少女 2
日が経つにつれ、声も弱々しくなって行く。
食べる物も食べられず、果物の水分で喉を湿らせるのがやっとだった。
医者が来た日を境に、村人たちが代わる代わる薬を手に見舞いに来るようになったが、その顔はどれも絶望に支配されていた。
私はもう長くは無いのだと悟った。
それならば、私に届けられる求愛の品を村の皆に形見として分け与えよう。
一つだけ心残りなのは彼の事だ。
彼は医者が来て数日経った頃からパタリとその姿を見せなくなってしまった。
会いたい。
この目が黒いうちに、この目に焼き付けたい。
一目で良いから会いたい。
でも、会えないまま。
私は、日に日に弱って行く。もう目さえも開けられない。
命の火も消えて行く。
そう、諦めた時だった。
何か、暖かな物に包まれた。
いよいよ迎えが来たんだ。そう思った。
でも、私の命の火は消えるどころか大きくなって行くような気がする。
何だか気分が良い。まぶたが力を込めなくてもすっと開いた。
起き上がれる気がして、上体を起こしてみる。
体が軽い。
私が床に座っていると、下働きの者が部屋に入って来た。
その者は私の姿を見ると、目を見開き、大声を上げながら走って行ってしまった。
大勢のざわめきが聞こえ、すぐに両親が部屋に入って来て強く抱きしめられた。
私は助かったの?
私は、助かったの?
私は、助かったんだ。
じわじわと喜びが体中を駆け巡った。
ふと外を見ると、彼の姿が目に入った。でもすぐにその姿は見えなくなった。
それから誰も彼の姿を見た者はいなかった。
体力が付いて、歩けるようになった私は、彼を探し続けた。
でも、どこを探しても見つからなかった。
そんな時、七色紅葉の噂を聞いた。
私はすがる思いで山に分け入った。
どうかお願いします。彼に会わせてください。
彼の側に居させてください。
そう願いながら、ひたすらに山道を歩き続けた。
どれぐらい経っただろうか。
目の前に可愛らしい、小さな七色の紅葉の葉が現われた。
どうしていいのか分からずに、私は紅葉の前で膝を折り土下座をして、願い続けた。
『分かりました。その願い叶えましょう』
天から声がしたと同時に、私の身体が暖かい光に包まれた。
気が付くと、明るい日差しの中に居た。
目の前には七色紅葉。
横を見ても、上を見ても。
どこを見ても七色紅葉だらけだった。
彼はどこに居るの?
そう思って隣を見たら驚いた顔の彼が居た。
「どうしてここに?」
「あなたの側に居たいと願ったから」
そう言うと、彼ははにかんで、嬉しそうに笑った。
「僕達はずっと一緒だね」
「うん」
こうして二枚の七色紅葉は、いつまでも寄り添いつづけました。
読了有り難う御座いました。