終わる■の試練
お待たせしました! もう一つの小説のほうが忙しくて……いや、言い訳です! ほんとすいません!
ようやく竜の試練終了です!
川がもとの姿に戻り、人々が喜びあいながら、川に飛びこみ、泳いでいる。
そんな中、
「ご迷惑をお掛けして、申し訳ありませんでした!」
「いや、そういわれても……」
シェネは神納に事情を聴くために集まった村長連中に頭を下げていた。
しかし村長たちはやや困惑ぎみだ。それも仕方ないことと言えた。ここいら一体の集落で一番の狩人が、事態を解決して戻ってきたのはいいのだが、そいつが元凶としてつれてきたのはたった一人の女。
到底大河の流れを塞き止める力があるとは思えなかった。が、
「にわかには信じがたいのう。一体どうやった河を塞き止めたと言うのじゃ?」
「それは……こうやって」
「「「「「ギャーーーーーーーーーーーーーーー!?」」」」」
シェネがトンと足を踏み鳴らすと同時にはえだしてきた木々の出現に、度肝を抜かれたあとは、さすがに信じざる得ないようだったが……。
そんな光景を横目に見つめるソートに、さっきまで胴上げされふらふらになっている神納が話しかける。
「よ、よかったのかあんた?」
「なにが?」
「このまましらばっくれて逃げることもできただろうと言っている。実際に出た被害なんて、せいぜい俺がボロボロにされた程度だ。村の連中も、河がもとに戻った今、元凶なんてさほど気にしていないぞ?」
「それはさすがにどうなんだ?」
次同じことが起こったときどうするつもりだ……。と少し呆れつつ、ソートは言う。これは、ケジメだと。
「例え誰も気にしていないとしても、悪いことをしたら謝るのは当然だろ? それに、俺たちはこれから本拠地に戻り、歪めちまったもろもろに詫びて回らないといけない。ここで頭下げることもできないようじゃ、それもおぼつかないだろう」
「そんなもんかね?」
清く正しく……とは言わないまでも、人に何一つ恥じることなく生きてきた神納は、謝罪と言うものをあまりした経験がないのだろう。ソートの言葉に首をかしげるかれに、羨ましい生き方をしているなと、ソートは内心苦笑を浮かべた。
そんなときだった。
事態は風雲急を告げる。
『ソート!』
「? U.Tか? どうしたそんなに慌てて。ああ、そういえば連絡忘れていたな……。悪い悪い。こっちは無事終わっ……」
『すまない! しくじった!』
「……なに?」
それは、突如届いたU.Tの慌てた声から始まった。
『エアロのやつ、やりやがった! あいつ、俺がほんの少し目を話したすきに、エルク全体を結界で覆って、中の時間を進めたんだ! エルクの中はもうすでにお前達がもめ始めてから十年の時が経っている!』
「……はあ?」
ソートは一瞬何が起こったのか理解できなかった。エルク内で突如時間が加速したと言われても、実感が沸かなかったのだ。
だが、
『その間に、竜の試練と神の試練が終わっちまった! 神の試練の内容は、支配権をめぐった女神イシュルと最古王ギルガメスの戦争だ! 被害は約一名にとどまったが……その被害が』
「おい、待て。なんだそれは、やめろ! それが事実だとするならもう!』
どんな謝罪も意味をなさない。事態は取り返しがつかないところまで進行したことになる。それを認めなくて、ソートは叫ぶが、現実は非情だ。
『竜の試練にてギルガメスの盟友となった怪物……ネンキドゥが、イシュルとの戦いで機能停止。魂は冥界に送られたらしい』
「っ! クソッタレがぁああああああああああああ!」
届けられたその報告に、ソートは怒号をあげた。
もはや、自分達はどうしようもないところまで落ちてしまったと知ったから。
…†…†…………†…†…
エアロジグラッド頂上。
その場所に据えられた玉座に、一人の男が磔にされていた。
無数の空気の槍を身体中に生やしたその男は、血反吐を撒き散らしながら、自分の敵を睨み付け、喉を震わせる。
「どうして、どうしてあんたは……これだけの力を持ち合わせながら、それを皆が幸せになるために振るわない!」
「これほどの力をもってなお、抗えぬ力があるからさ」
敵――エアロは磔にされた男――シャマルの問いに鼻を鳴らす。
お前は何もわかっていないと。
「この程度の悲劇など序の口にすぎん。我が見据えているのは、この先に訪れる大災害。我の制御すら存在しない、掛け値なしの人類死滅の可能性すらある脅威だ。人間にそれを退けさせるためには、ぬるま湯のような優しい世界では足りないんだよ」
エアロの言葉とともに、シャマルを串刺しにしていた槍が玉座から引き抜かれ、力なくシャマルの体は玉座から転げ落ちた。
そして、シャマルはそのまま玉座の下にぽっかりと空いた穴に落ち。
「正義神。貴様はよく働いた。だが、ここから先は貴様の正義心は邪魔になる。暫し冥界にて、おとなしくしているがいい」
「ま……て。待てっ!」
「さらばだ」
震える手を必死に伸ばし、凄絶な眼光で自分を貫くシャマルに背を向け、エアロは歩み出す。
「計画は大詰め。もはや、止まるわけにはいかないのだ」
自らの命を縮める、
「さあギルガメス。あとは貴様が抱くだけだ。神に対する、圧倒的憎悪を!」
破滅への計画へと……。
次回、飛ばされた神の試練……開幕!
あ、賢者の石第二部もよろしくお願いします!
《異世界で『賢者……の石』と呼ばれています ――乱歩日記帳――》(https://ncode.syosetu.com/n3849ey/)