によって生み出された魔獣であったとされている。

 これより先、自らを脅かす成長を遂げるであろう人類を滅ぼし、獣達の安寧をもたらすように願われ……そのようになった存在であったと言われている。

 だがしかし、それゆえに獣の如き者は頭が良くなかった。

 獣の願いから生まれ落ちた獣にしかなれなかった怪物は、本能の赴くまま大地を駆け、空を翔け、本能の赴くまま気の向くままに自らの生を謳歌し始めた。

 そう、彼はすっかり自らの役目を忘れ、普通の獣と変わらぬ生活を続けていたのだ。

 だがそんなあるとき、人に害なすこともなくただ日々の糧を集めのんびりと過ごしていた彼の前に、一冊の書物が現れた。

 それは古の時代、人が神と崇めた男が、慈母神から奪った、未来の試練が記された書物であった。

 それは人々の間では、神がつくり封印した《天命の書(タブレット)》と呼ばれるものであり、これを手にしたものは世界の全てを支配できると言われていた。

 当然獣の如き者はそのような話を知らなかったが、どういうわけかその書物には興味を持ってしまい、不用意にそれに触れてしまった。


「―――――――――――――――!?」


 そして彼は、思い出した――思い出してしまったのだ。自らの役割と、滅ぼすべき存在の名を。


…†…†…………†…†…


 煙を上げる黒焦げになった家屋。もはや人であるとも認識できない消し炭になった死体。

 もうもうと上がる黒煙の周りでは、生き残った人々が嘆きの声を上げ、子供が天を突き刺すような大きな声で泣いていた。

 そんな地獄絵図をみて、この集落を訪れたひとりの女狩人は絶句し、呆然と佇んでいた。


「なんだこれは……なにがおこった」

「おぉ、ニルタ……すまないな。この有様ではいつものような取引は」

「そんなことはいい長老。一体何があったんだ」


 女猟師の名はニルタ。近くの山に小屋を掘っ立て、一人で暮らしながら山の獣を狩猟し、周辺の村々に売って歩くことで生計を立てている、孤独な猟師であった。


…†…†…………†…†…


「黒い獣に襲われた?」

「あぁ……いや。あれは獣だったのかすらわからんが」


 ボロボロになった集落の中、唯一無事であった家屋の中で、ニルタは長老から事の次第を聞いていた。


「昨夜突如として村を巨大な化け物が襲ったのだ。化物はその巨体の突撃によって家屋を粉砕。それによって中でたかれていた火が燃え広がり、なかにいたものたちが焼け死んだ。そんな家が数十件。わしらもなんとかその化物を止めようとしたのだが……何分わしらは獣を狩ったことがない。どうすればやつを殺せるのか皆目検討もつかず、結局やつが暴れるのをとめられず、多くの犠牲を出してしまった」


――あぁ。せっかくワシを長老に指名してくださった《王》になんとお詫びすればいいのか……。

 自らの失態によって失った命をいたみながら、同時に自分ならば任せられると預けられた長老という役職を十全に果たせなかった事実に、長老は悔やむように唇を噛み締める。


――悔しかっただろう。


 ニルタは孤独であったが……長老の気持ちを察していた。

 孤独であるがこそ、彼女はいつも訪れるこの村を守るために、いつも頑張っていた長老を見ていた。人の輪の中に入り、人の上に立ち、日々を懸命に生きながら、多くの村人たちを守り、生活を守ろうとしていた長老に彼女はある種の敬意を払っていたのだ。

 なにより、


「すまない長老。獣を狩るのは私の仕事なのに、私が仕損じてしまったせいでこのようなことに」

「なにを……おぬしのせいではあるまい。悪いのは暴れたあの化物じゃ」


 彼女自身も自責の念を覚えていたから、長老の気持ちは良くわかった。

 この時代、この国において、人々は《王》によって与えられた《天命》――仕事をそれぞれ与えられている。

 《天命の書(タブレット)》によって与えられるそれらの役割は、絶対不可侵にして変更のきかない神聖なものであると同時に、王であり神であるこの国の主に「お前ならばこの仕事を全うできる」と信頼を寄せられた証でもあった。

 ニルタの天命は狩人。獣を狩り、人々に肉を供給し……同時に人に害成す獣を間引く仕事。

 純正な獣でなかろうと、獣らしきものが人を襲ったというのであれば、それはニルタの責任であるとも言えるのだ。

 だからこそ彼女は立ち上がる。


「長老、私はしばらく山にこもる」

「ニルタ……まさかっ!」

「あぁ……この村を襲った獣を、私の手で必ず仕留めてみせる」


 後に狩猟神として語られるニルタ……これが彼女の伝説――《アンジー狩り》の幕開けだった。


…†…†…………†…†…


 後ろでまとめられた黄金の髪を持つ美女が、樹上を飛び回る。青い瞳は静かに眼下の獲物を見下ろし、背中に背負った黒い弓はその獲物を射抜く時を静かに待っていた。

 貫頭衣に迷彩用と思われる緑を基調にしたケープのような服をまとった彼女は、臭い消し用なのか泥による化粧を顔に施していた。その努力のかいあってか、獲物は未だに彼女の存在に気づいておらず、静かに自らを追いかける女をそのままに、とてつもない勢いで森を駆け続ける。

 シェネが開いたウィンドウに映るのは、そんな獲物を追いかける女の追跡劇だった。


「なんだありゃ?」

「まってくださいね。いまステータス画面を開きます」


 シェネはそう言いつつ、ウィンドウの中の女性をタップ。それによって開いたステータス画面には、彼女の各種パラメーターと、その名前が記されていた。


「彼女はニルタ。狩人の天命を与えられた女性だそうです」

「天命?」

「この時代の人々は、《王》と呼称される天空神――《エアロ》の手によって《天命》という仕事を割り振られています。彼女はその天命によって狩人として生きていくことを定められているようです」


 そして彼女は、今回の獣の試練に挑む英雄だそうです。

 シェネがそう言って指さしたステータスには《挑戦者》の文字が輝いていた。


「随分と変わった政治形態になっているんだな……神様か。ティアマトの子孫か何かか? それとも本当に神様が生まれたのか? いっぺん会ってみたいが……ともかく今は試練が先か……。《獣の試練》っていうのは確か、お前が言うにはこれから狩られてしまう――あるいは狩られてしまった獣達の怨念の集合体を討伐するって話だったな?」

「その通りですマスター。マスターにもこの世界の人々にとっても、チュートリアル的意味合いが強いイベントですので、ストーリーは極力単純にしてみました。典型的な討伐クエスト……それが《獣の試練》の内容です」

「それ、本当に勝てるのか? 怨霊なんだろう?」


 物理系の攻撃は通じないんじゃ……。とソートはやや不安そうな顔を見せるが、シェネは心配いらないと言いたげに、手をひらひら振りながらステータス画面を閉じた。


「この時代はいわゆる神代。神秘が色濃く残り、魔力がモノを言う時代です。人は呼吸をするかのように神秘を操り、神々が如き力を振るいます。そのため一般人だろうが、怨霊のような霊体に、特別な技術なしで触れることが出来るのですよ」

「なら安心か。前言っていたように特別知性があるわけでもないんだろう?」

「はい。知能は普通の獣程度。多少力が強いだけですので、罠の敷設ができれば一発ですよ」


――まぁ、チュートリアルだしそんなもんか。と、安堵の息を付き、ソートは黙って樹上を飛び回る女狩人の行方へと視線をむけた。


「それにしてもまだ若い女の人じゃないか……。いや、リアルじゃ高校生の俺が言うのもなんなんだけどもさ……。なんだってこの人はひとりで試練に挑もうなんて思ったんだろう?」

「え!?」


 そして、女狩人の凛々しい横顔を見て自然に漏れたソートの疑問に、シェネは見事に氷結した。


「……なんだよ、突然固まって?」

「い、いいえ!? べ、べつにかたまったりなんかしてませんってててて!?」

「めちゃくちゃ動揺しているけど!?」


 ほんとお前さっきからおかしいぞ? そう言って首をかしげるソートから必死に目をそらしつつ、シェネは必死に頭を巡らし彼女が試練に挑む理由となった、被害にあった村落の光景をこっそりと小さな画面に映す。

 焼けた家屋に無数の焼死体。当然ソートには見せられない!


――なんとしてでも誤魔化さないと!


 そしてシェネは考え続ける。考えに考えて……そして出した答えが!


「……さ、さっきも言ったように、この世界の人たちは天空神エアロによって与えられた《天命》によって、仕事を決められています。つまり、彼女が試練に挑んでいるのは、エアロが天命によってそういう偉業をなすように彼女に指示を出したからなんですよ!」

「まじか。こんな華奢な女の人に化け物退治命じるとか、エアロ鬼畜だな」

「そそそそ、そうですね! まったく、優しいマスターが作った世界にあんな鬼畜神様が現れるなんて、世も末ですね」


――秘技《だいたい天空神のせい!》。これは意外と使えそうです。今後ももろもろの責任はエアロさんにかぶっていただきましょう!


 自分が思いついた妙案に大絶賛しながら、シェネは「許しがたいなエアロ!」と義憤に燃えるソートの姿にホッと安堵した。

 だが、シェネはまだ気づいていない。創世神であるソートが、そのうち天空神であるエアロに会う時が来ることなど……。

 彼女がそれに気づいて、その時どうやって誤魔化すか盛大に頭を抱えることになるのは翌日のこと。

 今の彼女は自分が思いついた妙案という名の泥船に安心しきっており、先ほどの動揺など微塵も感じさせない笑顔で、「ほらほら、ソート様! そんな天空神の鬼畜な試練に挑む女性を助けるために、しっかりと試練の様子を見届けないとっ!」と、ソートに空中に浮かぶウィンドウを飛ばした。

「おぉ、映画みたいだな。この時代に人間は本当に普通に忍者みたいな動きするな」

 ソートはそのウィンドウを受け取り、中で展開される試練の様子をみて、柄にもなく心を躍らせた。

 彼だって健全な高校生男子。かっこいいアクション映画やドラマは割と好みの部類であった。だが、その時ソートは気づく。

「……なぁ、シェネ」

「はい?」

「お前一体、今回の化物どんな生き物をモデルにして作り上げたんだ?」

「え? 普通に猪ですけど? 真っすぐにしか突進してきませんし、落とし穴にでもはめれば普通に登ってこれません。木登りとかできる体型じゃありませんしね……。罠にはめれば確実に仕留められ、おまけに樹上はほぼ間違いなく安全圏。かなり御し易い獣だと思いますけど?」

「いや……おまえこれ」


 女狩人が追っている化物が、


「どう見ても猪じゃないだろ?」


 不定形に体を蠢かせる、毛の生えたスライムのような存在であるということに……。


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